ある日のカフェで
向こうの席から声がする。
「あのね、洗濯がね…」
楽しそうに話す声が微笑ましかった。
わたしが若いころは
生活感のある暮らしに
憧れを持っていて
買い物袋からネギをはみ出させては
誇らしげに帰っていた。
けれど30歳を越したころ
雑誌などでは、生活感のない暮らしの
特集ばかりが目についた。
時代は、生活感を隠すのね
と少し寂しく思ったりした。
そして40代。
ちょっと立ち話をしていると
「生活感がないですね」
と好意的に言葉をかけられた。
褒め言葉だったので
嬉しかったけれど
エコバッグからネギをはみ出させて
帰った。
やっぱりわたしは
生活感のある暮らしの方が
好きらしい。
ある日のカフェで聴こえた声が
きらきらと輝く…