チャッチャチャチャチャチャ♪チャチャッチャ~♪チャチャッチャ~♪チャラ~ラ~~♪――パパパパパパパン♪
――ナミちゃん(オレンジ)を探せっ!!
本日紹介するナミちゃん(オレンジ)はこちら!――↑琥珀って光を当てるとオレンジに…以下略(汗)、前回同様琥珀ペンダントです。(↑)
そして飽きずに懲りずに前回の続きです。(汗)
●仲直りに成功! 貴女も彼(女)も寝るまでにはまだ時間があります。何をして過ごす?
「ナミさんゴメンなさい!!反省してるから許して下さい!!」
「…………」
「お~~~い!!ナミさぁ~~~~ん!!も、本当に反省してるから!!この通りだから…!!」
「……………………」
襖を隔ててペコペコ謝罪を試みるも、ナミさんはなしのつぶての引篭もり様だ。
困った…何とか興味を惹いて引き摺り出せないものか?
あれこれ頭を悩ませてる内、ふと或る考えが閃いた。
パソコンの電源を入れ、幾度かマウスクリックを繰返す。
現れた画面を見詰たまま、自分は襖向うのナミさんに呼びかけた。
「あ!ほらナミさん!!ルフィだ!!ルフィだよ!!」
「…………?」
襖の向うでナミさんが訝しんでる気配を感じられる。
「ああ!!今度はゾロが!!サンジやウソップ、チョッパー、ロビンも居るな~!!」
つくづく自分はナミさんの気持ちを逆撫でる事ばかりしているなぁと思う。
それでも独りで引篭もらせてる訳にはいかない…外に出て八つ当たりでも何でも良いから、感情を見せて欲しかった。
おもむろに襖が5㎝程開かれ、ナミさんの疑り深い眼が隙間から覗いた。
背中に冷や汗を感じつつ、愛想良く笑ってみせる。
「…嘘吐き!何処にルフィやゾロやウソップやサンジ君やチョッパーやロビンが居るってェのよ?」
「えっとほら…この中に…!」
正面のPC画面を指差して示した。
「その中!?…一体何が言いたいのよ、あんた!?」
痺れを切らしたナミさんが、襖を開けて飛び出して来る。
そうして自分の背後に回り、画面を覗き込んだ。
画面には――ワンピースファンが描いたルフィやゾロやウソップやサンジやチョッパーやロビンのイラストが映っていた。
暫しの間――2人無言のままで見詰め合う。
みるみる内にナミさんの目尻がつり上がって行くのが判った。
引き攣った笑いで応える。
ナミさんがゆっくりと両手で自分の頭を押えた。
そのままPC画面目掛けて大きく振り被るように――
――ガンッ!!!!
――叩き付けられた瞬間、目から猛烈に火花が散った…。
「あんたって…!あんたって本当に無神経で…役立たずで…兎に角最低よ!!最っっ低!!!」
「……いやまったく仰る通りで…」
「これがルフィ!?これがゾロ!?これがウソップ!?サンジ君…!?どんなものだって私の仲間の代りになんかならないっ!!しかも絵!?…笑わせないでよっ…!!!」
「…誠に…痛いくらい身に沁みて解ってますとも…!」
窓にへばり付く蝿の気持ちになりながら画面を弄る。
どうやらウィンドウは割れてないらしい…と置かれた状況を省みず、自分は密かに安堵した。
「じゃあどうしてこんな真似するのよ!?そんなに怒らせたい!?ファンだなんて言ったけど、本当は私の事嫌いなんじゃないの!?」
「…いえ…自分はただ…」
「『慰めたかっただけ』!?こんな手で慰められると思ったんなら…私、あんたを正真正銘軽蔑してやるからっ!!!」
「…いえいえ、もっと単純に…『見せたかっただけ』と言いますか」
「はああ!??」
パジャマの袖で鼻血を拭い振向けば、ナミさんは真っ赤な顔して涙ぐんでいた。
ああ、遂に泣かせてしまった…自分の胸に罪悪感が大波になって打ち寄せて来る。
