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世論は9条改定に反対
改憲派のみなさんは、よほど世論調査の結果が気になるらしい。
結局、読売の調査結果発表の際のバイアスはそのことを端的に示すものでしょう。繰り返しになりますが、改憲派が標的にしてきたのは日本国憲法第9条。少なくとも9条が改定すべき条項の重要な一つであることは疑いを入れないでしょう。
自民党にとって改憲はいわば党是ともいえるもの。与党が今、憲法審査会の規程をなぜ急ごうとしているのか、それを示す格好の記事をみつけました。話すのは日大教授・百地章。露骨に、改憲派の胸の内を語ってくれています(参照)。
百地の見立てでは「憲法改正こそ自民党の結党以来の悲願であり、わが国が当面している防衛・安全保障問題の抜本的解決は、まず憲法を改正して対処するしかないからである。しかも、これらの問題は民主党にとってのアキレス腱(けん)であることを考えれば、秋までにある総選挙対策としても格好のテーマとな」るということですから、総選挙前のこの時期がねらい目というわけです。
さらに、自民党にけしかけようとする百地はこうのべています。
「集団的自衛権の行使」を容認し、自衛隊法に「領域警備」規定を定め、「任務遂行のための武器使用」を承認することができれば、自衛隊はまた一歩、普通の国の「軍隊」へ近づくことになる。そうなれば、憲法に「自衛軍の保持」を明記するのは、もはや時間の問題であろう。これこそ、憲法9条2項改正の突破口と呼ぶゆえんである。 |
この文脈からみても、海賊法案は自衛隊出動と武器使用を認めた点で、憲法を逸脱するものであって、改憲にむけた一歩を踏み出すものです。参院に送付された今、同法案がまさに違憲立法であることにもっと関心をもってよいのではないでしょうか。
冒頭で、読売世論調査に言及しましたが、同様の調査をこんどは朝日がおこない、結果を発表しています(参照)。世論調査は、一過性のものとしてながめても、世論の動向を判断するにはもとより限界があるでしょう。調査の方法や質問の仕方などが結果に反映することも否めません。しかし、同様の調査をいくつかの地点でおこない、比較検討することによって世論の移り変わり、傾向は判断できるでしょう。数日前のエントリーで指摘したのは、調査の方法、質問の仕方を横に措いたとして、結果を報道する際の読売の姿勢でした。一般的な憲法改定に賛成かいなか、の問いにたいする結果に言及はするものの、個別の重要な論点であるはずの、9条の改定に賛成か反対かという問いについては口をつぐんでいることにふれたのでした。
こうした読売の姿勢と比較すれば、今回の朝日の調査結果に関する記事は、9条の改定についての態度を紹介しています。朝日によれば、9条改正に反対64%、賛成26%で、「今回も昨年から大きな変化はなかった」と評しています。
それだけではなく、「憲法改正が「必要」とする人は53%いるが、その中で9条を「変える方がよい」とする人は42%、「変えない方がよい」が49%だった」とのべ、改定賛成の人たちのなかの9条にたいする態度についても言及しました。
作為的に結果を切り取る読売と比較して、朝日調査の記事がより丁寧な方法で読者に伝えようとしているのが伝わるのではないでしょうか。
ここ数年の世論調査結果はいずれも9条改憲にたいして、反対または改定の必要なしが上回っています。そこに世論がある。
ですから、海賊法案を口実に、現実に9条に違反して、自衛隊の出動を可能し、武器使用基準を大幅に緩和しようとする動きは国民の思いに反するものでしょう。
海賊法案のゆくえを監視しつつ、同時に各政党に国民の思いにそった行動をとらせることが求められています。
重ねていえば、憲法審査会を急ぐ背景には、民主党とは派兵恒久法の基本線で一致していること、したがって時期衆院選までの時期を憲法改定にむけた好機としてとらえ、民主党にゆさぶりをかけようという判断があるでしょう。
だからこそ、野党にしっかり国民の立場に立って奮闘するよう監視し、圧力をかけなければなりません。反すれば、選挙で厳しい審判が下るのですから、たとえば民主党が国民の立場に立つ条件は皆無というわけではなく、またあるといえるのはないでしょうか。
(「世相を拾う」09089)
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