森羅万象、政治・経済・思想を一寸観察 by これお・ぷてら
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もう一つの日本の可能性
西松建設:幹部ら聴取 裏金を違法献金の疑い--東京地検
一方の献金を受ける側には、二階俊博氏、小沢一郎代表などの与野党の幹部があがっている。ようは、政権交代必至といわれている状況のなかで、関与が推定されている自民と民主両党、双方を同時にあげることに意味があるのだろう。その結果、マイナスイメージを有権者に植え付けられるのは、いうまでもなく民主党だ。しかも、党首の小沢氏が噛んでいるのだから。しかし、彼は、どこまで脇が甘いのだろう。この一点をとっても、私は、彼が従来の保守政治家の域を少しも出ていないと感じざるをえない。
とりあえず、私たちはこう指摘することが可能だろう。
企業献金が現行法に則って違法か否かを問わず、企業からの献金は政治にとって少しもよい方向には機能しないということ、企業の献金を受け取ってはばからない人に、今日取りざたされている不況時に働く者にのみしわ寄せを押し付ける大企業のふるまいに、働く者の立場に立ってモノがいえるはずがない、という思い、これである。二階氏よ、小沢氏よ、嫌疑をはらすのなら、堂々と、大企業にモノいえるということを体を張って示してほしいものだ。そういえば、二階氏はもとより、小沢氏が大企業を名指しで批判するのをこれまで聞いたためしがない。
当ブログでは、今日の不況をいわば逆手にとって、大企業が今日の事態で可能な限りの利益確保のために、もっとも手っ取り早い方途として労働者の首切り、たとえば派遣切りにいっせいに乗り出したことを強く批判してきたつもりだ。企業の論理とは所詮こんなものだ。
しかし、業績が下向きになったとはいえ、トヨタは純利益が赤字になることを見込んでいるわけではない。経営環境が悪くなったとしても、利益確保が至上命題なのだから。逆にいえば、労働者はそのための調整弁にはからずもなっているということだ。
このような企業と労働者の非対称を、そのまま何もいわず鵜呑みにせよといわれてひきさがるわけにはいかない。それでなくとも、これまで繰り返しいわれてきた新自由主義的施策のなかで、結局は割をくってきたのはほかならぬ労働者であった。正規と非正規の区別を最大限に利用しながら、あるいは両者の反目を利用しながら、潤ってきたのはとりもなおさず大企業・財界であったのだ。
当ブログは派遣切りが横行する今、これまで多大の貯め込み、つまり内部留保を蓄積した大企業がその一部を取り崩すことによって、経営を脅かすのであればまだしも、いくつかの試算でも明らかなように、多少の取り崩しでは企業はびくともしないことが想定されているのだ。これまで働く者からの収奪によって、正規雇用の非正規雇用への置き換えによって多額の利益を確保してきたのだから、その一部を取り崩すのは、企業の社会的責任を自認するのならしごく当然ではないだろうか。企業は、地方への企業進出の際、自治体からどれほどの助成金をいったい手中にしているのか。それに応えるのが社会的責任の一つであって、それを引き受けるのは企業なのだから。
こと今日にいたって、これまで貯め込んだ内部留保に着目せざるをえない。それは働く者の労働の結晶でもあるだろう。非正規への置換によって、固定費、端的にいえば人件費・労務経費を最小限に抑えることによって、利益拡大を図ってきたのだから、分かりやすくいえば、労働者から絞ったあげくもうけを積み立ててきたといってもよいだろう。不況になると、責めを負うのはひとり労働者なのか。一人ひとりの労働者はまったく見に覚えのない事態にちがいないし、それをなぜ引き受けなければならないのか。
それでも労働者に手っ取り早くしわ寄せし、利潤追求を第一義的に考える企業の論理に、異議を申し立てる必要が、今こそ求められるのではないのか。
異議を申し立て、企業のそうした論理にストップをかけ、労働者の働く権利を最大限に保障し、そして国民の生活を温めることによって、つまり国内消費を活発に増高させることで企業の経営活動を維持する方向というのは探ることができないのか。それを、国民一人ひとりが考える時期にさしかかっているのではないか。
ようするに、これまでの大企業のやりたい放題、横暴や勝手が見逃されるのではなく、国民生活の安定を重視した、そのことによって企業の経営も維持されうる方向が追求されるべきではないのか。それは可能ではないのか。
新自由主義に染まった90年代以降の日本の動向とは異なる、もう一つの日本社会のありようを議論すべきとき、それが今現在ではないのだろうか。
(「世相を拾う」09012)
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