自分という人間は本当に愚かで無神経で役立たずで…いっそ今此処に船長が居て、力の限りぶっ飛ばして貰えたら…そんな阿呆な事を考えたりした。
「……見せたかったって、何をよ?」
己で掘った墓穴に落ち込んでいた自分を、ナミさんの声が再び地上に呼び戻す。
未だ鼻をグスグス言わせ、目は赤らんでいたけれど、既に涙は引っ込ませていて。
他人に簡単に涙を見せようとしない、強気で逞しいナミさんを眩しく感じた。
先刻同様、ナミさんが肩越しに覗き込む。
自分は画面がよく見えるよう、体を横にずらした。
「…この麦藁帽子被ってるのがルフィ?」
画面に映ってる絵を指差し、ナミさんが尋ねる。
「はい、そうです」
自分が描いた訳でもないのに、はにかみながら頷いてみせる。
「それで…この緑色の髪したのがゾロで…鼻の長いのがウソップで…黄色い髪がサンジ君?」
「はい、当たりです」
「…ちょっと皆美形過ぎやしない~?」
絵を見詰めるナミさんは、呆れたように微笑んだ。
「いやいや、もっと凄いのも有りますよ。例えば…」
映っていた画面を閉じ、クリックしながら目当てのイラストを探す。
夜のしじまにカチカチカチカチ小気味好い音を響かせながら、1枚のイラストを開いて見せた。
途端にナミさんの横顔がハニワになって固まる。
「…誰?この薔薇背負った耽美な王子様は?」
「『サンジ』です」
「これがああ!!??」
「そして、この白い歯を煌かせ、涼やかに微笑んでる絵は『ゾロ』」
「嘘ォォ!!??」
「更に肉体派男優も真っ青、アダルトな色気を漂わせてるこちらの絵は『ルフィ』」
「イヤァァァ!!!!」
続け様に現れる有得ない「仲間」を前に、ナミさんは息も絶え絶え咽び笑った。
良かった…(絵を描いた人達には申し訳無いが)元気を取り戻してくれたらしい。
暫くの間ナミさんと自分は、同人サイトを巡って様々なイラストを閲覧しながら、和やかに会話して過ごした。
「これって、全部あんたの言う『ファン』が描いた物なの?」
「ええ、沢山有るでしょう?」
「そうね…殆ど誰か判別出来ない位、美形だけど」
「そこはまぁ…愛の力ってヤツで」
「私まで、こんな瞳キラキラに描いて貰っちゃってさ…照れ臭いけど悪い気はしないかな」
絵を見詰めるナミさんの瞳は、画面を反射し輝いていて、心なしか楽しそうに思えた。
「今月はナミさんのお誕生月間だったんで、何時もより多くナミさんを描いた絵が、ネットで出回ってるんですよ。ナミさんを主役にした小説も沢山発表されてるし」
「え?今月が私の誕生月??違うわよ、私の誕生月は7月だから――」
「ああ、向こうとこちらでは時間の流れ方が違ってるんでしたっけ。…けど、こっちでは今月が7月なんですよ。――そうだ!」
突如閃いた自分は、立上って台所に向った。
氷入りのグラスを2つ用意し、冷やしてあったコーラボトルを開けて注ぎ入れる。
泡立つコーラ入りグラスを自分から手渡されたナミさんは、訳が解らないといった風に首を傾げた。
「…一体何の真似?」
「ナミさんの誕生月を祝って乾杯しようかなぁ~~と…」
「あんたとォォ!!?」
力いっぱい嫌そうに顔を顰めるナミさんに、少々己のハートが傷付く。
だが気にせず笑ってグラスを近付け言った。
「お酒でも用意しとけば良かったけど…こんな機会でもない限り、直接お祝いなんて言えないし…」
その一言で少しだけ表情を和らげたナミさんは、お愛想ながらもグラスをカチリとぶつけた。
「乾杯!」
「おめでと~~う!!ナミさん♪♪」
2人一気に飲干してグラスを空ける。
中に残った氷がカララン♪と涼しげな音を立てた。
「ところで、ねェ…こんだけ私を描いた絵が多いって事は……ひょっとして1番人気は私とか?」
