ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

広告業界という《旧体制》の崩壊

2005年06月01日 | 検索・ポータル
流通、金融、通信、公共工事など経済のグローバル化とIT革命の進展によって、次々と旧体制が崩れつつある中で、最後の大物とでもいうか、放送業界と広告代理店という談合体質、《進化する旧体制》にもついに崩壊の時が来たということなのだろうか。NRIのレポートによると、バードディスクレコーダー(HDR)とブロードバンドの普及によって、テレビCMの価値が約540億円失われたとか。まぁ、NRIの言うことだし、この調査のスポンサーがどこかによって、この数字の信憑性は変わるだろうが、広告業界にも大きな変化が訪れていることに間違いはないだろう。

テレビCMの価値が奈落の底--ネットとHDDレコーダーで加速

テレビはもとより既存メディアの広告効果に疑問をもっている人は多いだろう。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌の4媒体の場合、露出量によって広告効果が決まるという見方がなされるため、どうしても、母数の多い平均的な大衆像に対して訴求できるような広告を、より多くの人に伝えるということが求められた。時間帯・番組内容・読者層といったセグメントはあったにせよ、それらは全国津々浦々の漠然とした「大衆」を相手にしていることに変わりはない。

しかしインターネットの登場はそうしたモデルを大きく揺さぶることになる。特にPPC広告の登場は2つの点から大きな転換が起こったといえるだろう。1つはユーザーの目的に対して適切な広告を表示させるという、ユーザーと広告の「合致率」の向上であり、もう1つは「成果報酬型」という露出量とは異なる料金体系の導入だ。

広告である以上、それは効果的であることが求められる。売りたい商品・伝えたいサービスが明確であるならば、具体的にその商品・サービスを求めている層にできるだけ低いコストで提供できる方がいいに決まっている。ネット広告、特にPPC広告が実現したことは、これまでのマス広告では実現できなかった低いコストで、求めているセグメントに対して適切に伝えることであり、それまでコストのかかるマス広告には手が出せなかった企業に対してCM出向のきっかけを与えたのだ。

ではこうしたPPC広告の台頭によって既存マス広告がなくなるかというとそんなことはないだろう。先にも書いたようにPPC広告は商品やサービスが具体的である場合に効果が高いのであって、商品イメージを作り上げるようなCMや認知度を高めるためのCMでは既存4媒体にはかなわない。

○○温泉で宿泊先を探しているのであれば、PPC広告は効果的かもしれないが、○○温泉の△△ホテルに泊まると決めている人に対しては効果が薄い。しかし「○○温泉」の「△△ホテル」と決めるまでには何らかの商品情報との接点があったのであろうし、その場合に効果的なのは既存4媒体の方であろう。

つまり「合致率の高さ」と「成果報酬型」という新しいモデルによって、これまで「暴利」をむさぼっていた「広告ビジネス」が揺さぶられているだけであり、今回の失われる「540億円の価値」というのはそもそもそれだけの価値がなかったのだろう。

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