普段
ほとんど
家族以外と会話なんて
しないのに
立ち読みしてたら
つい
買っていた
会話術の本
これから
誰かと
話す予定もない
のにね
と
ひとり呟くと
お月様が
にっこり笑って
いた
なんて
聞き上手な
お月様
土曜日の
フードコートは
夜でも
賑やかで
賑やかで
主婦の寂しさを
忘れるくらい
賑やかで
賑やか
夜景の見える
カウンター席は
まるで
バーみたい
端っこの席
バニラシェイクが
ゆっくり
溶けてゆく
今夜
私の話しに
耳を傾けてくれるのは
お月様
やさしい
やさしい
お月様
白い月が
見てるから
心細くないよ
黄昏の
舗道
夕陽の
淡い
微笑みに
つられて
街の明かりが
灯るよ
今日も
お疲れさん
冷蔵庫は空っぽで
朝一で
買い出しへ
いつもの毎日に
溶けてゆく
エコバッグ片手に
カフェに入ると
コーヒーのいい香り
干したばかりの
こころと
溶け合って
また
いい香り
いつもの街に
降り立つと
雨
土砂降りの
雨
しとしとに
なるまで
待って
バスに
乗ると
吊り革につかまっている
私と
大きな荷物を
見て
近くに座る
人が
ここが
空いてるよ
とにっこり指さす
バスを降りると
雨は
上がっていて
ただ
優しい香りだけが
していた