フツーの見方

フツーの論理で考えれば当然だと思うことが、なぜかマスコミでは出てこない。そんな意見を書き残しておきたいと考えてます。

FMチューナーはオワコンか まとめ編-1

2021-07-19 | Weblog

 入手した機種ごとに調整手順等も書いていこうと思ってたら全然進まなかった。思った以上に面倒なものだ。ひろくん氏は本当に偉大だな。
 その間にチューナーがやたら増えてしまったので取り敢えず、調整&試聴の簡単な感想をリスト化してまとめておこう。
 大体の機種のSpecは「オーディオの足跡」サイトにあると言うことで省略。逆にこのサイトに無い機種の情報を入手するのは非常に大変。すごい手間が掛ってる訳で頭が下がる。発売年等、一部疑わしいデータもあるが、信頼性のある情報源を見つけるのが難しく、余り修正提案もできない。
 なお音質比較にはピアノのアタック音が潰れずにきれいに鳴るかが一番判りやすいと思っている。NHKの「弾き語りフォーユー」が定期的に聴き比べられるので良き基準としている。

・テクニクス ST-G5 '83発 \49.8K
 30Tのテクニクスだからこれも音が良いかと期待して購入。サイズが小さい!というのが第一印象。独特のパネルデザインや選局ボタンI/Fは慣れてきたら結構気に入った。シンセ・チューナーの場合、一度setupしたら電源と選局ボタン以外はほとんど触らない。だから選局ボタンを大きく目立たせて、それを押す長さで2局選択できる様にして16局もメモリできるからまず不足はない。他のボタンは邪魔にならないよう小さくしてしまうという、今でもシンセとして一番合理的なデザインと思っている。ただしUp/Downボタンが小さくて押し間違いしやすいのでsetup時はやりづらい。多分そういう不評を受けて松下も後の機種では他社同様丸つまみを付けたり選局ボタンを相対的に小さくしてしまったのだろう。残念だ。
それよりANT入力が同軸ケーブル直結タイプで同軸が外側横方向に出るので狭いラック内だと配置が難しいと思われる。ここをF型にしなかった点と、本体が軽くてゴム足でもないので滑りやすいためボタンを押すと簡単に動いてしまう点の方が設計ミスと思う。決して安くはない定価に比べ大したコストダウンとも思えないのに。

 本機の調整記事は見つからなかったので、同時期の上位機ST-G7のひろくん記事を参考に試行錯誤で調整した。主要ICは以下の通りだが、G7とは一部しか一致せず、型番から検索して機能を推測。
 IC101=NEC uPC1018C …AMチューナ内蔵 FM IF Amplifier
 IC102=NEC uPC1167C2 …FM-IF with Quadrature Detector
 IC301基板裏=松下 7471S …(G7記事によれば 4066B と合せてSample & Hold MPXを構成)
 IC302=NEC D4066BC …Quad analog Switch
主な調整ポイントは
 T101+T102 …FM IFT 同調点→TP101~TP102間電圧=0V と歪(音質)調整
 VR301 …MPX V.C.O.調整→19kHz合せはオシロが無かったのでできず、全局が ST.になる様に調整
 L301 …Pilot cancel→当面無視、後にスペアナで19kHz最小化
 VR302/VR303 …FM separation
 VR501 …ANT入力レベル調整→無視
 本機は調整後もSTEREO時に薄いホワイトノイズ(WN)が入る。いくら調整を工夫しても消えず、モノにすると完全に消えるのでMPX周辺に故障があるのだと思う。
 この状態でKT1と比較すると、fレンジが少し劣り、分解能やキレは明らかに負け。何より静音時の高域WNが耳障りでクラシックでは致命的。WNを考慮外にしても音質がKT1に負けてるので頑張って修理する価値もなさそう。まぁ見た目では異常は無いので、修理する知識もないが。
 所が、WNが気にならない打込系の曲をNHKが特集で延々流してた日に、KT1と切替試聴してたら不思議とKT1より本機の方が何となく気持ち良いなと感じる気がした。Specから理由を邪推すると本機は低域f特が5Hzまで伸びている事が影響してるのかも知れない。いわゆる腹に響く重低音(20~200Hz程度)は寧ろKT1の方が強く感じるのだが、20Hz以下(超低音と呼称)も体の振動として感覚に影響するのかも知れない。当然大口径スピーカでないと差は出ないと思うが、家の30cmウーファーでは差を感じたということだ。あくまで私の印象に過ぎず、部屋のf特取る手段もないので真相は不明である。
 そもそもクラシック楽器だと超低音は直接出ないし、当時のアナログ磁気録音では20Hz以下は記録困難だったので当然FM放送でも20Hz以下成分はほとんど無かった筈。その状況で何故テクニクスが低域を伸ばしたのか意図が分からない。単にカタログ値で差別化したかったのだろうか。しかし今の所テクニクス以外にここまで超低域のf特を表記したメーカは見たことがないので他社が追従するほどのアピールはなかっただろう。
最近、ヤマハの T-6('80年頃)で10Hz~というSpecを見つけたが、その改良版 T-6a('81年)では30Hz~になってた。SANSUIの TU-S707X('84年頃)でも10Hz~のf特記載があった。それが後継のαシリーズではf特記載自体が無くなってた。やはり大したアピールにはならなかったのだろう。
 それが近年のエレキ楽器+デジタル録音だと超低域が簡単に再生・記録できるので実効性が出てきたのかも知れない。実際FMよりデジタルTVの方が超低音の出てる音楽や効果音が多い。本格システムに繋いで聴くと今のTVは非常に高音質で驚く。その分まじめに聴いてるとちょっと疲れるけど。

