天気予報とにらめっこし、この日しかないということで前日に上高地行きを決めました。冬の上高地は5年ぶり。日の出に合わせて入るには沢渡を5時ごろに出発しないと間に合わないため前日にタクシーの予約をしようとすると、「冬は7時からしか動かない」「7時以降も予約がいっぱいで9時過ぎになってしまう」などと芳しくない返事。5年前に早朝送ってくれた運転手の名刺をもらっていたのでその方のことを聞いてみるとすでにリタイヤされたそう。行けば何とかなるかなあと思い、とりあえず早くに着いて、最悪3時間遅れでバスで入り、日中だけでも楽しむことにします。
前日夜に松本市の道の駅・今井恵みの里に入り車中泊。冬用寝袋で寒くもなくぐっすりと眠ることができました。ところが深夜1時すぎ真横に大型トラックが停車し、ずーっとエンジンをかけたまま。うるさいし排気臭いし、まったく非常識極まりない。トラック専用スペースだって空いているだろうが!仕方なくこちらが移動しました。
4時に起きて出発します。上高地への足が不安なまま5時過ぎに沢渡の駐車場に到着すると、1台のタクシーが停まっています。運転手に聞いてみると7時に予約が入っているけれど、その前なら乗っけていってあげるとのこと。すぐに支度を整え送ってもらいます。幸先良いスタート。やっぱりなんとかなるもんです。
釜トンネル入口を6時ちょうどにスタート。全長1300m余りの釜トンネルは非常灯が点く意外は真っ暗で、ヘッドランプの灯りが頼りです。先行する4人組がいるおかげでなんとなく不安感はありません。突然車の音がして、トラックなどの工事車両が追い抜いていきました。上高地は人があまり入り込まない冬にいろいろな工事を行っているそうです。しかも、現在の釜トンネルの先には新たなトンネル工事を行っています。釜トンネルを抜けた右側の急斜面は土砂崩れや雪崩などの巣窟となっていて、そこを回避するための新たなルートになるようです。
20分ほどでトンネルを抜けると明るくなった空に、焼岳が姿を現します。やがて穂高連峰が見えてくるとまもなく大正池に到着します。すでに穂高連峰の先端に太陽が当たり始めています。急いで撮影場所を見つけます。
モルゲンロートはやや控えめ 逆さ穂高
大正池は一部が氷結していて、凍っていない一角には西穂高岳が映っていました。今回はいつもと違う場所での撮影でしたが、その先の撮影ポイントには30人ほどのカメラマンが列をなしています。どうやら撮影ツアーの一団のようです。
さて、大正池のほとりの木々には霧氷が付いていて、冬の上高地の代表的な撮影ポイントの田代池の霧氷にも期待が高まります。しかし人が立てるのはせいぜい十数人、しかも良いポイントは限られています。ツアー団体の前に場所を確保しておかないととても撮影することができそうにありません。大正池での撮影を早々に切り上げ、ツアーの一団を横目に田代池に向かいます。
焼岳にも日が当たってきました
田代池に着くと、先ほど同じ場所で撮影していた方とトンネル内で先行していた4人組のみで、とりあえず一安心、撮影場所を確保します。霧氷も期待通り付いていて真っ白です。
日が当たる前の幻想的な田代池
真っ白な穂高の峰々
しかし、ここに日が差し込むまでにはまだ1時間30分ほども時間があります。この待っている間がとにかく寒い。そういえば釜トンネル下で-12度だったので、おそらく-14~-15度くらいでしょうか。温かいものを飲んだりしながら過ごしていると、スノーシューを履いた30人ほどの団体がやってきました。何でも昨夜岡山を出発し、大正池から田代池までを周り、これから下山して岡山まで帰るのだそう。往復15時間あまりかけて滞在時間は3、4時間という強行軍です。なんともせわしなく非効率なツアーですが、これだけの景色が見える日は貴重なので、来るだけの価値はあったかもしれません。
9時30分過ぎ、いよいよ田代池にも日が差し込んできました。そして幻想的な霧氷がキラキラと輝きを増し、なんとも素晴らしい光景。と同時に寒さからも解放され、太陽のぬくもりが身体を温めます。
田代池の霧氷①(2枚前と同じ構図で)
田代池の霧氷②
賑わう田代池
田代池をあとにして河童橋へと向かいます。先程までの寒さが嘘のようで、歩くと暑いくらいです。トレースがしっかりあって、ほとんど踏み抜きもなく快適なハイキングです。
トレースもしっかりあり、穂高を目の前に快適なハイキング
冬季の上高地は登山者や最近ではスノーシューなども盛んなため、大正池や中ノ瀬、バスセンターなどに冬季用トイレも設置されていてその辺も問題はありません。トレースもしっかりついていますが、そこから外れると一気に膝上まで雪に埋もれます。中ノ瀬のテーブルやベンチも雪を被って当然使えません。そのかわり綺麗な雪の上に樹木の影が伸びて、様々な絵柄を映し出しています。
中ノ瀬のテーブルとベンチ(知らないとなんだかわからない?)