両手でグラスを玩びながら、ナミさんが上目遣いに尋ねて来る。
与えられた質問に対し、自分は気まずげに笑って、控え目に答えた。
「いえその…1番人気はルフィで…」
「ルフィがァ!!?」
「ああほら、作品の中では彼が主人公として描かれてるから…!」
「じゃ、2番人気は!?」
「…ゾロ」
「ゾロォォ!!?」
「ほ、ほら!彼は強いから、お子様人気が案外高くて…!」
「だったら…3番は!?」
「……サンジ」
「よ…4番は!?5番は!?6番は!?」
「……4番は……チョッパーで、5番は……ウソップ…だったかな…?んで6番は………ロビン…だったっけ…」
さっきまで和やかだった雰囲気がいっぺんに凍り付き、しじまが舞い降りる。
俯いた顔を上げ、ちらっと横目で様子を探れば、ナミさんは蒼い顔で薄ら笑いを浮かべていた。
クーラーも入れてないのに、ひんやりとした空気を感じる。
寒さに耐え切れず、後ろで回転してた扇風機の風を弱めた。
畳に視線を落としたまま、ナミさんがぼそりと呟く。
「……私は…?」
「………な……7位です……」
「………私…そんなに影の薄い役所なんだ…」
「いいいえ!滅相も御座りません!!むしろ作品に於けるヒロイン扱いっつうか…!!」
「ヒロインなのにベスト5にも入れないくらい、人気低いってェの……?」
いかん、怒っている…ナミさんが怒っている…。
小刻みに揺れてる肩から、彼女の静かな怒りが察せられる気がした。
熱帯夜だというのに、吹き荒れるブリザードをこの身に感じる。
今更ながら己の馬鹿正直さを悔やんだ。
「だ、大丈夫ですよ!!今度の人気投票では、必ずや自分も票を入れますから…!!」
「『必ずや票を入れる』ですってェェ…!?」
宥めるようヘラヘラ笑って言った自分の言葉尻にナミさんが噛み付いた。
ギラン!!と禍々しく光る両目が自分を正面から睨み付ける。
その肉食獣にも似た物凄い迫力に、思わず腰が引けた。
「『今度の人気投票』って事は、前回が有った訳よね!?その時にはあんた、ちゃんと私に投票したの!?」
「もも申し訳有りません!!!出し忘れましたぁぁ!!!」
土下座して詫びる自分の頭に、氷の融けたグラスが――カキコーン!!!とブチ当てられた。
続いてコーラ味の残る水を浴びた首を引っ掴まれ、ブンブン揺さぶられる。
「すいませんすいませんすいません!!8/18の人気投票締切日迄には絶対必ず今度こそ確実にナミさんに3票入れますからっっ!!!」
「たった3票~~~!!?仮にもファンだって言うなら300票ぐらい入れなさいよっっ!!!もしもまたベスト5入り逃したりしたら、金輪際『私のファン』だなんて名乗らせてやんないから覚悟据えて投票しなさいっっ!!!!」
「そ、そんなナミさぁぁん!!!」
脳を激しくシェイクされ、次第に遠ざかる意識の底で、自分は「バーテンダーなナミさんも良いかも…そんなパラレル設定話、何処かに無いかなぁ」なんて、お幸せな想像に耽ったりしていた…。
●疲れていたのか、彼(女)が布団に入らず眠ってしまいました。貴女はどうする?
シバキ疲れたのか…何時の間にかナミさんは、パソコンを前にコトリと眠ってしまった。
このまま布団に入らず居たら、夏といえど風邪を引いてしまうかも。
そう考えた自分は、可哀想と思いつつも、体を揺す振って起そうとした。
「ナミさん…!ナミさんってば…!
そんな所で寝たら風邪引いちゃうよ!!」
しかし何度揺さ振っても彼女は起きようとしない。
諦めて自分はナミさんの頭の下に枕をそっと敷き、押入れから掛け布団を出して、肩から爪先まで隠れるよう掛けてやった。
●貴女も寝ようと思った時、彼(女)の口から微かに寝言らしき声が。何て言った?
