飾釦

飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

近松門左衛門NO.2・・・TVドラマ「女殺油地獄」(監督:和田勉)1984年

2009-02-18 | 近松門左衛門
■放送:1984年NHK
■原作:近松門左衛門
■脚本:富岡多恵子
■監督:和田勉
■出演:松田優作、小川知子、山崎努、島田紳介、加藤治子、中村又五郎、他

NHKでかつて放送された作品であります。与兵衛を松田優作が演じるという異色の作品。脚本で作家の富岡多恵子が参加しているよう。演出は和田勉、その昔一時、ガハハと笑いながら駄洒落ばかりを言う変なおじさんのキャラクターでバラエティー番組に出ていたユニークな個性を持った演出家です。(さいきんはテレビに出なくなりましたが)

物語は、現代の風景から太鼓の音が響き江戸の昔へ、野崎参りの場面へとワープします。それはこの近松門左衛門による与兵衛によるお吉殺しの話が、実話から題材にして書かれたものであるということ、その昔庶民の生活の中に血で染まった物語の記憶の連続性に現代があるということを表してしるのかもしれません。

親の財産や情けを食い物にする放蕩息子、全くもって自己都合で生きている極道で、弱いものには強く強いものには弱い与兵衛という特異なキャラを演じるは松田優作です。このキャスティングは微妙な感覚を出しています。それは優作の思い込み激しい演技によって与兵衛の危うさが時に見事に表現されている所と逆に優作キャラが立ちすぎて性格的な弱さが感じられない所の二面の部分があったように思えました。松田優作という個性的すぎる役者のためか、内にめた暴力性を感じさせるにはピカ一すぎるのだが、弱く媚びへつらう部分の演技の場合彼が本来持っている眼光の鋭さがじゃまをしてしまっているように感じたわけです。

この与兵衛とつるんでいるワル仲間として島田紳介が出演しています。若いですね。紳介はツッパリ漫才で一世を風靡、それがこのキャスティングとなったと思うのですが、残念ながら彼はちょんまげが似合わない。ワルさ加減があまり感じられない。むしろ人のいい町人に見えてしまうのであります。

一方、お吉を演じた小川知子は美しいです。「さてさてよい女房、まだ色もある物腰格好」のお吉は女盛の芳香、フェロモンを漂わせなければ話がつまらない。その点で小川知子のお吉は色っぽさは十分。それであれば与兵衛の泥を洗ってやるシーンも活きてくるというものです。(そこには性的なものの含みを感じたい、感じさせるので・・・)

道徳や義理といったものが美徳とされるルールの持っている反作用としての落とし穴や、複雑で捻れた人間関係によって構成された家庭環境が、その場その場を場当たり的で見栄と虚勢で生きるワルとしての与兵衛を増長させたのでしょうか?この和田版「女殺油地獄」は先にも書きましたように演じる松田優作の眼光が鋭く、彼は“怪物としての与兵衛”の印象が強くあります。それは借金を断られお吉を殺害したところで、ドラマが突然終了するところにも端的に現れているように思えました。そこには犯した罪に対する罰が描かれておらず、衝撃性の余韻で結末を迎えるからです。

この与兵衛は何も反省はしていません。義理の父親・徳兵衛が勘当後、心配して向かいの豊島屋を訪ね少しばかりのお金をお吉に託すのを裏で聞いていても、実の母親・おさわがやはり同じように心配になってお金と粽を懐に入れて同じく豊島屋を訪ね、そこで母親としての本心をさらしたのを裏で聞いていても(観ている側はそこで義理の親や実の親のそれぞれの苦しみを感じ入り、お涙頂戴でありがたいのは親の愛、孝行せにゃいかんなと思うわけだが)裏で聞く与兵衛は早く帰れと言わんばかりの涼しい顔だから・・・。いくら改心したとお吉にアピールしてもそれはもはや金欲しさの演技にしか見えてきません。親の心までも平気で踏みにじる冷血で自己チューとしての与兵衛には、後がない切羽詰まっているため悲壮感のみがそこあるようです

そんな松田優作演じる与兵衛を観ていて、いくらテレビや銀行の現場で呼び掛けても消えることのな振り込み詐欺、親の愛情に付け込んだ卑劣な詐欺を働く犯人と、与兵衛とにいかほどの違いがあるのだろうかと思えてきました。
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