今月2週間ほど山小屋にいたが、今冬の白馬は昨年の大雪がウソのように、雪が少なく連日暖かい日が続いた。時々降雪はあったがみぞれに近い湿った雪で、積もっても直ぐ融けてしまい、小屋の周りはところどころ地肌が見えていた。日中の気温は10度近くまで上がり、ストーブを燃やさなくとも過ごせる日もある位だった。豪雪で知られる白馬の冬を50年近く経験しているが、今冬のような記憶はあまりない。いよいよ地球温暖化が現実問題として迫ってきた感がする。
お蔭で今年は昨年のように階段や煙突が雪の重みで壊されることがなかったが、山から引いている送水パイプが凍り水が止ってしまう被害に会った。暖冬と水の凍結は一見矛盾するようだが、理屈はこうである。
気温が低いと水源から少量の水が一定して流れ凍ることはない。ところが気温が高いと雪解けの大量の水が川底の泥を巻き上げ勢いよく流れ、その泥がパイプに詰り、そこで止った水が中で凍ってしまうのである。夏も大雨の後は必ず水が止まってしまい、最初は理解できなかったが、濁流で巻き上げた泥が詰ることが原因であることがようやく分かった。
例年なら1月、2月は、パイプは2m近い雪の下に埋まり、全長60mも掘り起こすことは至難の業であるが、今年は雪が少なく簡単に掘り出せ、パイプ内に詰った氷を排出し、予想外に早く正常に流れるようにできた。これも暖冬のお蔭である。喜んでいいのか、憂うべきなのか複雑な気持ちである。