飾釦

飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

昭和の黒い霧・松本清張NO.28・・・ドラマ「けものみち」(出演:名取裕子)

2009-09-18 | 松本清張

■放送:NHK、1982年1月(3回)
■演出:和田勉
■脚本:ジェームス三木
■出演:名取裕子、山崎努、西村晃、伊東四朗、加賀まりこ、他

民子を演じている名取裕子がいい。NHKで1982年に3回に渡り放送された松本清張原作の「けものみち」を見ました。介護を要する元ヤクザの旦那を放火で焼き殺し、ホテルマンの小滝(=山崎努)誘いに乗って“けものみち”に足を踏み入れ、そこに野心を見いだしていきながらも自らに過信してしまう女・民子。彼女が男を手玉に取り魅力的に変貌していく様を名取裕子は力強くそしてセクシーに演じていました。(当然ですが若い!)

実際、名取裕子は飛び切りのというより個性的な美人といったほうがいいタイプの女優であるとボクは思うのですが、このドラマではそれが飛び切りの美人に見えました。それは民子を演じる名取裕子が120%のフェロモンを出している演技を見せているからだと思います。たとえば、当時よくここまでできたなと思わせる公共放送であるNHKとしては、ちょっと際どいのではないかというシーンがあります。それは鬼頭が民子を欲望の玩具にするところであったりするのですが、これが生唾もので…。ただしそれは、映像表現がそのように思わせるのではなく、名取裕子という存在がそう見せてくれるのであります。つまり一言でいうと生唾が出るほどに色っぽいということ。それまで彼女には取り立てて感心もなく見ていたのですが、このドラマでは何かが降りてきたように女の魅力を放っているのです。見ていて名取裕子にはシビレてしまいました。

それはまた相手役を勤める鬼頭演じる西村晃の演技もよかったということになるのでしょうが。事実、見た目はただの爺さんなのですが、時折見せる厳しい眼光は、フィクサーとしての恐ろしさを見事に表現していたと思います。見ていて役柄とはいえ、想像を超えるお金と権力を持っているとやることが違うんだな、いい女の名取裕子にあんなことこんなことして羨ましいなーと感情をドキドキ揺さ振られながら見ていたわけですから。

その鬼頭の部屋に象徴的に置いてあった愛染明王。愛染明王は何の仏か?愛染明王とは“サンスクリット語でラーガ・ラージャという。ラーガとは愛欲、すなわち性的な欲望の意味。ラージャは王の意味である。大日如来の変化化身、あるいは金剛薩埵の化身とされる。愛染明王は「愛の王」という実に煩悩の塊のような名前を持っているのである。愛欲は人間の煩悩の中でももっとも断ち難いものだが、この明王はそんな愛欲を悟りを求める心(菩提心)に高めて、さまざまな悩みから救ってくれるという。つまり、断ち難い愛欲を無理に断ち切ろうとせず、悟りのエネルギーに変えてしまおうとするのである”(“”部分「歴史読本 神様・仏様の詣で方祈り方」2009年2月号より引用)とあるものの、鬼頭は「民子は生き菩薩、どんな美術品も敵わない」といった風なことを言ってのける。ありがたい仏であっても目の前の美人には敵わないということか。

物語は前半は原作に忠実に、後半は民子と小滝の関係をより明確にさせる構成で展開されていました。小滝にはどうやら愛してしまったと言わせ、2人の逃避行が始まるのです。が、鬼頭にはすでに新しい女があてがわれており、2人はけものみちの道を踏み間違えてしまったことになります。それは民子が自身を過信したことと、小滝との関係において“耐え忍ぶ”時間を待ち切れず判断を誤った行為をしてしまったことにい起因します。ムソルスギーの「展覧会の絵」が効果的に流れる中、2人のけものみちは、けものらによって塞がれてしまうという悲しい結末を予感で終わるのでありました。


けものみち-全集- [DVD]NHKソフトウェアこのアイテムの詳細を見る

 

けものみち (上) (新潮文庫)松本 清張新潮社このアイテムの詳細を見る

 

けものみち (下) (新潮文庫)松本 清張新潮社このアイテムの詳細を見る
コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 昭和の黒い霧・松本清張NO.2... | トップ | 僕は知らない寺山修司NO.... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

松本清張」カテゴリの最新記事