今は小型さとI/Fの良さを買って、PC付属のアクティブスピーカー(WNが気にならない)との組合せで寝室ラジオとして鳴らしているので一番活用してるとも言える。

・YAMAHA TX-100 '90発 \39.8K
 ヤマハTX-2000とほぼ同じレシオ検波回路と定価に見合わぬ良い部品を使ってる高CP機という事で狙ってみた。黒いボディに赤とオレンジのパネルデザインも洒落た感じで好みだった。
 音はクリヤでキレも良いが静寂感はKT1に負ける。KT1比で中域が華やかになる印象でポップス系の曲メインなら合うかも知れない。クラシックだとスッキリした音のKT1の方が好みだ。でもこの音質でTV対応+低価格だから当時としては高CP機だ。
 なお本機では19kHzフィルタ調整機能がないためスペアナで見ると19kHzピークが-40dB近く漏れている。しかし私の耳では聴いても全くわからないしメーカもこれで支障ないと考えて出しているのだろう。あまり数値に拘ってもしょうがない。
 本機はリモコン対応という事で、たまたまヤマハのAVアンプ用のRSリモコンを持ってたので使ってみたらちゃんと反応した。但し使えたのは選局ボタンをUp/Dwon+Shiftで選べる機能だけ。電源はアンプ側で連動という事か。
 TX-900のSメータが検波のS/N表示だったのと比べ、本機のSメータは音では変わらず局ごとに一定=他社同様信号強度表示のようだ。なおメモリ保持は非常に優秀で 2ヶ月AC抜いてたのに局メモリ残ってた。目立った調整ズレもなさそう。
改めて聴き直すと高域はやはり滑らかでキレイだ。でもTX-900の様にシルキーとまでは言えないという印象かな。低域はややボンつき傾向。キレや抜けは良く、常用機としても問題ないレベルと思う。ただ稀にだがゴロゴロとかボボボボという感じの音が薄く入った事があり、やはり部品劣化はあるのかも知れない。
 本機もPT&基板がかなり小さく(ひろくんHP参照)、すごくシンプルな作りに見える。90年代後期のパナやマランツもシンプルで小さい基板だったが、ヤマハはそれを先取りしていたようだ。スイッチ類の感触が良い点も総合デザインとして評価できる。

・ソニー ST-S333ESX '86.2発 \49.8K
 パッと聴いてKT1に負けない高音質&高SN。さすが人気機種。ロータリーつまみがなく古いためかST-S333シリーズ中ではESXは少し安値落札できたが、これ以降のソニー機の音質はほぼ横並びらしいし、後期は底面点検蓋がないので修理を考えれば前期の方が良いかも知れない。
 ただし当然部品の経年劣化リスクは増える。本機は電源部ヒートシンクがかなり温度が上がるので、ネットでも周辺ケミコン劣化やハンダ不良例が多いと書かれている。KT1やKT2は少し温かい程度でその点では有利だ。
実際、入手時点で電源ケミコンがやや膨れてる感じだったので交換も考えたが、今の所いい音がでてるからそのまま使ってる。手抜きだな。
 現状でも情報量の多い高音質で音色はKT1とは少し違う気がするが言葉で表現するのが難しい。KT1の方が少し線が細い感じでESXが少ししっとりした感じか。どちらが良いかは好みのレベル。
 なおソニーは穴が多数開いてるカバーなので内部に埃が多量に溜まっていたから清掃が大変だった。Kenwood系は穴なしカバーなので内部は比較的キレイな事が多く気分的には楽。

