桜井市の喜多美術館に久しぶりに行って来た。神戸から奈良までは電車が直通になって、だいぶ行きやすくなったが、それでも二時間以上はかかる。
雨も小雨で、暑さも峠を越して、大和路のミニ旅行になった。喜多美術館のコレクションの中で行くたびに出会いたい作品がある。洋画家、須田国太郎の
作品である。今回も出会えた。東洋的な渋さが醸し出す内省的な画面、独特の黒が重厚感を導く。厚塗りでない油彩の使い方に、いつもこころ惹かれる。
また、会えて、嬉しい。私が、書道から水墨画に創作の道を変えた時期に、大きな影響を受けた画家である。そのころは、須田国太郎の大きな展覧会を
見る機会もあり、常設の美術館へも、何度か足を運んだりした。画集も、評論も常に手元に置いている。
何度見ても、やはり、いつもいいなあと思う。こちらのこころが少し暗かった時期は、画面が、暗いと感じていたが、今回は、明るい色調の部分がすっ
と眼に飛び込んできて、ああ、こんな明るさのある絵なんだ...と新鮮な感覚だった。見る度に違って見える。こちらのこころ模様を反映するかのよう
に。
制作の過程で喜怒哀楽を何度も何度も通り過ぎた作品。だからこんなにも、惹きつけられるのだろう。
美術館から山辺の道を通って、三輪明神へ。いつも通りのコース。
参道は清冽なエネルギーに満ちている。内省的な絵を、妥協のない作品を描かなくては。
名物『みむろ』をおみやげに買って、神戸への帰路についた。
BLUE IN BLUE '99-5 ミックスドメディア 1999
162.0×130.3cm