そうして自分も寝ようと部屋の明かりを消し、続く間に足を向けた時だ。
ナミさんが微かに寝言らしき声を漏らした。
思わず耳を澄まして聞き取ろうとする。
「…ルフィ…ゾロ……!」
聞えた途端、胸が詰った。
寝言は尚も続く。
「…ウソップ…ビビ…カルー…チョッパー…ロビン…フランキー…ブルック…」
この世界に来てからというもの…ナミさんは碌に眠っても居ない様子だった。
自分という他人を前に、ずっとずっと気を張っている様に思えた。
今夜こうして眠ってしまったのは、自分に気を許した訳ではなく、限界を突破しただけだろう。
アーロンの呪縛から逃れ、信頼する仲間を手に入れたというのに…
阿呆な自分のせいで、また精神の安らぎを奪われてしまった。
許し難い罪だと思う。
冗談でなく、ナミファンなんて、とても名乗れやしない。
嗚呼、神様…せめて夢の中でだけでも、彼女が大好きな仲間と過ごせますように…!
天を仰いで祈った所で…………ふと気が付く。
『あれ?…誰か足りなくやしないかい…??』
自分の疑問に答えるように、ナミさんが寝言を呟いた。
「…サンジ君……………は、どうでもいいけど…」
――ズルッ!!とコント風味にズッコケる。
さ…流石はナミさん、寝言でジョークをかましてみせるとは…!
彼女の底知れぬ偉大さに感心する自分だった。
気を取り直し、続く間に布団を敷いて横たわった。
仰向けになった自分の上で、明かりの消えた電灯の紐が、ユラユラ揺れてるのが目に付いた。
明日――明日の朝には、家族が帰って来る。
結局、何にも出来やしなかった…。
自分の無力さを噛み締めただけだ。
闇の中、頭を掻き毟って細く唸る。
隣の間で眠るナミさんの姿が目に留り、自分の胸は再び詰った。
【その6に続】
…次回こそ最終回。
嘘じゃないっす、本当っすから。(汗)
兎にも角にも皆さん、人気投票だけは忘れないように…今週号を買えば未だ間に合うからね。(笑)
纏めて私信気味に連絡…只今話にシンクロする如く従兄弟が泊まりに来てまして、家のパソコンがあんま触れません。(この記事は漫画喫茶で書いた物)
メールの返事は早くて今週末になるでしょう。
誠に失礼とは思いますが、暫しお待ち下されい。
それにともないナミ誕も8/9迄延長…百物語は8/10~とさせて頂きます。
とは言え8/6以降は準備時間を稼ぐ目的で、投稿した作品をアップしたりするだけなんで、ナミ誕リンクは構わずペリッと剥がしちゃってOKですんで。(笑)
――ナミちゃん(オレンジ)を探せっ!!
本日紹介するナミちゃん(オレンジ)はこちら!――↑琥珀って光を当てるとオレンジに…以下略(汗)、前回同様琥珀ペンダントです。(↑)
そして飽きずに懲りずに前回の続きです。(汗)
●仲直りに成功! 貴女も彼(女)も寝るまでにはまだ時間があります。何をして過ごす?
「ナミさんゴメンなさい!!反省してるから許して下さい!!」
「…………」
「お~~~い!!ナミさぁ~~~~ん!!も、本当に反省してるから!!この通りだから…!!」
「……………………」
襖を隔ててペコペコ謝罪を試みるも、ナミさんはなしのつぶての引篭もり様だ。
困った…何とか興味を惹いて引き摺り出せないものか?
あれこれ頭を悩ませてる内、ふと或る考えが閃いた。
パソコンの電源を入れ、幾度かマウスクリックを繰返す。
現れた画面を見詰たまま、自分は襖向うのナミさんに呼びかけた。
「あ!ほらナミさん!!ルフィだ!!ルフィだよ!!」
「…………?」
襖の向うでナミさんが訝しんでる気配を感じられる。
「ああ!!今度はゾロが!!サンジやウソップ、チョッパー、ロビンも居るな~!!」
つくづく自分はナミさんの気持ちを逆撫でる事ばかりしているなぁと思う。
それでも独りで引篭もらせてる訳にはいかない…外に出て八つ当たりでも何でも良いから、感情を見せて欲しかった。
おもむろに襖が5㎝程開かれ、ナミさんの疑り深い眼が隙間から覗いた。
背中に冷や汗を感じつつ、愛想良く笑ってみせる。
「…嘘吐き!何処にルフィやゾロやウソップやサンジ君やチョッパーやロビンが居るってェのよ?」
「えっとほら…この中に…!」
正面のPC画面を指差して示した。
「その中!?…一体何が言いたいのよ、あんた!?」
痺れを切らしたナミさんが、襖を開けて飛び出して来る。
そうして自分の背後に回り、画面を覗き込んだ。
画面には――ワンピースファンが描いたルフィやゾロやウソップやサンジやチョッパーやロビンのイラストが映っていた。
暫しの間――2人無言のままで見詰め合う。
みるみる内にナミさんの目尻がつり上がって行くのが判った。
引き攣った笑いで応える。
ナミさんがゆっくりと両手で自分の頭を押えた。
そのままPC画面目掛けて大きく振り被るように――
――ガンッ!!!!
