It's just me,myself and I

横浜育ち、米在住23年の女性のくだらない日記の中に、日米のギャップ、バークレーでの生き方、パイロットの毎日が見られる。

到着ゲートに救急車を呼んでください

2018-01-12 | Weblog







オークランドでお友達のSちゃんとランチをした。 Sちゃんは2年くらい前に結婚をしてすぐ、42歳くらいの時に自然妊活を始めた。 そしたらすぐ妊娠! それってすごい。 しかし4ヶ月おきに3回流産したんだって。 3回妊娠できたのはすごいけど、どういうわけか妊娠の状態を保てない。すごく辛くて気がおかしくなりそうな3回目の流産の後、いつ生理が来るのかなと思ってたら、結局来ないまま妊娠が分かったんだって。 ミラクルベビーだね。 Sちゃんはママになりたいという気持ちが昔からすごく強かったので、私もすっごく嬉しい。 あと数ヶ月で44歳になる彼女。 見かけもすごく若いし美しい。






話は変わって、この前の仕事で一緒になったフライトアテンダントTさんの話。60代くらいの元気な金髪の155センチくらいのお母さん。



私: おはようございます。 明けましておめでとうございます。

Tさん: おめでとう。 今年は去年よりも良い年でないと困るわ。



どういう去年だったんだろう。 交通事故? 家族の不幸? 家の修理?

どうやら体調が優れなかったようだ。


Tさんの話。

去年のある日、Tさんは仕事に行った。 滞在先のホテルで、なんとなく気分が悪いと感じた。 熱っぽかったり、頭がフラフラしたりで、「風邪? インフルエンザ?」不思議に思いながら横になって休んだそうだ。

次の日。 まだ気分が良くない。 サンディエゴからオークランドへのフライト中、気分が悪くておトイレへ数回入った。 吐いた。具合が悪いんだけど、いまいち風邪とも違う。 何? 頭がぼーっする。 オークランドまであと45分。 彼女は震える手でインターフォンを取り、コックピットへ連絡をした。

Tさん: すみませんOOです。 具合が悪いです。本社に連絡をして、オークランドで新しいフライトアテンダントと入れ替えをお願いしてください。私は病欠をします。

パイロット: 分かりました。

Tさん: それと、到着ゲートに救急救命士(paramedics)を呼んでください。


客室のフライトアテンダントから病欠の連絡を頼まれることはあるが、救命士待機のお願いはすごく珍しいので、パイロットは耳を疑ったと思う。Tさん曰く、自分の症状や状態がいまいち分からなく、何かが非常におかしいとだけ分かったのでお願いしたということ。それでもフライト中に大げさにしたくなかったので、他のフライトアテンダントには「調子がいまいち良くない。」とだけ伝えて、フライトアテンダントのジャンプシートに腰を掛けたそうだ。

到着ゲートでは救急車と救命士達が待っていて、すぐにケアをしてもらったのだが、彼らもいまいち何が問題か分からない。 でもフライトアテンダントの話を聞いているうちに、「とにかく病院で見てもらうことが必要。」ということになり、Tさんは「それなら自分でタクシーで行きます。」と言ったのだが、救命士に説得され、空港の救急車で近くの病院へ運ばれた。Tさんは少し大袈裟だなと思いながら空港の近くの救急病院に到着。

最初の病院で心臓の疾患が判明。 ドクターから見て深刻なレベルだったらしく、車で10分の距離のオークランドの大病院へ搬送されることが決定、その救急車に乗る前に、病院のベッドで心臓が2回くらい止まって生死をさまよったそうだ。


この話をコックピットで聞いた私はビックリ!!思わずTさんをハグしてしまった。 Welcome back!! 「良くなってよかった!!」

結局Tさんはあのフライトの後、家に帰ることなく大病院に3ヶ月近く入院して、回復したそうだ。



会ったばかりの人に、こんな感動をする話を聞かせてもらい、彼女が良くなったのが嬉しくて、ドキドキしながらフライトを始めた自分だった。