MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

滅多にない

2014-06-26 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

06/26 私の音楽仲間 (594) ~ 私の室内楽仲間たち (567)



               滅多にない



         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




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                   滅多にない




 

 〔長大な第1番ヘ長調、人気曲の第3番の間で、あまり
目立たない曲。〕

 Beethoven の弦楽四重奏曲ラズモーフスキィ
について、私が書いた文です。 

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 統計を調べたわけではありませんが、少なくとも実演の機会
は、かなり少ないでしょう。

 一つには、ホ短調という地味な調性が原因かもしれません。
決して “盛り上がりが無い” わけではありませんが、最終楽章
ホ短調で終わります。


 しかしその第Ⅳ楽章は、まずハ長調のテーマで始まります。

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 演奏例の音源]は、楽章の途中でこれが現われた際のものです。

 

 さて、この音源では、何か変な音が聞えませんか?

      私の よれよれ Violin 以外で…ですが…。


 一番最初に。 一発だけ。 一体これ、何の音でしょう?

                   (解答は最後にあります。)



 滅多に演奏されないこの曲を、私が初めて耳にしてから、早 50年
近くが過ぎ去りました。 立派な実演で…です。 しかも、弦楽四重奏
という編成の曲を通して聴いたのも、それが初めてでした…。

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 滅多に無いこと…。 今回の話には、まだ尾鰭が付きます。


 私が室内楽の貴重な勉強をさせてもらっている、この愛好家の
かたがたのグループ…。 初めて押しかけてから、かれこれ6年
になります。 参加のペースは、ほぼ月一回、一日に2曲です。

 そのうち、このラズモーフスキィを手がけたのは、ただ
2回しかありません。 前回は…、手元の記録を見ると、4年前の
ことになります。 パートは Vn.Ⅱでしたが。


 ところでメンバーの中に、チェロの N.M.さんというかたがいます。
でも、このグループでご一緒したのは2回しかない。 その2回は、
両方とも同じ1曲です

 その1曲とは、実はこの作品でした。 4年前も、今回も!


 2回だけで、その2曲とも…。 なんだか書いていて混乱する…。

 あっ! よく調べたら、全部で3日、4曲、ご一緒してた…。

 


 話は変わって、Beethoven の弦楽四重奏曲の数です。 数え方
よりますが、ここでは 16曲…としましょう。 『大フーガ』を除いて。

 それらのほとんどは、このグループで初めて経験した曲です
Vn.Ⅰのパートに限って言えば…ですが。

 そして私にとって “16曲目” となったのが、今回の『ラズモーフ
スキィ』でした。 50年近く前に初めて耳にした室内楽曲です。


 さて、 このグループについては、まだ説明不足ですね?

 もちろん、発表を前提とした集まりではありません。 では、

 (1) 当日のメンバーの組み合わせ、 (2) 曲目…は、
どのようにして決まるのでしょうか?


 (1) は、主に各自のスケジュールに左右されます。 これが決まると、

 (2) 誰かが希望曲を出します。 候補曲が上がらないこともある。

 (3) その場合は、お世話係の Sa.さんが提案、調整します。


 ちなみに私が曲を提案することは、まずありません。 理由は色々
ありますが、まず第一に、曲目に関する知識が無いからです。 音源
に親しむ機会が少なかったからかもしれない。 恥ずかしながら。


 では、の『ラズモーフスキィ』を提案したのは誰なのか? どうも
他の3人のメンバーではなさそうです。 確認したわけではないが。

 今回は、どうも (3) のケースだったようだ。


 仮に誰も曲を挙げず、提案、決定したのが Sa.さんだった
…としましょう。 なぜこの曲だったのか…? 私には、理由
が一つしか浮かびません。

 この日に先立つ、二ヶ月ほど前のこと。 私は Viola の
メンバーの E.さんと雑談をしていました。 あと何分かで
アンサンブルが始まろうというときです。


 雑談の内容は、その日の曲目についてだった。 このとき
も Beethoven 四重奏曲で、作品132 イ短調でした。

 そして、数年前に初めてこれを手がけたときも、やはり
E.さんと一緒だったのです。 その2回だけなのに。


 まだあります。 二人が会ったのは、その時以来だったし、
しかも当初は別のメンバーが Viola を担当するはずでした。
この “2回目” は…。

 滅多にないこと。 ああ、また頭が混乱してきた…。


 二人の話題は、やがて Beethoven の弦楽四重奏曲の “数
になった。 そして尋ねられました。

 「もう全曲、経験されましたよね?」

 〔いや、まだ残っているのがあります。 “ラズモーフスキィ
第2番なんです。〕…というのが、私の答だった。


 Sa.さんから “次回の曲目決定” の連絡があったのは、その
すぐ後のことでした。



 そういえば、この雑談の内容を、自分から Sa.さんに話した
ような気がする。 数分後に。 はっきり覚えてはいないが。

 …となると、私に「早くBEETHOVEN を全曲体験させよう」…
と、配慮してくれたことになる。 本当にありがたい話です。


 おまけに当日は、もう一つ大変な曲があった。 Brahms の
弦楽四重奏曲 第1番です。 これも Vn.Ⅰのパートは初めて
でした。

 もし厳密に言えば、別の場で、まったくの初見で弾かされた
ことはありましたが。 でもこんな曲、初見でなんて、自分に
満足に弾けるわけがない。

 そしてさらに一ヶ月後は、またしても “初めての四重奏曲
続きます。 やはりドイツの作曲家ですが…。 そういうの
が重なると、私にとってはかなり準備が大変です。


 どうも私には、「早いうちに一とおり体験させたほうがいい」
と、裏で計画があるのではないか。 一方で Sa.さん自身は、
恐ろしい数のレパートリーを持っておられます。 Vn.Ⅰ、Vn.Ⅱ、
Viola の3パートに亘って…。

 そしてお手元には、何年分、何十ページにも及ぶ、詳細なメモ
あるのです。 この集いの日付、メンバーの組み合わせ、曲目…。


 ひょっとすると、もうすぐ追い出されるからかな? 「貴方には、
これだけ多くの曲を経験させてあげました。 だから、もういい
ですよね。 そろそろお引き取りください!」…なーんてことに
なったりして…。 エ~ン。

 もしそうなると、滅多に無いことだなぁ…。



 ところで、先ほどの演奏例の音源]のお話ですよ。

 冒頭の “バシッ” というのは、さて、何の音でしょうか?


 ちょうどそのとき、ドアが閉まった…。 厚い楽譜が床
落ちた…。 施設の中に蚊が紛れ込んだので、誰か
が手で叩いた…。 どれも違います。

 これ、実は、床を叩く音なんです。 私が、左足で。
あれ、右足だったかな…?


 「そんなこと、なぜするんだ?」…ですか?

 もちろん、小節の頭を示すためです。 原始的でしょ? 練習
の場だからこそ出来ることで、本番では “滅多にありません”。


 実は、このテーマが現われる前には、難しい “掛け合い” が
続く箇所がありました。 つまり、各自のパート譜は休符だらけ。
だから、正確に入るのが難しい。 得てして早く飛び込むことが
多く、滅多に合わない。

 したがって、2/2拍子でも勘定が難しく、ついに足まで動員した
…というわけです。

 

 小節の “頭” に、“足” を鳴らす…。 これは、“よくあること” です。

 この日、第Ⅳ楽章を通したのは一回だけでした。

 



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