 その後、他のチューナーとの比較試聴を行って改めて気づいたが、ESXはKenwood系より重低音がよく響く。安物機のボンつきより重低音域なので嫌味は薄い。f特記載は 30Hz~15kHz(+0.2 -0.5dB)なので低域がどこまで伸びてるかのSpecはない。腹に響く音が出ていると感じるが、長時間聴いたり、曲によっては過剰感もある。しっとりした音色と相まってクラシックには向いてるかも。圧倒的な重低音を浴びたい人にも適。一方でKenwood系の方も重低音が出てない訳ではなく、締まってスッキリした低音と言える。ちなみにKT2のf特記載は 20Hz~15kHz±0.5dB なので低域が十分出てる事は確かだろう。
原音が判らないので曲と好みで評価が分かれる。メーカーの個性と言うべきか。

・KENWOOD KT-2020 '84発 \74.8K
 待望の高級機ゲット。入手時一応音は出たが典型的な周波数ずれの状態。そこから同調点だけ調整した状態では音はクリヤながら凡庸な音でKT1に及ばず少々ガッカリ感。しかしKenwoodの高級機がこんな音のはずはないと思い、コアドライバーを買ってRF調整したら、一聴してさすが高級機と判る深いイイ音に化けた。高級チューナーではRF調整も非常に重要だと勉強になった。
以後本機もメイン機として設置し、KT2と呼称する。
 本機ではKT1やESXではギリギリ感のあるPfアタックも余裕を持って再生できる印象。ならば万能かと言うと、音が全てキレイにされてしまうという感じもあり、意図的に歪を鳴らすロック系の曲だとKT1の方が迫力を感じる。
深いイイ音というのもある種の色づけとも言えるので、KT1の方がニュートラルなのかも知れない。ただ深い音は聴いてて魅力的なのも確かだ。
 キレイな音で聴きたい時はKT2、無色透明を好むならKT1、ESXは少し別の音色というのが個人的感想。ただし比較試聴しない限り、この3機(および系統機)を選んできちんと調整すればどんなジャンルでも不満はないと思う。
 入手したKT2は数日電源オンしないとメモリが消えてしまう欠陥持ちなので極力メインで使っている。

・Panasonic ST-G560 '89頃 \26.5K
 ひろくんが高評しており、Spec上もf特4Hz~だったので買ってみた。定価が格段に安く、基板構成も極めてシンプルなので半信半疑だったが、調整後の音はKT1に非常に近い高音質でびっくり。切替えてもあまり差が判らない感じ。KT2とは傾向が違うと思う。電波が弱い局だとWNが少し増える所で高級機と差がつく。といってもツイーターに近づかないと判らないレベルで、定価からすると非常に高CPだ。回路やIC技術がこなれてきた成果だろうか。
 なお出る音は優秀だが、無音部で比べると静寂感はKT1&2に敵わない。この辺はさすがに格が違うようだ。パナは何故か国内SpecにはSN値がないが、海外資料では73dB(IHF)表記だった。高級機レベルの80dBには達してない。
ただ、それほど大きい訳でもないしホワイトノイズは長く聞いてると段々慣れてくるので、このレベルでも音楽鑑賞に十分耐える。

 一方、ST-G5と比べてパネルは単色で地味。FLは安物なのか既に所々薄くなってる。あとMuteが手抜き気味な所とかコストダウンの影響はチラホラ見える。それに、たまにガサゴソというノイズが入る気もするが再現性不明で特定できていない。改めて同調点関係の調整をやり直したら出なくなった。温度の関係だろうか。やはり安定感で高級機には勝てないという印象。
 超低音に関しては曲に依るが大音量で鳴らすとKT1と違いを感じる気もする。が、元々曖昧な感覚なのでそれほど明確でもない。
 オークションでは高級機も価格的に大差ないので敢て狙う必要はないかな。

