東横イン問題に多くのブロガーが反応し、多くの論評がなされています。
私も前回のエントリーで自分なりの感想を記しましたが、その時点では物議を醸した問題の社長会見映像を見ていませんでした。会見での社長の振る舞いが騒動に火をつけたところが多だったのと、コメントで幾つかの貴重なご意見を頂戴したこともあって、いったんここで総括してみたいと思います。
会見の模様については、多くの人々が、「あれはないだろう」と呆れています。企業トップとしての遵法精神の欠如を疑う、ハンディキャップを持つ人への配慮を著しく欠いている、真摯な謝罪の意思が感じられない等々、掲示板ではさらに過激な非難もあったようです。一方、ことの善悪はともかくとして、「随分正直なひとだなあ」という感想を持つ方もいました。企業の不祥事が発覚した際の会見で、毎度繰り返される紋切り型のお詫び-「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」「コンプライアンスを徹底し、再発防止に努めます」とかいうあれですね。広報部長や外部のリスクコンサルタントの振り付けと危機管理マニュアルそのままに、とりあえず頭を下げておこうという偽善的な態度を見ることが多い昨今、西田社長は少なくとも、自分の言葉で語っていたことに一定の評価をするものです。まあ、あのつっこみどころ満載の会見によって、多くの人が考えるきっかけをつくり、本質的な問題があぶり出される兆しが見えたことは、結果的に良かったのかもしれないなと思ったりもします。私は、もっと傲岸不遜な様子を想像していたのですが、西田社長は、時折手で頬をさすりながら、思ったよりも淡々としゃべっていた印象を受けました。
憲法にも造詣の深い、和光市議のtakeyanさんは、「人治国家ではなく、真の法治国家を目指さなくてはならない」と述べておられます。あくまでも法改正を求めて行くべきだと。これはその通りでしょう。だんなさんも市の関係部署ともっと綿密なコミュニケーションをとるべきだったと指摘されています。ただ、私も市条例の過酷さを指摘したものの、会見では法の不合理へのレジスタンスという雰囲気はあまりなかった感じです。ただ、今日の報道では、駐車場以外にも吹き抜け(延床面積に算入されない)を埋めてフロアにしたり、明らかな違反改造を15年以上前から、全国的に行っていたという、同社の野放図な実態が明らかになってきました。どうやら常習犯だったようです。ハートビル法にしても、要件を充たせば、容積率の緩和措置というのがあるそうで、もしもこの恩恵を受けながら、改造していたのなら、「悪質」の誹りは免れないところです。
それから、私は「お年寄りや身体の不自由な方は、ビジネスホテルなどあまり利用しないのではないか」と書きました。これについて、TSJ付“録”Ⅱさんのブログでは、「障害を持つビジネスマン・・・というケースも考えられないでしょうか」というもっともな指摘がありました。これは本当に私の発想の貧困さと現状認識の浅さを反省しなければならないのですが、何となくイメージでビジネスの現場に出てくるハンディキャッパーの方というと、付き添いの社員が常に随行する車椅子の要人や、先方も三顧の礼を持って遇するような高度専門職の人を想像してしまっていました。このニュースを見ながら憤る妻にも、同じようなことを言って窘められました。彼女はホームヘルパーの資格を持ち、デイサービスの施設で働いているので、私よりも意識が高いのです。曰く「高齢者や身障者は安くて綺麗なホテルに泊まっちゃいけないわけ?」
この観点については、魁!清谷防衛経済研究所ブログ分室の清谷さんと読者のzapさんとの間で、ハイレベルで濃密な論争がなされていて、大変勉強になります。
東横イン率いる西田社長は、現在100店を超えるチェーンを「将来は1000店舗を目指す!」とぶちあげていたそうです。とすれば、ことは東横インだけの問題ではなくなってきます。なぜなら、そのユニークなビジネスモデルはこれまでのところ成功をおさめていましたので、今後もさらに急拡大していく可能性は高かった。そうするとその過程で、廃業するホテルに東横インがとって代わることも少なからずあるだろうし、ホテルに限らず、駅近の土地利用で他の施設や企業と競合しても、豊富な資金でこれらを蹴散らして、勝ち抜いていくことも予想されます。西田社長は「うちはビジネスホテルなんだから・・・」と弁解しましたが、そうすると、いったいどこが「ハートあふれるビル」を建てることになるのでしょう。名前を聞けばたいていの人が「ああ、あそこか」と思い当たる(東急インは今回とんだとばっちりで気の毒でしたが)ほどの知名度と店舗数を誇る同ホテルは、既に現在も著名であり、未来にはさらに大きな影響力を持ちうる存在なのです。
