フツーの見方

フツーの論理で考えれば当然だと思うことが、なぜかマスコミでは出てこない。そんな意見を書き残しておきたいと考えてます。

FMチューナーはオワコンか FX711編

2022-10-10 | Weblog

・Victor FX-711 '87頃 \49.8K

 オークションでも人気があり高騰して見送る事が多かったチューナーだが、ボタンが壊れて電源が入らない品という事で、この機種としては比較的安く落とせた。最悪電源入れっぱなしにすればいいかと考えてた。
 到着後、本当に電源ボタンが効かないのでカバーを外しフロントパネルも外したら(一部リベット固定になってて抜くのに苦労)、電源ボタンがプラスチック成型品でその支持部が折れて動かなくなっていたのが原因と判明した。タクトSWを直接押したら無事電源がon/offできた。
 初期状態では Auto-tuneは効かなかったが、周波数を選んでMONOにしたら受信可。Signalレベルは24dB(ANT-A/B共)と低いが特にノイズは無し。局メモリも正常でANT-A/Bも記憶し、P-オフオンしても保持。基本機能は壊れてないようで一安心。
 内部構成はよく出来ている印象。基板が銅ネジで固定されてたり、PTの高圧側にはプラスチックの保護カバーがある等、細部に配慮も伺えた。
 電源基板にパワーTrが2コあるがそれほど熱くない。一方、MPX-ICの傍にあるP-Tr*2コのHSはかなり熱い(70℃位?)。また電源ケミCに液漏れらしき跡があった。まあ中古としてはマシなレベルだろう。
 ひろくん&BLUESS氏のHPに沿って調整して感度が上がりSTEREOになったが、受信レベルがF-777と比べてかなり低い。本機の場合、受信レベルが39dB未満だと自動でQSC(一種のHi-Blend)がONになってSepが下がる。S≧30dBならば十分低ノイズなので、このQSCレベルは少し高すぎると思うが調整点は見当たらなかったので、取敢えず受信レベルの方をVR602で嵩上げしてSep調整した。歪の方は例によって耳合せ。Sepはカタログの65dBまでは上がらなかったが50dBは確保でき、一応聴ける音質になった。
 この状態で音質評価すると、やや深いタイプの音で低音は力強い。KT1比で僅かに線が太く、低音の量感は勝るがアタックのピークが低めで丸められてる感。KT2比だと深みと分解が不足という印象。
 調整過程で気になったのが T101で、感度にピークが見えないまま右に回しきっていた。これはひろくんの修繕記事で頻繁に出てくるIFTの容量抜けが疑われる。本機は点検口がないので修理には面倒でも基板を裏返すしかない。音質に不満が残ったので観念して背面パネルを外し基板固定ネジを外してみたらコネクタ類は付いたままで基板は裏返せたので思ったよりは楽だった。
ひろくんの修理例に習って T101の3端子側に5pFのセラコンをハンダ付けして基板を戻し、再調整したら感度ピークが出るようになった。ただS値は上がらず。次に10pFに交換したら更にピークが明瞭になり、S値が1dB程度上がった。さらにセラCを50pFに交換した所、より左回りでピークになったが S値は大差無し。この辺が限界のようだ。