・Pioneer F-120 '82.10発 \45K
 パルスカウント検波の音を確かめたくて買ったが、当初私の耳では検波方式による音の違いはよく判らなかった。G560もクォードラチュア検波だがKT1との音色の違いは判らなかったし。メーカの個性や商品コンセプトの差の方が大きい気がする。
 音質としては透明感とキレがありKT1と非常に似ている印象。切替試聴するとKT1に比べて僅かに倍音成分が少ない気がする程度の差。発売がKT1の前年で1万円の価格差があるからこの音は立派だ。
 ただし SメータやAuto-tune機能が無いので使い勝手は劣る。
 本機は入手時の状態が非常に悪く、プププというノイズが頻繁に入り、ケミコンの液漏れ跡も多数あった。こりゃ失敗したかと思ったが、偶然からノイズに関してはパネルの切替SW周辺が怪しいことに気付き、潤滑剤スプレーして何度もSW操作してたら徐々に解消した。他のサイトで同様の故障例を見たので、この機種では必ず発生する選局ボタンのクッション劣化同様、起きやすいトラブルなのかも知れない。回路故障では無かったようだ。
当初、基板を調べてMPX部の近くでカットされたジャンパ線を見つけ(写真赤丸位置)、ひろくんの基板フォトと対照したら切れてなかったので、これが原因か!と思ったのだが接続してもノイズは変わらず。一方で Sep調整時にVR振り切って調整しきれなくなった。再び切断したら Min調整可能になったので ここでSep調整部のバラツキを吸収する設計と思われる。なかなか手ごわい。赤丸が切れてたジャンパ線
 ちなみに劣化クッションの代用品は皆さん色々工夫してるようだが、私は手元にあった1tの厚い強力両面テープを小さく切ってボタンの押し棒に2枚(SWと接する面だけカバー残し)貼り付けて対応した。1年経っても問題なく使えている。これもいずれ劣化するとは思うが、安上がりで交換は容易だ。
 先にケミコンを疑ってたので交換準備をしてたが、現状クリヤな音が出てるので保留。音が改善する可能性もあるが逆に壊す可能性もあるし、メインで使う予定もないし。局メモリもケミコンだけと思うが、コンセントを抜いても3day以上は保持されてる。

 調子が良くなったのでその後色々比較試聴してたら本機は一音一音が粒立って明確な印象を受けた。これがパルスカウントの特徴なのかな。音の粒に注意して比較するとクォードラチュア機は確かに一音一音はボヤケた(よく言えば響が付く)印象を受ける。音楽より寧ろ話し声の方が判りやすい。音楽としては問題になる事は少なく、私は情報量や全体のバランスの方を重視して聴いていた。
KT1より倍音が少ないと聴こえたのも余分な響が出ない本機の特質かも。確かにモニター機としては最適だが硬すぎる気もして、個人的には本機よりST-54の方が気持ちよく聴けたりする。しかし情報量は高く、十分常用機として使える事は確かだ。
 しばらくお休み後、通電したらまたプチッノイズが時々入るようになった。全ボタンを連打すると収まったが、本質的にはSWを外して洗浄した方がよいと思う。でもメイン機じゃないので誤魔化し使用。

・Marantz ST-54 '89頃 \36.9K
 これもひろくんが高評してたのと、出品時に落札値引キャンペーンやってたので購入。
 調整後は十分高音質である事を確認。KT1&2と比べると線が太く元気の良い音という印象。ロック系に合いそうだが、単独で聴いていればクラシックでも特に不満はない。定価からすれば非常に高CPだ。
 日本製とは異なる個性的デザインが気に入れば良。表示がLEDなので劣化の心配が少ない。I/FもST-G5と同じ長押しで1ボタンに2局メモリ型で慣れれば使いやすい。
 大音量で鳴らしたらスケール大で味のある非常に良い音に聴こえた。これがアメリカンサウンドか。適度な高調波or低周波が乗ってるのだろうか、低歪だけが音楽の良さでは無い訳だ。ソロよりはオケの方が合う印象。一方、ピアノソロは音が濁ってるような印象を受けるので線が細いチューナーの方がキレイに聴こえる。むしろ万能では無い所が個性的で良い。
 久しぶりに聴いてたら静寂部でゴロゴロという微かなノイズが入る気がする(季節によっても変わるので室温が影響か?)。似たようなノイズは後期の安い機種(TX-100,G560)でも経験があり、調整し直せば大抵改善するが、やはり廉価機は安部品を使ってるためか安定性に劣るのだろうか。それでも本機は面白いのでサブ機として持つ価値がある。

