ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

SIerの営業に求められる5つの能力

2011年04月17日 | 思考法・発想法
4月に入り、世の中的には新入社員なども配属され始めていたりするのだろうが、それは同時にこれまで新人扱いだった1年目、2年目社員も「一人前」扱いされていくことを意味している。

僕が新入社員だった頃も決してまじめな社会人だったとは言えないんだけど、実際、入社1ヶ月目には研修先の所長からまじめに「転職」を勧められたりもしたわけで(苦笑)、それでも「せっかくだから、ここにいる間に何かを得よう」とそれなりに必死だった(はずだ)。

最近はどうなのだろう。

2年目~5年目くらいまでの社員を見ていると、自分の武器、自分の足りない部分というのを、もうひとつ理解していない気がする。理解していないから何かを伸ばそうという姿が見えない。やる気はある。でも成長の度合いやバランスがよくないのだ。

それでは僕が今働いている「SIer」の営業に必要な要素・能力とはなんだろうか。

これは実は非常に難しい問題。その理由は後述する。
仮にSIerの営業に求められる能力を以下の5つの分野・特性に分けるとすると、

1)愛嬌・個性・キャラ
2)商品知識・技術力
3)内外に対する調整力
4)顧客に対する知識・顧客の営業戦略に対する理解度
5)コンサルティング能力

もちろん「やる気」があることは大前提として、1)愛嬌・個性・キャラというのはまさに「本人性」のコアな部分。お客さんにかわいがられるためには「愛嬌」は必要だし、お客さんと「個人的に」仲良くなるためにはこの「本人らしさ」は大事なところ。

2)商品知識や技術力はSIを提供していくための必須の知識。自社のコアな技術、商材の強みはもちろん関わる技術全般について知っていなければ、情報システム部門のように専門性の高いお客さんとは話もできない。

3)調整力。案件を進めていくためには、社内やPJメンバー、お客さん、関連するプレイヤーとの調整は欠かせない。この能力がなければ、スケジュールは守れないし、PJ自体も頓挫してしまうかもしれない。「マネージメント力」と言い換えてもいいかもしれない。

4)はお客さんの戦略や業務をどれくらい知っているかということ。プロダクトアウト型の営業であればともかく、顧客別営業であるならば、お客さんに一番近い位置になるのが営業フロントということになる。お客さんの戦略を知っているということは、それに見合った提案ができるということだし、業務を把握しているということは、個々の提案をその業務に合った形にチューニングできるということ。あるいは目利きができるということだ。

5)コンサルティング能力は、提案やシステム構築を行う際に「適切な」提案を行うために必要な能力。上辺だけの提案ではなく、お客さんの本質的な課題の解決につながる提案にするためには、こうしたコンサルティング能力が必要となる。「問題解決能力」と言ってもいいかもしれない。

仮にこの5つの能力をそれぞれの頂点に割り当てた五角形のレーダーチャートを作るとしよう。中心を「0」とし、中心から各頂点への線分上に10段階のメモリで区切り、平均を「5」、最大を「10」としよう。

自分の能力をこのメモリ上にプロットし、それを結んでできた五角形が自身の能力分布だ。こうすることで能力を「見える化」することができ、「強み」「弱み」を直感的に把握することができる。

実際に営業活動を行うときには、これら5つの能力が総合的に求められることになる。お客さんに最適な提案を行うためには、「4)顧客に対する知識」を踏まえた上で「2)商品知識・技術力」と「5)コンサルティング能力」を駆使しなければならないし、それをPJチームで提案するのであれば「3)調整力」も求められる。もっとも「1)愛嬌」がなければ、お客さんから提案の機会ももらえないかもしれない。

では、営業として目指すべき人物像というのはどのようなものだろうか。バランスよくそれぞれの能力を高め、より大きな「正五角形」を目指せばいいのだろうか。

必ずしもそうとはいえないだろう。それぞれの項目で「6」をマークした正五角形の営業マン(合計30点)と、「愛嬌」が「10点」でそれ以外の4軸が「2点」しかとれていない営業マン(合計18点)がいたとして、前者の方が売上が高い優秀な営業マンであるとは必ずしも言えない。平均点は低くても売上が高い/受注をとってくる営業なんてざらにいる。

ここが営業の難しさでもあり、面白さでもあるのだろう。

営業である以上、売上や受注こそが評価される。場合によっては「愛嬌・キャラ」が異常に高く、お客さんに愛されて、それだけで受注をあげてくることだって可能だし、逆にかわいげがなくとも「技術力」や「調整力」でお客さんから徹底して信用を得ている場合だってある。

つまり「バランス」ではなく、何を「武器」にできるかこそが大事なのだろう。

それぞれはそれぞれで異なる能力である以上、高ければ高いほうがいい。ただし唯バランスよく点をとっているだけでは勝負にならない。「バランスのよさ」を武器にすることもできるし、自分の特に高い能力を武器にすることもできる。複数の能力の組み合わせで戦うことも可能だ。

自分が勝負できる「領域」を見つけること、自分をアピールしお客さんからの信用を得るポイントを磨くこと、このことこそが大事なのであり、そのためには全部をただ高めるのではなく、強い部分をより強く、弱い部分は必要に応じて高めていくことが必要なのだ。それこそが広い意味での営業マンの「個性」を形作るのだろう。

特にSIerのような業務では活かせる能力は多岐にたる。お客さんと飲んでゴルフできて一人前!的な「典型的な」営業マンが重宝される時代ではないのだろう。


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