そのようなチェーン企業は、率先して社会貢献に努める義務があるのだと思います。そのことに無自覚な様子が見てとれたため、これだけ批判を受け、ホテルのイメージもがた落ちになってしまったのでしょう。
問題の横浜日銀前の物件にしても、私は新聞に掲載された写真と図面だけを見て、商売をやるにはちょっと酷ではないかと書きました。しかしこれもよく考えると、「はじめに改造ありき」の設計ですから、あらかじめ短時間で改造しやすいというコンセプトで設計してあるわけで、一般客の視認性や使い勝手とハンディキャップを持つ方の利便性、快適性の両方が、ある程度共存するもっと良いプランニングが可能であったかもしれません。市街地の限られた面積の敷地という難易度の高い状況だからこそ、そういった建築が実現できれば、本を書いてそのノウハウを世に広めていく。勇ましい経営書などを出版するよりも、そちらの方がよほど尊敬されたに違いありません。
関連の法律の意図するところを正しく理解し、ユニバーサルデザインの実現を希求することについて、皆が考えていくきっかけになったのであれば、一連の報道は小さくない意味があったように思います。「もっと他に重大な問題があるだろう」という私の第一印象は、賢明なブロガー諸氏の反応と言説によって、だいぶ変わりました。これがブログの醍醐味なんでしょうね。
私も前回のエントリーで自分なりの感想を記しましたが、その時点では物議を醸した問題の社長会見映像を見ていませんでした。会見での社長の振る舞いが騒動に火をつけたところが多だったのと、コメントで幾つかの貴重なご意見を頂戴したこともあって、いったんここで総括してみたいと思います。
会見の模様については、多くの人々が、「あれはないだろう」と呆れています。企業トップとしての遵法精神の欠如を疑う、ハンディキャップを持つ人への配慮を著しく欠いている、真摯な謝罪の意思が感じられない等々、掲示板ではさらに過激な非難もあったようです。一方、ことの善悪はともかくとして、「随分正直なひとだなあ」という感想を持つ方もいました。企業の不祥事が発覚した際の会見で、毎度繰り返される紋切り型のお詫び-「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」「コンプライアンスを徹底し、再発防止に努めます」とかいうあれですね。広報部長や外部のリスクコンサルタントの振り付けと危機管理マニュアルそのままに、とりあえず頭を下げておこうという偽善的な態度を見ることが多い昨今、西田社長は少なくとも、自分の言葉で語っていたことに一定の評価をするものです。まあ、あのつっこみどころ満載の会見によって、多くの人が考えるきっかけをつくり、本質的な問題があぶり出される兆しが見えたことは、結果的に良かったのかもしれないなと思ったりもします。私は、もっと傲岸不遜な様子を想像していたのですが、西田社長は、時折手で頬をさすりながら、思ったよりも淡々としゃべっていた印象を受けました。
憲法にも造詣の深い、和光市議のtakeyanさんは、「人治国家ではなく、真の法治国家を目指さなくてはならない」と述べておられます。あくまでも法改正を求めて行くべきだと。これはその通りでしょう。だんなさんも市の関係部署ともっと綿密なコミュニケーションをとるべきだったと指摘されています。ただ、私も市条例の過酷さを指摘したものの、会見では法の不合理へのレジスタンスという雰囲気はあまりなかった感じです。ただ、今日の報道では、駐車場以外にも吹き抜け(延床面積に算入されない)を埋めてフロアにしたり、明らかな違反改造を15年以上前から、全国的に行っていたという、同社の野放図な実態が明らかになってきました。どうやら常習犯だったようです。ハートビル法にしても、要件を充たせば、容積率の緩和措置というのがあるそうで、もしもこの恩恵を受けながら、改造していたのなら、「悪質」の誹りは免れないところです。
