Vişeu de susを朝6時過ぎに出発した蒸気機関車は、どんどん山奥へ進んでいきます。私たちが訪れたのは4月もまだ浅い頃、前夜の豪雨で川は濁流、あたりは泥だらけ、登っていくにつれところどころ残る雪も見られ、車内で薪ストーブがなければ寒くて過ごせないほど。
ルーマニア・マラムレシュといえば北部辺境地域、ウクライナとの国境にも近いところ。ここに全長30キロに及ぶ昔ながらの蒸気機関車路線があり、林業の大事な足となっているのです。
緩やかな傾斜をゆっくり登っていく蒸気機関車、後ろには一台の客車(=人用)と20台近くにのぼる木材用の貨車を連ねています。行きはカラで登っていき、帰りにはこの貨車に木材が満載となるのです。
が、山の奥深くの林業の拠点まで片道30キロ、ゆっくり行くので3時間以上かかります。腹がへっては何とやら、洋の東西いずこも同じ、労働者たちは車中で朝ごはんをとります。
リュックサックから食材を取り出し、適当に切って、まず薪ストーブの上に紙を広げ、スラリナ(=豚の脂身)を乗せています。
すぐに油が溶け出し良い香り。しっかりした油なので、紙がこげることもないのです。
次にサラミとソーセージを焼いて、パンにはさんで食べています。物珍しげに見ている私、手招きされ、スラリナを勧めてもらいました。脂っぽそうなのがネックでまだ食べたことのないスラリナ、え~い、いちかバチか、この機会に食べてみよう==!
ひとかけら口に含んだスラリナ、とろっととろけとても甘みがあります。美味しい!癖になりそうな味。でもなんといっても脂の固まり、カロリー過多。でも労働者たちは毎日の重労働、特にこの日のように寒い日とあっては身体を動かすエネルギーが必要。毎日スラリナを食べていても、でぶっとした人はいません。
みんな交代でスラリナやサラミを焼いて、車中はいい香り。私たちもリュックに持ってきた食材で朝ごはん。一緒に行ったヴラッドとダナのカップル。
トマトとアルディ・にんにくの茎のサラダ、ブルンザ(=塩味のある白チーズ)にチキンハム、パンは薪ストーブの上に乗せて焼かせてもらいました。食材とナイフ、携帯用のお皿はどこへ行くときでも重宝。食材をそのまま持って行って旅先で切り分けるこのスタイル、ルーマニア人の代表的な「お弁当」。
私達も腹ごしらえを済ませ、ゆっくりくつろぎます。薪ストーブの燃える暖かい車中、なにやら強いアルコールの香りが・・・労働者たち、一本のプラスチックボトルを回し飲みしています。あのボトル、消毒用アルコールのボトルだけど・・??
また物珍しげに見ている私の前に、ボトルが差し出されました、「一杯、どう?」~勧められてお断りするワタクシ、マドモワゼルではありません。香りを嗅ぐとコーラ風。皆が飲んでいるので飲み物には違いなし、ごくっと一口。強い==!!コーラの甘みでごまかされないほど、強いアルコール。
それもそのはず、ボトルは伊達ではありません、消毒用アルコールをコーラで割ったもの。労働者たちは何せ身体を温めるエネルギーが必要。それも一口で、短時間に。
森林労働者たちの日常を見ることの出来る林業用蒸気機関車、途中いくつかの駅を通過し、まだまだ先へ進んでいきます。(写真の古びた建物は駅)
(明日に続く)
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