・Victor FX-E77 '86頃?
 安かったのでシスコンの音サンプルとして購入。検索したが本機のSpec情報は見つからなかった。個人サイトの「オーディオの足跡」に比べて、メーカにはオーディオの文化的記録を残すという意識が無いのだろうか。個人サイトを巡って何とか分かったのは、80年代バブル期ミニコンのFM/AM/TVチューナー。上位にE99シリーズがあってその一段下の中級機らしい。AIWA/マイペースのOEMという説もあった。こっちも詳細情報が出てこないので真偽は不明。
 ミニコンなのに底板が外せる構造で点検修理が容易な造り。資料&参考サイトがないので部品番号から調整点を推測したが、TVやAMに比べFMの調整点が他のチューナーよりずっと少ない事に驚き。
FM部の主要ICは LA1265+LA3401 で、調整点はクォードラチュア検波の同調コイル2個と19kHzフィルタが終段にあるだけ。それでちゃんとチューニングできてる。その後、FE内(何でこんな所)にあるVRでセパレーション調整ができることに気づいた。その結果Specも意外に良くなった。低コスト化のための量産向き設計か。
 音はKT1と比較するとレンジや透明感・分解能は負けるが、結構クリヤで抜けも良い。単独で聴けば十分気持ち良い音で、調整点が少ないから安定性も良さそうだ。ミニコンで聴くには丁度よい音質なのかも知れない。

・ONKYO T-411M '94頃 \28K INTEC275シリーズ
 最近の低スペックチューナーの音質チェックとして購入。本機も詳しいSpecが見つからなかった。何とか探せた情報は、発売時期と価格の他は 幅275x高さ79x奥行308mm 2.2kg 歪0.2% ワイドFMとAM STEREOに対応がウリ、といった程度。後継のT-422Mが SN76dB 歪0.2% Sep45dB だから多分同レベルだろう。
 意外なことに使ってるFM関連のICは LA1266+AN7470 で上級機と大差ない。T-422Mの調整記事はあったのでそれを参考として、ICを基準に近くのコイルやVRを試行錯誤調整した。E77よりは調整点が多く、クォードラチュア検波のコイル調整で音色もかなり変化した。SNやレンジ感はそこそこ良い。音のキレや分解能は他のチューナーより明らかに劣る。調整前は三味線がギターに聴こえた位。調整でマシには成ったがアタックは全般にヌルい。スペアナで見ると16kHz以上の落ち込みがKT1より大きい。音の情報量を減らしてラジオ的に聞き易くした印象。本気の音楽鑑賞というより聴きやすさ重視で設計してるのだろう。
(追記)
 T-445XGの調整後に考えたのだが、本機も音質調整で線が細い音に寄せすぎたのかも知れない。響き優先で調整し直したら違った音になった可能性もありそう。しかし既にIFT流用した後なので再現不能。新たに買ってまで確認するレベルの機種じゃないし。
もし持ってる人がいれば、響き重視の調整してみると面白いかも知れないです。但し自己責任。

 ネット検索で T-405W,T-422M,T-433 は取説や解説が見つかったが T-411M は設定法が出てこなかった。一方オークションではまだ出品されてる物もあるので、私が試行錯誤して調べた結果を残しておこう。機種ごとに微妙に異なってるので。
時計:CLOCK ADJをダブルクリックしてADJが表示されたら{←→}で時刻合せ→MEMORY押して了。24時制のみでAM/PMや曜日の機能は見つけられなかった。
PROGRAM:{EVERY|ONCE|REC}のどれかを押してから時計同様に時刻とCHを選び→MEMORYで了。/消去はERASEボタンを押してから{EVERY|ONCE|REC}のどれかを押すと消える。
CH登録:周波数を合せ→MEMORY→CH{←→}で選択→MEMORY。消去はCH表示時にERASE。
CH自動登録:MEMORYを長押しするとAUTO SCANが始まり、見つかった順にCH登録してくれる。
番組名登録:CH選択後、CHARAを押し{←→}で文字選択してMEMORYの繰返し→最後CHARA押して終了。あくまでCHに登録されるので手動Tuneしたら表示されない。
DISPを押すと周波数と番組名が切替わる。
CLOCKを押すと時計と切替わる。