(パネル部の修復)
 パネルには電源の他にもタクトSWが多数並び、それをパネルのプラスチックボタンで押す構造になっている。基本的にはJ75やF120と同じなのだがバネやスポンジを省いてボタンで直接、首長のタクトSWを押し、プラスチックの弾性で元に戻る仕組みになっている。プラスチックの支持部は非常に薄いので簡単に折れてしまいそうだがストロークが1~2mmしかないので耐えられるという設計。5年間の技術進歩により部品加工精度が上がったためこういうコストダウン設計が可能になったのだろう。
 まず電源ボタンを修復。折れた部分を可動の邪魔にならない裏面でエポキシ固め。強度的には心もとないが先述のようにストロークが小さいので大丈夫だろう。
 本機のタクトSWは全て6mm角の小型版で大多数が接触不良気味になっていた。そのため前ユーザが電源が入らないとてボタンを強く押し込んでいる内に折れてしまったという事だろうか。J75やF120のタクトSWは10mm角で今でも確実に動作しているから、小型品は電極が酸化しやすいとみえる。
本来全交換が正道なのだろうが、数が多すぎて高さを揃えるのも技術が要るし、正直面倒。通販サイトで高さ9.5mm(9や10でも使えるのかも知れないが不明)のタクトSWが見つからなかった事もあって、SWに錆取りスプレー(コンタクトスプレーでは力不足)を吹掛けて多数回プッシュしてみたらかなり回復した。しばらく経つと再び接触が悪くなるSWも一部あるが、数回押せば何とか応答するレベルにはなった。チューナーでボタンを押す機会はそれほど多くはないので当面これで我慢する事とした。適合するSWが入手できたら電源だけは交換したいかな~。
 ボタン配置では、通常よく使う周波数Up/Dnのボタンが他のモードキー等と区別されていないので誤操作しやすく不親切。目でも手触りでも判別できるよう三角の白いシールを貼ってみた。実用十分だが少し不格好に見えるので最初から成形して欲しい所だ。
それから局メモリ11~20の選択は'+10'キーを押してから素早く1~10を押すのだが結構失敗する。'0'キーは不要だし'+10'キーで"2_"になるのは邪魔。単純なシフトの方が使い易いと思う。周波数ダイレクト入力とかメモリを30局以上にする予定でもあったのかな?
 I/F含むデザイン関係では全般にYAMAHAの方が上手(うわて)と思う。

(追記)10mm高のタクトSWを入手。数が足りなかったので自分がよく使うキー優先で交換してみた。パネル基板はリベットを抜けば配線そのままで裏返せたので思ったよりはスムーズに作業できた。テンキー部分は10mmのままで問題なかったが、電源スイッチ含むパネル部ではそのままだと誤動作したため、ハンドグラインダーで頭を少し削った。結構シビアだ。
 交換後は応答が確実になってやはり快適。クリック感のあるタイプのSWに交換したので押した事が判り易くなった。

(AMは手抜き気味)
 ほとんど使わないのだが一応AMも調整してみた。その際気付いたのがAMのS値が突然 0dBになってしまうためANT(室内用ループ型)の方向合せが非常に困難な事。ひろくんHPで紹介されてたFX-1100BKのサービスマニュアルを見直したらこれは仕様らしく、AMでは50dB以下は 0表示になると書いてあった。ちょっと乱暴すぎ。FMの場合は10dB以下で 0表示らしい。
比較のため T-X900を引っ張り出して実験したら、AMも0からほぼ連続的に変化し、ANT方向合わせはずっと楽だった。明らかにコストダウンのため手を抜いたと思える。
 ただし音質は特に良いとは言えないもののノイズはよく抑圧されて聴き易く、実用性は確保してる。'80年代前半頃はAMでもKT1のIF幅可変とか音質改善への工夫もしてたが、本機の'87年時点ではメーカーもAMはもうオマケと割り切ってたという事だろう。

(FMの音質は魅力的)
 IFT補修後、FM部は使いながら何度か音質微調整を繰り返し、最終的に評判通りに高音質である事が確認できた。
 まず基本的な情報量やSNは良好で、常用機として十分だ。アタックは非常に高速でクリップ感もなくなった。KT1&2より少し線は太めで音色的にはTU-S707と似てる。特徴として、低音の響きが大変締まっているので全体として音楽がキレ良く弾む印象を受ける~聴いてて気持ちの良いサウンドだ。T-X900の時も似た印象を持ったので、これがビクター技術陣の音作りなのだろう。ケンウッドと比べると明らかに色付けされていると思えるが、ビクターは単なるHiFiより音楽的に魅力のある音を目指したという所か。個人的にはソニーより好みの音だ。ただし優劣と言うより曲に依る。鋭いアタックはBGM的に聴く時は少し耳に障る時もあり、バラード的な曲ではしっとり音色のソニー優位と思う。
 ビクターはこれを超えるFMチューナーを出さないままJVCケンウッドに吸収されたのでビクターブランドでの完成形といえるかも知れない。
 サブシステム側のメインチューナーに採用した。


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