それから、私は「お年寄りや身体の不自由な方は、ビジネスホテルなどあまり利用しないのではないか」と書きました。これについて、TSJ付“録”Ⅱさんのブログでは、「障害を持つビジネスマン・・・というケースも考えられないでしょうか」というもっともな指摘がありました。これは本当に私の発想の貧困さと現状認識の浅さを反省しなければならないのですが、何となくイメージでビジネスの現場に出てくるハンディキャッパーの方というと、付き添いの社員が常に随行する車椅子の要人や、先方も三顧の礼を持って遇するような高度専門職の人を想像してしまっていました。このニュースを見ながら憤る妻にも、同じようなことを言って窘められました。彼女はホームヘルパーの資格を持ち、デイサービスの施設で働いているので、私よりも意識が高いのです。曰く「高齢者や身障者は安くて綺麗なホテルに泊まっちゃいけないわけ?」
この観点については、魁!清谷防衛経済研究所ブログ分室の清谷さんと読者のzapさんとの間で、ハイレベルで濃密な論争がなされていて、大変勉強になります。
東横イン率いる西田社長は、現在100店を超えるチェーンを「将来は1000店舗を目指す!」とぶちあげていたそうです。とすれば、ことは東横インだけの問題ではなくなってきます。なぜなら、そのユニークなビジネスモデルはこれまでのところ成功をおさめていましたので、今後もさらに急拡大していく可能性は高かった。そうするとその過程で、廃業するホテルに東横インがとって代わることも少なからずあるだろうし、ホテルに限らず、駅近の土地利用で他の施設や企業と競合しても、豊富な資金でこれらを蹴散らして、勝ち抜いていくことも予想されます。西田社長は「うちはビジネスホテルなんだから・・・」と弁解しましたが、そうすると、いったいどこが「ハートあふれるビル」を建てることになるのでしょう。名前を聞けばたいていの人が「ああ、あそこか」と思い当たる(東急インは今回とんだとばっちりで気の毒でしたが)ほどの知名度と店舗数を誇る同ホテルは、既に現在も著名であり、未来にはさらに大きな影響力を持ちうる存在なのです。
そのようなチェーン企業は、率先して社会貢献に努める義務があるのだと思います。そのことに無自覚な様子が見てとれたため、これだけ批判を受け、ホテルのイメージもがた落ちになってしまったのでしょう。
問題の横浜日銀前の物件にしても、私は新聞に掲載された写真と図面だけを見て、商売をやるにはちょっと酷ではないかと書きました。しかしこれもよく考えると、「はじめに改造ありき」の設計ですから、あらかじめ短時間で改造しやすいというコンセプトで設計してあるわけで、一般客の視認性や使い勝手とハンディキャップを持つ方の利便性、快適性の両方が、ある程度共存するもっと良いプランニングが可能であったかもしれません。市街地の限られた面積の敷地という難易度の高い状況だからこそ、そういった建築が実現できれば、本を書いてそのノウハウを世に広めていく。勇ましい経営書などを出版するよりも、そちらの方がよほど尊敬されたに違いありません。
関連の法律の意図するところを正しく理解し、ユニバーサルデザインの実現を希求することについて、皆が考えていくきっかけになったのであれば、一連の報道は小さくない意味があったように思います。「もっと他に重大な問題があるだろう」という私の第一印象は、賢明なブロガー諸氏の反応と言説によって、だいぶ変わりました。これがブログの醍醐味なんでしょうね。
ちなみに、私の憲法に関する意見はいわゆる憲法論議とはずれていますので、あまり参考にはならないと思います。
柄にもなく感動してしまいました。
ライブドアにしても東横インにしても、何か起こると、オセロゲームのように白が全て黒に引っくり返されるマスヒステリーが起こります。これはメディアだけの責任ではなくて、人々が自分でよく考えなくなっているのではないかと思っています。
ゆいさんは、東横インにお勤めのご友人がいることで持っていた情報以上に、思考を発展させて書かれていたので、重みがあるのですね。
今後ともよろしくお願いします。