・ソニー ST-V9900TV '88頃 EE Liberty LBT-V9900
 バブル期の最上級シスコンのTV/FM/AM Timer tuner。デザインがESXⅡそっくり(サイズは少し小)で格好いい。ソニーのシスコンレベルはどの程度かと思い購入。これも単体のSpec情報がほとんど見つからない。Libertyは有名シリーズでその最上級機なのに。
 到着時の状況は、表示クッキリ,内部埃多量,AM受信可,FMは典型的な同調点ズレ,局メモリは正常。
本機も調整記事は見つからなかったので、典型的なクォードラチュア検波とみなして基板の部品表記とICとの位置関係から調整点を推測して弄り回し、何とかイイ音になった。
本機もクォードラチュア検波のIFT*2個(T201とT202)の微調で音質がかなり変わる。Pfのアタックがなるべくキレイに聴こえるように調整した。最終的にT201傍のTPが<10mVになるよう合わせれば正常にAuto-tuneできた。
 FEは3段でTV兼用と見えるのに意外なほど感度が良い。ESXも4段でTRIOの5段と張り合ってた訳でソニーの設計は優秀なのだろう。
 音質もESXに非常に近くて驚き。回路的には IC:LA1266+LA3401 の組合せのクォードラチュア検波で歪補正はないと思われるが、少しシットリ感のある音色や音の出方(キレや抜け)はESXと非常に似ている。検波方式よりメーカによるアナログ回路設計の個性の差が大きいと思える。
 さすがにESXやKT1と細かく比較すると打楽器のアタックや残響感が弱いし、重低音も量感不足。これはシスコンの小型スピーカに最適化しているのかも知れない。比較しなければ不満なく聴ける音だと思う。
 コンセント瞬断でも時計がリセットされるのは残念な仕様(多分)だが、局やタイマーのメモリは保持されてるらしく時計を再セットすればタイマーが復活する。時計セットは10キー入力できるので非常に簡単。ということで合理的な設計かも。なお時計の時刻入力は、CLOCK+AM/PM+12時間制+NEXT でできるが24時間制で入力すると点滅し続けるだけではっきりエラーが判らないので当初戸惑った。
 それとTuningツマミはロータリーでなく単に丸い形のUp/Down-SWで、見た目重視だった。商売としては巧い。
 あと他機とMute動作が違うようで、電源オンした後にANTをつないだ場合、選局ボタンを押すまで音が出ない。機種の切替試聴時に判ったのだが、最初面食らった。まぁ普通こういう使い方はしないから問題にはならないだろうけど。
 ESXでベースがよく鳴る音楽を長く聴いてると私は重低音の過剰感を感じるので、BGMとしては本機の方が聴きやすいかも。ただBGM用途なら後に入手した TU-S707 や F-777 の方が向いてると思うので結局出番がない。

 本機入手時、1日数秒単位で時計が遅れ、誤差がちょっと大きすぎ。基板表記によれば CT501:CLOCK ADJ で近くのTP=400kHz に合わせる事で時計精度を調整するようだ。ただ400kHzは簡易オシロの帯域外だったので、何度か試行錯誤することでほぼ正確な精度に合わせた。しかしクオーツ時計と同じなんだから設計次第で無調整にできる筈では…他社のタイマー付チューナーでは調整点自体が見つからないが時計はほぼ正確なので、後から気付いた。ソニー設計陣に妙なコダワリでもあったのだろうか。

・KENWOOD KT-V990 '86発 \59.8K
 KT-3030と同じ回路基板使ってるという事で購入。しかしIFT調整しても電圧が3V以下にできず、FMの同調が正しく取れないため一応音は出るもののSTEREOにならない致命的故障。本機はST/モノが完全自動で切替SWはないためどうにもならなかった。
恐らくIFTの容量抜けが原因かと思い小容量コンデンサをパラに入れてみたりしたが全くダメ。やむなく使わないチューナーから7mm角の代替できそうなIFTを探した。
まずT-411Mから取ったコイルは抵抗値が違っていた。試しに交換した所、IFT電圧は0Vに近く調整できたものの両端の赤バーが点滅する状態になり、やはりSTEREOにならない。
次にE77のコイルを外したら抵抗値がほぼ近く、交換後同調に成功。これで調整が進み、完成かと思ったが、半日鳴らした後でTuningするとまた両側赤バー点滅でSTEREOにならなくなった。やはりパラメータや温特が適合してないのだろう。ひろくんの ST-S5ES の記事~によると互換IFTを持つTunerも多々あるようだが、IFTのためだけに買うのもメイン利用する予定もないから勿体ない。
 本機は通電してると内部がかなり熱くなるのも信頼性的には問題か。電源Trの放熱器はESX以上に熱くて触っていられない程。KT1やKT2は少し温まる程度なのでコストダウンのため電源部とか無理してるのかも知れない。
 一日冷却して電源ONすれば正常に同調取れるのでその時に調整して音質比較した。
 音質は聴いた瞬間に判るKT2似(あるいはそれ以上)の深いイイ音系。TVもこの音質で聴けたとしたら当時は大変高CPといえる。でもアタック余裕度は僅かながらKT2の方が上の気がする。歪調整で変わるかもしれないがまともな測定器がないので何とも言えない。
ともあれ高級機並の上質の音だ。しかし今やTV部分は全く無駄だし、オークション価格差は小さいのでやっぱ高級機を狙った方が良いかな。

