あのジャージ姿で直木賞受賞会場に登場した「ベストジャージスト作家」の
姫野カオルコ。あのユーモアとウィットのあるキャラクターはかなりイカす。
恥ずかしながら日本人のそういった「賞」をもつ作家の本を
あまり読んだことがなく、ベストセラー本にも興味がなく、たまに読んでも
ちっとも面白いと思えず、ベストセラー本と相性が悪いのだろうと思っていた。
それがどうしたことか昨年の暮れに、大手町の丸善書店で買わないでは
いられない、買うべきとお告げでもあったように声が聞こえて購入した本が
お初、姫野カオルコの「昭和の犬」だった。
彼女のことを何も知らず、何だかカタカナ名まえで誰かと間違えて
しまいそうだなぁ、この時点で直木賞候補かぁ、でもなんだか
受賞するかもなどと漠然と思いながらゲット。
しかも最近では古本屋さんで購入しているというのに、久々の新品の単行本だ。
読み終えたときに感動やグッと熱くなることはないのだけど
そこには姫野カオルコのスペースがつくられていた。
その現象を読み終えてすぐに考えることはできなくて、ひとまずそっとしておく
ことにした。追求したり答えを求めるような、そんな野暮なことはできなかった。
でも翌日もそのまた翌日も思い出し忘れられないそのスペース。
喉にささった魚の小骨のようにひっかかって気になり続けていた。
昭和の時代のある意味平凡な女性の物語。主人公との間には一定の距離間があり
それが結局最後まで続く。そのせいか感情的にならず、たんたんと
さらさらさらと読めていく。でも最後に大きく残された場所があり
衝撃を受けた自分がいた。
面白い作家に出会えたと思った。当然次なる本も読んでみたくなる。
次は渋谷のブックオフで単行本を2冊買う。
受賞日の翌日だったせいかまだ彼女の本は選べるだけあった。
数週間後にはまったくもって彼女の本は消えていたのだが。
伯母さんをモデルにしたという「ハルカ エイティ」も戦中の難しい時代と
戦後、女性の立場が今とはぜんぜん違う時代に爽快で自由で魅力的な女性の
ストーリーは、またしても姫野にやられた感が充実の1冊だった。
ただはっきりいって彼女の本の装丁やタイトルはイマイチで好きになれない。
まちがってもジャケ買いのような装丁買いはありえない。
いつまでもココロのちいさなスペースを乗っ取られたような気分にさせて
くれる不思議な作家であり、受賞後の彼女の作品にも興味がわくし楽しみだ。