2013年の暮れ、父母のいなくなった実家に居て、
かつて家族四人、ここで過ごしたアナログな日々というものが、果たしてどこまで現実だったのだろうか、というような話をした。
残っている写真から見ても、たしかに現実であったことは間違いないのだが、
もっとアナログ的な匂いや雰囲気、そこにまつわるエピソードが、たしかに現実であったとどこまで言い切れるのか。
それぞれの記憶の中に残っている思い出はたしかに現実であったはずなのだが、
その多くは弟とわたしの記憶にとどまっているだけで、現実世界の他の人たちと共有しているわけではない。
オブビリオン ― 忘却された現実は、はたして現実だったのか
Sol Gabetta - 'Oblivion' (Astor Pantaleón Piazzolla) [live]
そもそも、リアルな現実というものは、常に更新され続けている今であって、
過ぎ去った現実は、リアルでなくて最早バーチャルなのかもしれない。
現実としての確からしさが、認識を同じくする人の多さや共有度で測れるのであれば、
親しい人の間でのみ共有しているアナログな記憶は、FBにアップされた現実よりも認知度が低くて、不確かなことになってしまうのかもしれない。
( ↓ ) 日常にTVが入り込み、TVカメラの視点を持ち得ることで、私たちのリアルな現実世界は圧倒的な拡がりを持つようになった。
肉眼で捉えることのできる範囲を超越した現実認識が可能になっている。
認識装置が肉眼だけでなく多様になれば、認識できる世界も多様になる。
インプットとしての認識能力が高まれば、アウトプットとしての世界を再構築して認識する力も高まるはずだが、
必ずしもそう上手くワークしているようにも思えない。
~世界を住みよく変えるための人の絶え間ない努力は何のためにあったのか。われわれの心が満足するためではなかったのか。
しかるに、この心は相変わらず瞬間瞬間」で違う感覚に弄ばれ、ゆったりくつろぐ暇すらなく、嵐の中で身を翻し続けるばかりなのです。
われわれの心に対する処遇や知識が現状のままでは、世界を映し出す鏡(こころ)が歪み汚れたままになってしまう。
(★★『心は自分ではない』★★)
上手くワークしないのは「心に対する処遇や知識」が間違っているからではないのか、心への態度を考え直してみてはどうか。
心の時代の次へ。(「シリーズ22世紀を生きる」だって。 もう22世紀睨み、なのです。)
人間は「心」を得たことで、時間の流れを感知することができるようになり、未来を変える力を手にしましたが、
その結果、人間は、過去に対する後悔や悲しみ、未来への不安や恐怖を感じるようになり、ヘタをするとそういう感情に押しつぶされそうになっていきます。
それが心がもたらした副作用です。
かつては「心」というものが希薄でしたが、人類は「文字」を獲得して、過去を記録し、未来に思いを巡らせることができるようになりました。
時間を知った人類が感じるようになった不安と向き合うために、孔子や釈迦やイエスの思想が生まれたのです。
しかし、現代は心の副作用がピークに達していて、この三人の思想でも対応できなくなっています。
そろそろ「心」に代わる何かが生まれないと、人類がいま直面する苦しみから逃れることはできません。
「心」の最大の欠陥は、時間の流れに対して無力であることです。
それを補うような新しい何かを得た時に、人類は次のステージに進むことができると思うのです。
心に代わる何かについて、答えが書かれているわけではありませんが、考えさせられます。
豊かな心こそは上等、というヒューマニズムが絶対の正解なのだろうか、と問い直してみたほうがよいのかもしれない。
時々心を希薄にしておく、というのもありではないのか。
そこに登場する明治時代の漁村の人々は、人が死ぬことをあまり重大事だとは思っていない。
むろん死は悲しいが、恐怖心を抱かずに、人は死ぬものとして、当たり前のこととして受け入れる。
時間の流れというのは心が生み出した抽象概念です。時間を認識するという意味では心が希薄な人々なのかもしれません。
まず、文字が生まれ、それからしばらくして心が生まれた。
文字という道具を獲得し、それを使ってるうちに、人間の脳がさらに発達し、その結果、「心」が生まれた。
そして、人間がどうやって心を獲得していったのか、心が生まれた瞬間に迫るために、心がなかった時代の文字(甲骨文字や楔形文字)を読み返すのだといいます。
「次の何か」が生まれる段階がどういうものであるのかを知るために。
心に代わる何かが生まれるためには、文字に代わる何かが、その前に生まれる必要があるということです。
ちなみに文字に代わる何かというのは、音楽とか絵画とか、そういうものではありません。
文字が存在しなかった時、誰も文字を想像できなかったように、いまの私たちにはまったく想像しえない何かが生まれる必要があるのです。
甲骨文字について→ (透明にすることによって隠蔽されたもの、そして賦活させるもの)
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