 前の調整は6~7月に行ったのだが、冬になって久々通電したら連日稼働しても正常にAuto-tuneできる。温度の低さが効くのだろうか。本当に直ったのならラッキーだが。→室温22℃の日に長時間稼働した後、またtuneできなくなった。残念。
 音質は相変わらず重低音量感もあってキレの良い深い音。ところが、Pfのアタックで時々明らかなクリップ歪を感じた。弦楽器でもギターや三味線だと大丈夫。だが、Pfやハープだと酷く、フルートの破裂音でもやはりノイズっぽい症状。
寒さのせいで調整がズレたかのと思ったが、F-120やKT-6040およびソニー機に切り替えても本機ほどではないが同じようなクリップ歪を感じた。スピーカーやアンプも複数台で切り替えてもやはりクリップ感が出たので原因が解らず悩んていたが、チューナーをF-777やTU-S707、KT-770に替えたら多少マシになる事が判った。
 まともな測定器がないため再現性のある実験ができず、未だ完全な証明は得られていないが、スピーカーが高域のスルーレート(SR)の大きな波形に付いていけてないのが原因ではないかと今の所推定している。サブシステムの部屋は暖房を入れてないため今は10℃近い寒さ。そのためエッジが固くなっているのが原因だろうか。でも10℃の日なら確実に出るとも言えないので結局証明は不可能かも。
しかし、各種Tunerの中でも特にクリップ感の強かった本機は特に高SRと思われるので実はかなりスピーカーを選ぶのかも知れない。
 あと本機はESXに似た少し重低音過剰感があるので曲によっては疲れる。個人的好みでは、引き締まった低音を出す TU-S707や Victor系の方がしっくり来る。当然、曲によって低音がよく鳴った方が嵌るものもあるが。

 本機で余りにクリップ歪を感じるケースが多かったので再調整してみた結果、歪み感が大幅に減った。L12,L11,L10辺りの調整が効くようだ。当時の調整が未熟だったか、気温変化が影響するのか。L12の電圧変化は非常に敏感で苦労。ひろくんHPでは20mV以内と書いてあるが頑張って合せても暫く経つとズレている。0.2V程度が限界な気もする。BLUESS氏の記事だとL11はL12と合せてTP7-8間電圧で調整となっているが、L11はTP電圧との相関性は薄い感じで、ひろくんHPの調整法が正道のようだ。その調整基準とされたR16はL17の傍でようやく見つけた。印字が抵抗の真下にあるため少し抵抗を曲げないと判らなかった。でも安定な発振器がないと調整に使えないので、結局耳(邪道)でPfの歪み感が少なくなるように合せた。注意して聴くとPfの強アタックではまだ少しクリップ感があるが一応聴けるレベルになった。
 まぁ手持ちの中でもPfアタックを完全に歪感なく鳴らせる機種の方が少ない。アタックに効く調整ポイントがどこかよく解らないし音源を自在に選べないので調整は難しく、まだ改善余地はあるのかも。一方で原則的に高額機の方がPfアタックの歪感は小さいので機種限界もありそうだ。あるいは部品の劣化もあるのか。
 なお、ひろくん記事でFE調整時の CN3の4pin とあるのはどこだか見つけられず、BLUESS氏の記事にある D42の電圧の方で調整した。両者の情報を総合して参考にさせてもらっている。
 最終的に調整不良の影響が大と思われるが、スピーカーの低温影響は上述の通り他のチューナーでも少しクリップ感があったので無いとも言えず、不確定。最近は気温が上がってきたためか他のチューナーも含め、音が軽くなってクリップ感は薄くなって来た印象。だからスピーカーの温特もあるような気がするが、如何せん印象であって確証は取れてない。

(追記) 1年経ってまた寒くなったら他のチューナーでもPfアタックがビリつく感じが再発した。多少程度の差はあるが多くのSPで同じ様なアタック潰れ感が特に寒い時に出るのでやはりSP側の問題のようだ。暫く大きめの音でSPを鳴らすと少しマシになるし。

 再調整後、本機を長く聴いてたら、確かにイイ音なんだが深い響が強調されすぎてちょっと人為的な感じもしてきた。重低音もESXの様に少しブースト気味。深い音系なら私はKT2の方が上品で好みかな。ひろくんの言う「KT-1010Fよりずっと良い音」説は個人的には異論ありで、KT1シリーズは無色透明系で方向性が違うと思う。
 ともあれ本機は常用して不満のない高音質には違いない。他と比較しない方が吉。

