ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

「電通買収」とインターネット広告のあり方

2006年03月19日 | ビジネス
週刊ポストが3月31日号で、「村上ファンド『只今電通買収中』の大勝負!」という記事がでている。ライブドアや楽天がテレビ局に買収攻勢をかけていた際に、社内でメディアとしての力をつけるためにはテレビ局と提携した方がいい、みたいな意見があがったのだけれど、その時に「テレビ局を買収するくらいなら、電通を買収する方がよっぽどメディアへの影響力を獲得できる」という話をしたことがある。まぁ、その時はみんなの思考がついてこれてなかったのと、そもそも電通の株価を考えるととてもじゃないけど購入できはしなかったのだけれども。

とはいえ、この「電通買収」という発想、インパクトはかなり大きい。既存のメディア(テレビ、ラジオ、雑誌、新聞)は全てこの電通によって縛られているのであり、その「大元」を手に入れようというのは、既存メディアの人間からすると恐れ多いといった感じなのだろう。

では一体「電通」の何がそんなに凄いのだろう。。

1つはテレビ局に対する収入面での影響力だ。週刊ポストによればテレビ局のCMの電通への依存度は30%~40%にも及ぶという。また電通はクライアントの突く以前に広告枠を押さえてくれ、つまり収入を保証してくれるのだという。こうなるとテレビ局は「電通」には逆らうことは不可能だろう。

また「電通」の凄さの1つとして、対クライアントへの「営業力」が挙げられる。まぁ、テレビに広告を出せるような企業の中で「電通」と付き合いがないという企業はまずないだろう。多くの大企業にとっては付き合いのある広告代理店というのは1社か2社というのが殆どだろう。その中で「電通」が入らないというのはまず考えられない。そのくらい各社への営業網は隅々まで整っている。またメディア側にとっても、電通と付き合うと広告「枠」の埋まり方が全く違う。それだけの「玉」を用意できるのも電通なのだ。

そしてもう1つの凄さが「メディア支配力」だ。これについては「2ちゃんねる」あたりで調べてもらうのが1番取って早いのだろうけれど、とにかく情報統制力が凄い。まず電通に不利な情報が大手メディアに流れることはない。そしてもう1つが電通のクライアントの不利な情報が流れにくくなる。このためには当然、上述の2つの「力」があってこそなのだけれど、これだけの情報統制のスキームを一度作ってしまうともう「メディア」としては骨抜きになるしかない。

本来であれば、このあたりを制御するのが「公取」だったりするのだろうが、何せ、自民党の選挙対策を担っているのだからそんなことを政治や行政側に期待することは難しい。

しかしそんな「電通」支配から逃れたメディアがある。それがグーグルのPPC広告だ。

グーグルのPPC広告のメインターゲットは所謂ロングテール。仕組自体も間に「広告代理店」が入る必要もなく、またそのために余分な費用をかける必要もない。クライアント企業がメディアであるグーグルに直接、成果に応じて広告費を支払うというモデルだ。これまでのメディアというものは、マスを対象に限られた広告「枠」を高値で売るというのが基本モデル。そうなるとその枠の調整をするために「広告代理店」という存在が必要だったわけであるが、グーグルはそのモデルを根底から崩したのだ。

例えば同じネットメディアでも、ポータルサイトのように大量の人を集めそこに共通のバナー広告を載せるというモデルを追及したり、GyaOのように始めからマスを対象としたテレビ型モデルを前提とすると、既存の広告代理店の役割というのは必要になる。ネット企業が自前の営業網を用意できるわけでもなく、また電通などの既存の代理店との競争に勝てるわけではない。こうした既存の広告メディアのやり方に準じている限り、広告代理店を無視することはできなくなる。

しかしグーグルが示したように、「IT」というものはそもそも「中抜き」を推し進めやすく、それは「広告」分野においても共通だ。既存の「広告代理店」が入る必要のないスキームを作ってしまえば、新しいクライアントとの関係を築けてしまえるのだ。

今後、「検索」結果やポータルの表示などもパーソナライズが進んでいくだろう。そうなった時に、果たして広告代理店が介在する必要があるのか。特に自前の営業網などもたなくても、ある種のレギュレーションと登録条件が整理されれば、必要な人たちへの広告表示というものが可能になるかもしれない。そうなると「広告代理店」は「枠」を扱うというよりも、コンテンツと広告を融合した「コンテンツ企画」的な要素が中心になるのかもしれない。

 広告業界という《旧体制》の崩壊


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