マイコー雑記

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幼児期のアカデミックってどう思う?という質問、『遊び=動き』のあふれた自主的な体験の大切さ

2016年09月04日 | 身体を動かし発達促進

幼児期にアカデミックを教えることについて、

質問をいただくことがあります。

 

私自身は、様々な子供の育ちに関わる中で、

小さな時分ほど、実生活の文脈のなかで、

子供自身の興味を軸とした自主的な体験を通して学ぶことが、

最も健やかに子供を伸ばす、そう思っています。

 

道端の石を数えたり、

どのスーパーの袋に最も多く物が入っているか、じゃあ一番重いのはどれか、

積み木のお城のお堀をつくるにはいくつぐらいどんな形の積み木がいるのか、

などから、「数のセンス」を身につけ。

影の大きさや位置が変わることや、

空が青かったり灰色だったり真っ赤だったりするのは「なんでだろう?」

という疑問からサイエンスに親しみ。

周りの人々の話すストーリーや、

お友達とのコミュニケーションから

語彙や言語感覚を身につけていく。

 

 

例えば、

こんな場が増えるといいなあと常日頃から思っている

『虹色教室』のようなところですね。

また私自身教室でお手伝いさせていただいたことのあるウォルドルフの幼児教育

(シュタイナー教育についての記事:http://kosodatekyua.com/category/steinereducation/)や、

1991年に「世界で最も優れた10の学校」に選ばれた「レッジョ・エミリア・アプローチ」や、

自主性を育てるということではオランダの「ピラミッドメソッド」やモンテソーリ式

なども、ありますね。

 (「レッジョ・エミリア・アプローチ」については、改めてまとめたいなと思ってます)

 

 

コネチカットのニューヘイブンにある、

「遊びに基づくプレスクール」として名高い学校のディレクター、

サラ・ギャノン氏の言葉に大きく頷きます。

 

「昨今、アカデミックが強調されるばかりに、

小さな子たちが、

まだ準備できてないことに強制的に取り組ぬことがのぞまれています。

もちろん、私たちも、文字や音や数や量について教えます。

それでも、文脈のある体験を通してなんです。

つまり、実際に子供たちが校庭で見つけたどんぐりを数えてみたり、

積み木を組み立てたり、

お友達たちの名前を発音してみたり書いてみたり、

歩きながら信号を見たりするといった、体験を通してなのです」

http://www.theatlantic.com/education/archive/2016/05/why-young-kids-learn-through-movement/483408/より)

 

机上の教科書やプリントワークで学んでいくやり方は、

施す側にとって、

準備や結果をとらえやすいといったことからも

より「簡単」なんです。

そして子供によっては、次から次へと

進みたがる子もいるだろうと思います。

 

どんどん机上のお勉強をやりたがる子には、

まあ自主的にやらせるようにし、

嫌がったりのんびりな子には、

机上のことはほどほどにして、

どちらのケースであったとしても、

身体感覚をフル活用した体験を通し学ぶ楽しさを積み重ねてやりたい、

そう思います。

 

 

以下、「体験を通して自主的に学ぶ」ことの大切さについて、

『The Atranticの記事「Why Young Kids Learn Through Movement

どうして幼児は動きから学ぶのか)」から抜粋しますね。

 

 

英国バンガー大学心理学教授エミリー・クロス氏曰によると、

 

「新しい神経科学の研究では、

学習者が動き、行動し、交流する場では、

脳の働き方自体が変化し、

子供の学習過程を加速すると分かっています。

それでも動きのない消極的な学びでは、

こうした脳の活動は見られないんです」といいます。

 

つまり、

「人は、単に観察するよりも、

自らの身体を従事させた方が、

新しく獲得するスキルをよりよく吸収しやすいんです」

とクロス氏。

 

動きながら学ぶことは、

脳の働き方を変化させるんですね!

まあ、鉛筆持って手だけ動かすより、

身体全部を総動員した方が、

それは脳も活性化するだろうとは素朴に思いますよね。

 

また、

プレティーンや青年についての調査でも、

活発に動くことに従事した方が、

動きのない消極的な学びよりも、

パフォーマンスが著しく優れるといった研究結果も、

クロス氏によって発表されています。

机上ばかりでない体験の大切さは、幼児にとってだけではないんですねー。

 

 

小児科医のバネッサ・デュランド氏曰く、

「子供は、全ての感覚を総動員して世界を体験することで学ぶんです。

動きを制限することとは、特に年齢の低い子にとっては、

体験的学びを妨げることなんですよ」とのこと。

 

 

こう見てくると、

「じっと座って勉強しなさい!」

と小さな子を長時間座らせることが、

いかに「的を得ていないか」を思います。

 

 

 

ラスリー大学のナンシー・カーソンページ教授曰く

「よいキンダー(年長さん)の教室というのは、

誰もが動いているんです。

先生も動いているんです」

 

例えば、遊びの場では、

「他の積み木がどう働くかといった関係を見ながら積み木の形を見定め、

もっと必要か、バランスが取れるか、もっと高くなくちゃいけないか、

左右対称であるかなど 創りだすためには何が必要かと、

創作の場を行ったりきたりして決断していきます。

これらの『数学的なコンセプト』全て、

子供が活発に組み立て動くことから明らかになっていくんです」とのこと。

 

子供たちは「ただ遊んでいる」ように見えて、

五感をフルに使ってアカデミックの土台を身につけています。

そもそも、「遊びとアカデミック」を切り離す方が、

不自然なんですよね。

 

 

 

 