――叩き付けられた瞬間、目から猛烈に火花が散った…。
「あんたって…!あんたって本当に無神経で…役立たずで…兎に角最低よ!!最っっ低!!!」
「……いやまったく仰る通りで…」
「これがルフィ!?これがゾロ!?これがウソップ!?サンジ君…!?どんなものだって私の仲間の代りになんかならないっ!!しかも絵!?…笑わせないでよっ…!!!」
「…誠に…痛いくらい身に沁みて解ってますとも…!」
窓にへばり付く蝿の気持ちになりながら画面を弄る。
どうやらウィンドウは割れてないらしい…と置かれた状況を省みず、自分は密かに安堵した。
「じゃあどうしてこんな真似するのよ!?そんなに怒らせたい!?ファンだなんて言ったけど、本当は私の事嫌いなんじゃないの!?」
「…いえ…自分はただ…」
「『慰めたかっただけ』!?こんな手で慰められると思ったんなら…私、あんたを正真正銘軽蔑してやるからっ!!!」
「…いえいえ、もっと単純に…『見せたかっただけ』と言いますか」
「はああ!??」
パジャマの袖で鼻血を拭い振向けば、ナミさんは真っ赤な顔して涙ぐんでいた。
ああ、遂に泣かせてしまった…自分の胸に罪悪感が大波になって打ち寄せて来る。
自分という人間は本当に愚かで無神経で役立たずで…いっそ今此処に船長が居て、力の限りぶっ飛ばして貰えたら…そんな阿呆な事を考えたりした。
「……見せたかったって、何をよ?」
己で掘った墓穴に落ち込んでいた自分を、ナミさんの声が再び地上に呼び戻す。
未だ鼻をグスグス言わせ、目は赤らんでいたけれど、既に涙は引っ込ませていて。
他人に簡単に涙を見せようとしない、強気で逞しいナミさんを眩しく感じた。
先刻同様、ナミさんが肩越しに覗き込む。
自分は画面がよく見えるよう、体を横にずらした。
「…この麦藁帽子被ってるのがルフィ?」
画面に映ってる絵を指差し、ナミさんが尋ねる。
「はい、そうです」
自分が描いた訳でもないのに、はにかみながら頷いてみせる。
「それで…この緑色の髪したのがゾロで…鼻の長いのがウソップで…黄色い髪がサンジ君?」
「はい、当たりです」
「…ちょっと皆美形過ぎやしない~?」
絵を見詰めるナミさんは、呆れたように微笑んだ。
「いやいや、もっと凄いのも有りますよ。例えば…」
映っていた画面を閉じ、クリックしながら目当てのイラストを探す。
夜のしじまにカチカチカチカチ小気味好い音を響かせながら、1枚のイラストを開いて見せた。
途端にナミさんの横顔がハニワになって固まる。
「…誰?この薔薇背負った耽美な王子様は?」
「『サンジ』です」
「これがああ!!??」
「そして、この白い歯を煌かせ、涼やかに微笑んでる絵は『ゾロ』」
「嘘ォォ!!??」
「更に肉体派男優も真っ青、アダルトな色気を漂わせてるこちらの絵は『ルフィ』」
「イヤァァァ!!!!」
続け様に現れる有得ない「仲間」を前に、ナミさんは息も絶え絶え咽び笑った。
良かった…(絵を描いた人達には申し訳無いが)元気を取り戻してくれたらしい。
暫くの間ナミさんと自分は、同人サイトを巡って様々なイラストを閲覧しながら、和やかに会話して過ごした。
「これって、全部あんたの言う『ファン』が描いた物なの?」
「ええ、沢山有るでしょう?」
「そうね…殆ど誰か判別出来ない位、美形だけど」
「そこはまぁ…愛の力ってヤツで」
「私まで、こんな瞳キラキラに描いて貰っちゃってさ…照れ臭いけど悪い気はしないかな」
絵を見詰めるナミさんの瞳は、画面を反射し輝いていて、心なしか楽しそうに思えた。
「今月はナミさんのお誕生月間だったんで、何時もより多くナミさんを描いた絵が、ネットで出回ってるんですよ。ナミさんを主役にした小説も沢山発表されてるし」
「え?今月が私の誕生月??違うわよ、私の誕生月は7月だから――」
「ああ、向こうとこちらでは時間の流れ方が違ってるんでしたっけ。…けど、こっちでは今月が7月なんですよ。――そうだ!」
突如閃いた自分は、立上って台所に向った。