梓川の左岸を河童橋まで歩くほどに穂高連峰が近づいてきます。これ以上ないという青空の下、雪山が眩しい。しかも、大正池や田代池に比べてここまでくる人は少なくなって、静かな上高地を満喫できます。
梓川を前に穂高連峰
河童橋が近づくと重機の音が静寂を破ります。なんと川の中に重機が数台入り、浚渫をしていました。梓川には周囲の沢から土砂が流れ込み、上高地の景観を守るためにはこのような作業が必要だそうです。特に大正池には年々土砂が溜まり、浚渫を行わないと数年で埋まってしまうそうです。
浚渫作業中(奥が河童橋です)
シーズン中は観光客で賑わう河童橋もこの時期は数十人程度しか訪れない静かな場所へと変わります。河童橋に人がいない写真などシーズン中では考えられませんが、この時期なら容易に撮ることができます。テント装備をした数人の方がちょうど目の前を通りました。後ろにはソリで荷物を引いています。確かに道はしっかり踏んであるし、背負うよりもはこちらのほうが楽かも。これはナイスアイデアです。
人のいない河童橋
ちょうどお昼時になったので、河童橋のすぐ先で絶景を見ながらの昼食にします。温かいものを食べたいので、今回はバーナーとコッフェルも持参。今回もいつもの野菜スープのフリーズドライとコンビニおにぎりを使ったかんたん雑炊。バカの一つ覚えとはこのことですなあ。周りには数組、やはりお昼を作っている人がいました。カップラーメンが多かったかな。風もなくてぽかぽか陽気に綺麗な景色。雪の上にそのまま寝てしまいたい気分です。釜トンネル下から沢渡に向かうバスは14時15分と14時55分。どちらかに乗って帰ろうと考えています。ここからおおよそ2時間弱なので、12時半くらいまで景色をながめてボッーと過ごします。
絶景に後ろ髪を引かれつつ穂高連峰に見送られながら帰路に向かいます。途中、田代橋のたもとで、朝、田代池でお会いした2人の方と再会。同じく下山するところということなので、ご一緒させていただきます。とてもお話の面白い方たちで、あっという間に大正池まで帰ってきました。早朝は池まで光が差し込んでいませんでしたが、この時間は光が回って朝とはまた違う表情を見せてくれています。ここで穂高ともお別れです。
帰り際の大正池からの穂高連峰
帰りはひたすら下りの釜トンネルを抜けて、トンネル出口の中の湯登山口には14時30分に到着。バスの時間まで20分ほどあったのでしばらく待っているとタクシーが来て、4人で乗っていけばバスより早く、安く帰れるということで相乗りさせていただき沢渡まで戻ります。
帰りは乗鞍高原にある日帰り入浴施設「湯けむり館」に立ち寄ります。以前の場所から移設され、新しくなった建物ですが、なんだか前のほうが広くて、風情もあったのでちょっと残念。お湯は乳白色の以前と変わらない良いお湯でした。
翌日もお休みなので、松本周辺の山道具店に立ち寄りながら夕飯もこちらで食べていくことにしました。松本市に隣接する山形村にある以前から気になっていたお店でその名も「ご飯屋」。山形村は長芋が特産ということで、松本名物山賊焼きに長芋とろろをつけていただきました。けっこうボリュームがありましたが、今日は13kmくらい歩いたので良しとしますか。
山賊焼き定食+長芋とろろ(左上白飛びしちゃった)@ご飯屋