それでも、昨今、

こうした「動きを通した学びのあり方」のできる場が

減っていると危惧されています。

 

バージニア大学の研究によると、

「1998年に比べ、今日の子供は、

自由に動き、自ら選んだ活動に従事する

といった自主的な学びに費やす時間というのが、

はるかに減っています。代わりに、

はるかに多くの時間を消極的な学び環境で過ごしているんです」

とのこと。

 

レスリー大学の幼児教育学の教授ベン・マーデル氏は、

「大人が遊びを学びに組み込むときでさえ、

しばしば、動きや自主性を制限してしまいます。

遊びでは、遊ぶものが参加者を決め、ゴールを選択し、ルールを導き形作っていきます。

大人が『こうすべきよ』と子供たちに伝えるとき、

遊びがもたらす重要な発達面での利点を多く失うことになります」

と指摘しています。

 

 

 

 

「『遊び=動き』のあふれた自主的な体験」

を大切にする幼児教育の場が、

増えていくことを願っています。

今後の教育現場では、

「頭ばっかり」でなく、

身体感覚をどう統合していけるか、

これが鍵になっていくのじゃないかな、私自身はそう思っています。

 

それでは、みなさん今日もよい日を!


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6 コメント

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Unknown (はるかぜ)
2016-09-05 20:49:20
何でも「早ければいい」という考え方が主流で、子供の頭も音感や言語など吸収しやすい幼児期、一生に一度のこの時期を逃すのは不安になりそうですが、アカデミックなものは早いスタートを切ればいいかというとそうでもないようですね。2013年のケンブリッジ大学の記事に5歳で読み書きを始めた子たちと7歳で読み書きを始めた子たちを比較したら11歳になるころには結局同じレベルだったという記事がありました。それよりも5歳で始めた子たちは何らかのマイナス面が見られたとか。

アメリカの公立学校の現状も詰め込み式に傾いて、遊ぶ時間もまともにないです(我が家の子供たちの小学校は1日お昼休み20分とジム20のみが自由に動ける時間だそうです)。「身体を動かすことが大切」というマイコーさんの記事、毎回うなずきながら拝見しています。
はるかぜさん、コメントありがとうございます! (マイコー)
2016-09-07 12:08:35
「ものすごい勢いで脳が発達する幼児期を逃してはだめ!」といった言説が、幼児期のアカデミックを煽る背景にあるわけですが、むしろ、ものすごい勢いで脳が発達する幼児期だからこそ、後にアカデミック面を伸ばしていくためにも、自主的な動きあふれる豊かな体験をたくさんさせてやりたい、そう思います。

ケンブリッジ大学から、そういった研究が公表されているんですね。これは、私自身、身近な周りにも見られることです。年齢が低い時点でも、自主的に好奇心赴くままに身につけた学力ならまだしも、読み書き計算ができるといった詰め込みの表面的な学力は、結局長い目で見たら、のびのびと時間をかけ力をつけていった子達に追い抜かれていきます。また、はるかぜさんのブログで紹介されていたように、読解力など、より深く複雑な思考面の弱さとなって現れることもあるでしょう。

「アメリカの公立学校が詰め込み式に傾いている」というの、本当ですね。ホームスクールから公立の小学校へと移られたはるかぜさん、様々思われることもあると思います。ブログの方、これから楽しみに読ませてください。大きな変化にもすぐに慣れ学校生活を楽しんでいる次男君、大人しめの長男君、そして長女ちゃん、皆個性溢れ、成長が楽しみですね! 
こんにちは (奈緒美)
2016-09-11 08:39:25
報告があとになってしまい申し訳ないのですが、ブログの記事を引用させていただきました。いつもありがとうございます。
先日も、こちらの記事が役立ったという親御さんの話をうかがいました。わたしもとても参考になります。
奈緒美さん、コメントありがとうございます! (マイコー)
2016-09-13 15:06:34
「虹色教室」で紹介してくださって、ありがとうございます!

そうした声を、お知らせくださって、ありがとうございます。とても励みになります。あーだこーだと考えつつ、子供たちに向き合いつつ、こつこつと書いていきますね。よい週をお過ごしください!
ありがとうございました。 (はるかぜ)
2016-09-15 04:22:20
私のブログに遊びに来てくださってありがとうございました。ブログでは別名ですが、色々なところで同じ名前を見かけるもので、今の名前でコメントさせて頂いています。

マイコーさんのブログでアラスカ州の教育制度がどんなに恵まれているのかというのを知りました。我が州は公立学校は州からの予算が降りてこないし、ホームスクールは「勝手にやっていいから補助は一切しないよ」というスタンスです。

もうすぐ雪の季節です。
こちらは早いときは10月の半ばに雪が降り始めますが、それまでの暖かい気候を子供たちは目一杯楽しんでいます。

マイコーさんも暖かな秋を楽しまれてください。
はるかぜさん、コメントありがとうございます! (マイコー)
2016-09-17 05:03:27
ブログ、遊びに行かせてもらいますね。アラスカ州の教育制度は、私自身も州外に出てから、その恵まれた環境を改めて思い知りました。本当に、州によっては教育にかける予算もますます削られていますし、ホームスクールの扱いも、これほどまでに違うのかと驚きました。
来月には雪なんですね! 葉も色づく頃でしょうか。はるかぜさんのご近所も自然に囲まれ最高ですね。こちらは、いまだに摂氏35度近くまで上がります!それでも朝夕随分涼しくなり過ごしやすくなってきました。ありがとうございます。はるかぜさん一家も、秋を堪能されてください!

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