氷入りのグラスを2つ用意し、冷やしてあったコーラボトルを開けて注ぎ入れる。
泡立つコーラ入りグラスを自分から手渡されたナミさんは、訳が解らないといった風に首を傾げた。
「…一体何の真似?」
「ナミさんの誕生月を祝って乾杯しようかなぁ~~と…」
「あんたとォォ!!?」
力いっぱい嫌そうに顔を顰めるナミさんに、少々己のハートが傷付く。
だが気にせず笑ってグラスを近付け言った。
「お酒でも用意しとけば良かったけど…こんな機会でもない限り、直接お祝いなんて言えないし…」
その一言で少しだけ表情を和らげたナミさんは、お愛想ながらもグラスをカチリとぶつけた。
「乾杯!」
「おめでと~~う!!ナミさん♪♪」
2人一気に飲干してグラスを空ける。
中に残った氷がカララン♪と涼しげな音を立てた。
「ところで、ねェ…こんだけ私を描いた絵が多いって事は……ひょっとして1番人気は私とか?」
両手でグラスを玩びながら、ナミさんが上目遣いに尋ねて来る。
与えられた質問に対し、自分は気まずげに笑って、控え目に答えた。
「いえその…1番人気はルフィで…」
「ルフィがァ!!?」
「ああほら、作品の中では彼が主人公として描かれてるから…!」
「じゃ、2番人気は!?」
「…ゾロ」
「ゾロォォ!!?」
「ほ、ほら!彼は強いから、お子様人気が案外高くて…!」
「だったら…3番は!?」
「……サンジ」
「よ…4番は!?5番は!?6番は!?」
「……4番は……チョッパーで、5番は……ウソップ…だったかな…?んで6番は………ロビン…だったっけ…」
さっきまで和やかだった雰囲気がいっぺんに凍り付き、しじまが舞い降りる。
俯いた顔を上げ、ちらっと横目で様子を探れば、ナミさんは蒼い顔で薄ら笑いを浮かべていた。
クーラーも入れてないのに、ひんやりとした空気を感じる。
寒さに耐え切れず、後ろで回転してた扇風機の風を弱めた。
畳に視線を落としたまま、ナミさんがぼそりと呟く。
「……私は…?」
「………な……7位です……」
「………私…そんなに影の薄い役所なんだ…」
「いいいえ!滅相も御座りません!!むしろ作品に於けるヒロイン扱いっつうか…!!」
「ヒロインなのにベスト5にも入れないくらい、人気低いってェの……?」
いかん、怒っている…ナミさんが怒っている…。
小刻みに揺れてる肩から、彼女の静かな怒りが察せられる気がした。
熱帯夜だというのに、吹き荒れるブリザードをこの身に感じる。
今更ながら己の馬鹿正直さを悔やんだ。
「だ、大丈夫ですよ!!今度の人気投票では、必ずや自分も票を入れますから…!!」
「『必ずや票を入れる』ですってェェ…!?」
宥めるようヘラヘラ笑って言った自分の言葉尻にナミさんが噛み付いた。
ギラン!!と禍々しく光る両目が自分を正面から睨み付ける。
その肉食獣にも似た物凄い迫力に、思わず腰が引けた。
「『今度の人気投票』って事は、前回が有った訳よね!?その時にはあんた、ちゃんと私に投票したの!?」
「もも申し訳有りません!!!出し忘れましたぁぁ!!!」
土下座して詫びる自分の頭に、氷の融けたグラスが――カキコーン!!!とブチ当てられた。
続いてコーラ味の残る水を浴びた首を引っ掴まれ、ブンブン揺さぶられる。
「すいませんすいませんすいません!!8/18の人気投票締切日迄には絶対必ず今度こそ確実にナミさんに3票入れますからっっ!!!」
「たった3票~~~!!?仮にもファンだって言うなら300票ぐらい入れなさいよっっ!!!もしもまたベスト5入り逃したりしたら、金輪際『私のファン』だなんて名乗らせてやんないから覚悟据えて投票しなさいっっ!!!!」
「そ、そんなナミさぁぁん!!!」
脳を激しくシェイクされ、次第に遠ざかる意識の底で、自分は「バーテンダーなナミさんも良いかも…そんなパラレル設定話、何処かに無いかなぁ」なんて、お幸せな想像に耽ったりしていた…。
●疲れていたのか、彼(女)が布団に入らず眠ってしまいました。貴女はどうする?