 暖かくなってきたら、Pfのクリップ感はどの機種でも改善した感じだ。やはりスピーカエッジの温度依存も一因だったと思われる。原因特定はなかなか難しいものだ。

・TRiO KT-770 '83発 \49.8K
 店頭で「受信できないジャンク品」表示で330円と格安だったので、IFT流用できるかと思い買ったが、なぜか完動品(受信可能という意味で)だった。もしかしてMutingオンでチェックしてたのだろうか。これまで中古入手したTunerはほとんどがMuting切らないと受信できない状態の物ばかりだったからMuteオフでテストするのは中古の常識かと。一方IFTは10mm角で、V990には流用不可だった。
 ということでまじめに調整したらKT1に匹敵する音になった。正直切替えても全く差が判らない。ひろくんHPによれば、本機を基にKT1が作られたのだから当然か。回路的にもほとんど同じでIF=narrowと局メモリ数だけの差らしい。表示はLEDだけなのでKT1のように球切れの心配がない点は寧ろ良。KT1同様非常にニュートラルな音で、一聴大人しくて特徴が薄いから店頭では目立たないかも知れない。ESXやV990で重低音が強調されてるのも店頭で差別化するための営業戦略ではないかと疑っている。低音の出にくい小型スピーカを補正する狙いとも考えられるが…。本機一番の不満点はメモリ6局が少なすぎる事。当時はFM局が少なかったから十分だったのか。
 F-120よりは軽度だが本機にも電源周りのケミコンに液漏れ跡があった。40年近く経ってるのだから仕方ない。音的には問題ないように思えるので今の所放置。局メモリもケミコンだけなのに1wkも保持できてる。意外に丈夫なものだ。

・Kenwood KT-6040 '91発 \45K
 定価が安い割に高級機を超える6連相当バリキャップ仕様。で音はどうだろうかと思い購入。6連といってもトラッキング調整は無いのでそれほど高性能という感じはしない。
 基板を見ると歪補正回路を中心にOp-ampが多数使われており従来のKenwoodとかなり違う印象。VR数もやたら多いので調整点を探すのが面倒だった。
 あと本機は同調点コイルがシールドケースに収められてるのが他機種と違ってるが、見せかけでなく実際恐ろしく敏感で先端金属の時計ドライバーでコアを触っただけで値が変動する。よってコアドライバー必須。
 ひろくんのHPに沿って一通り調整したが、翌日になったら同調が全く取れなくなり壊れたかとビックリ。調べた結果、FEの最大電圧を25Vに合せると余裕が殆ど無いためか、いつの間にか27Vの振り切り状態になってたのが原因。そこで最大値を24Vに合せたら安定になった。低コスト化で部品がギリギリの設計になってるのかも知れない。中古入手したチューナーはFE電圧低めになってる事が多かったが、それでも大体は正常にTuning取れたからこの程度は問題ない範囲だろう。
 この時期のKenwoodはFLが安物になってるという話通りで、赤のSTEREO表示が半分暗くなってる。長期使用は想定されていないようだ。従って実は80年代中頃の高級チューナーを入手してメンテした方が長持ちするかも知れない。
 感度は我が家の環境では適当な遠方局が無いので検証できず、Auto-tune時ノイズ電波で止まる事があるから寧ろ邪魔感。Muteレベルを変えられれば良いのだが不明。
 音はこれまでのTRIO路線と違い、無音時に吸い込まれるような静寂感を感じないというのが第一印象。音質はマランツほどではないが少し線の太い音になった感じ。これは失敗作かと思ったが、音楽を聴いてると特にSNが悪いという感じはなく、これはこれで力強いサウンドで十分イイ音と感じてきた。Op-amp多用といい、設計方針が変わったようだ。

 以上、中古なので個体差もあるはずだが、割と系統的に違いが見えたので結構正しい機種評価だろうと思ってる。でも、あくまで個人的な感想。

 高級機の特長は重低音の厚みに出る事が多いが、調べてみたら今やまともなスピーカーも絶滅危惧種でビックリ。現代はスマートスピーカーで音楽を聞く時代か。本格派はシアター向きのトール型か一気に数十万円の海外機になってしまう。昔の30cmクラスの中上級機は殆どない。今のスピーカーが壊れたら中古を探すしか無いみたいだ。しかしスピーカーの中古は確実に劣化してるだろうから今一信用できない。
 幸いにして毎日鳴らしている大型のSS-G5は非常に長持ちしてる。長く使って無かった中型ブックシェルフは最近引っ張り出したらウーファーエッジがボロボロに崩壊してた。まあこれ以上壊れないように祈るばかり。今どき廃棄するのも簡単じゃないし。

 

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