空耳 soramimi

あの日どんな日 日記風時間旅行で misako

大沢在昌 「新宿鮫」 光文社文庫

2011-01-11 | 読書
有名な、不朽の名作と言われるこの本を読んだことがなかった。
図書館に返却に行くと予約の本が来てなかったので、見回した書棚からこのシリーズを二冊借りてきた。

鮫島のキャラクターがいい。

鮫島はキャリアで順調に出世していた。
公安3課に配されたが、そこは公安調査官と仕事内容がダブっている。左翼に近づいて活動を調査するのだ。
そこで警部になった鮫島は、右翼寄りの思想を持っていながら左翼のスパイに近づき出世のために利用しようとする警官と衝突する。
裏ではあくどい仕事のやり方をしている警官だった。
それを知った鮫島との争いで、切羽詰った警官は、切れない模造刀を振り回し、鮫島は首に重傷を負う。
警官は死にその結果、鮫島は警衛課に転任させられ、その後また公安外事2課に移動になる。

そこで間の悪いことに警視が自殺した、かれは鮫島に手紙を託したのだが、それは上層部に恐れられるような内容だった。
鮫島がそれを持っていることはそれとなく周囲にもわかった。
鮫島は公開するつもりはなかったのだが、彼はそれから昇進が無くなり、上層部に冷たくあしらわれる。
ただ一人理解のある課長の計らいで、新宿署に左遷される。
もちろんそこでは彼と組むものが無く、孤独な、孤立した警官が出来上がった。
しかし彼は新宿署で高い検挙率を上げ、新宿界隈のやくざから「新宿鮫」と呼ばれて恐れられていく。

こういういきさつの鮫島というキャラクターが、風紀の乱れた
街の裏で泳いでいる話だ。面白い。

* * *

警官二人が撃たれた、一人は死に一人は重傷、使われた改造拳銃は、以前鮫島が逮捕して送ったが、すでに出所している木島が作ったものらしい。
彼は木島を追っていく。木島はホモで彼に付いていった男から居場所を知る。
木島の工作所は川のほとりの目立たない古い倉庫だった。銃撃戦の末、傷つきながら木島を撃ち逮捕する。
しかしその後も警官殺しは連続して起こり、木島の線をたどってその犯人を追い始める。

警官を見て犯人を模倣する電話にも振り回される。

* * *

木島の14歳年下の恋人や、子供が死んだ後抜け殻のようになった上司(課長)がいる。

サブキャラクターがとんでもなく今風の恋人だったり、心の
底に温かいものを隠している、見せ掛けとは違って鋭い課長の桃井などだったり。
ただのアクションだけでなく名作と言われる要素満載の愉快な本だった。
続けて二作目の「毒猿」を読んだが、それが一作目を上回る面白さだった。


vol.2
★★★★★

読了
vol.3  大沢在昌「毒猿」
vol.4  有川浩「キケン」
vol.5  小泉喜美子「弁護側の証人」
vol.6  帚木蓬生「閉鎖病棟」
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