シバキ疲れたのか…何時の間にかナミさんは、パソコンを前にコトリと眠ってしまった。
このまま布団に入らず居たら、夏といえど風邪を引いてしまうかも。
そう考えた自分は、可哀想と思いつつも、体を揺す振って起そうとした。
「ナミさん…!ナミさんってば…!
そんな所で寝たら風邪引いちゃうよ!!」
しかし何度揺さ振っても彼女は起きようとしない。
諦めて自分はナミさんの頭の下に枕をそっと敷き、押入れから掛け布団を出して、肩から爪先まで隠れるよう掛けてやった。
●貴女も寝ようと思った時、彼(女)の口から微かに寝言らしき声が。何て言った?
そうして自分も寝ようと部屋の明かりを消し、続く間に足を向けた時だ。
ナミさんが微かに寝言らしき声を漏らした。
思わず耳を澄まして聞き取ろうとする。
「…ルフィ…ゾロ……!」
聞えた途端、胸が詰った。
寝言は尚も続く。
「…ウソップ…ビビ…カルー…チョッパー…ロビン…フランキー…ブルック…」
この世界に来てからというもの…ナミさんは碌に眠っても居ない様子だった。
自分という他人を前に、ずっとずっと気を張っている様に思えた。
今夜こうして眠ってしまったのは、自分に気を許した訳ではなく、限界を突破しただけだろう。
アーロンの呪縛から逃れ、信頼する仲間を手に入れたというのに…
阿呆な自分のせいで、また精神の安らぎを奪われてしまった。
許し難い罪だと思う。
冗談でなく、ナミファンなんて、とても名乗れやしない。
嗚呼、神様…せめて夢の中でだけでも、彼女が大好きな仲間と過ごせますように…!
天を仰いで祈った所で…………ふと気が付く。
『あれ?…誰か足りなくやしないかい…??』
自分の疑問に答えるように、ナミさんが寝言を呟いた。
「…サンジ君……………は、どうでもいいけど…」
――ズルッ!!とコント風味にズッコケる。
さ…流石はナミさん、寝言でジョークをかましてみせるとは…!
彼女の底知れぬ偉大さに感心する自分だった。
気を取り直し、続く間に布団を敷いて横たわった。
仰向けになった自分の上で、明かりの消えた電灯の紐が、ユラユラ揺れてるのが目に付いた。
明日――明日の朝には、家族が帰って来る。
結局、何にも出来やしなかった…。
自分の無力さを噛み締めただけだ。
闇の中、頭を掻き毟って細く唸る。
隣の間で眠るナミさんの姿が目に留り、自分の胸は再び詰った。
【その6に続】
…次回こそ最終回。
嘘じゃないっす、本当っすから。(汗)
兎にも角にも皆さん、人気投票だけは忘れないように…今週号を買えば未だ間に合うからね。(笑)
纏めて私信気味に連絡…只今話にシンクロする如く従兄弟が泊まりに来てまして、家のパソコンがあんま触れません。(この記事は漫画喫茶で書いた物)
メールの返事は早くて今週末になるでしょう。
誠に失礼とは思いますが、暫しお待ち下されい。
それにともないナミ誕も8/9迄延長…百物語は8/10~とさせて頂きます。
とは言え8/6以降は準備時間を稼ぐ目的で、投稿した作品をアップしたりするだけなんで、ナミ誕リンクは構わずペリッと剥がしちゃってOKですんで。(笑)