以前このブログの中で、国際結婚に関して、いわゆる偽装結婚がらみの案件について書いたことがあります。
グレーゾーン案件のはざまで・・・(2005.6.4)
今回はそれと同じようなそうでもないような件について。
業務上、内容証明郵便の作成はよくあります。そして私の場合、末尾に「本書面は、行政書士法第一条の三の規定に基づき当職が代理人として作成した。」と入れることがほとんどです。もちろん依頼者側から、自分が差出人として出したいということで代理人の記載をしないこともありますが。
今回書いていくことは、その代理人としての記名・押印についても関係してきますが、要するに依頼者から内容証明の作成を頼まれた場合、どこまで書くのか、あるいは書くべきなのか、または書かないべきなのか、という点。
ちょっとわかりずらい書き方になってしまいましたが、つまりどこまで依頼人の意向を書けばいいのかということ。 これも良くわかりませんね・・・
内容証明とは、契約書などと異なり、通常は当事者の一方から相手方に対し、一方的な意思表示を記載します。「金を返せ!」 「金を払え!」 「訴えるぞ!」 というような一方的な意思表示です。
さて問題となるのは、金を返せと言っているが本当に貸しているのか、金を払えと言っているが本当に請求権はあるのか、といったように、原因となる事実がないのにそれに基づいた請求を内容証明郵便にして相手方に通知していいのかということです。
法律的には脅迫文でもない限り問題はないはずです。錯誤の場合もあるだろうし、相手方から指摘されて、「あ、そうか。間違って請求しちゃった!」なんてこともあり得ます。もし相手方も知らずに金銭を支払ってしまったとき、不当利得返還請求ができます。
実務上よくあるのは、貸金の返済請求。はっきり言って本当に貸しているのかどうかは良くわからない。借用書もない。この場合は、明らかに嘘でない限り書面は作成します。
また浮気相手に対する慰謝料請求。浮気したかどうかわからない。どこまでの行為が行われたのかもわからない。不貞行為があったとされる時点で、夫婦の関係がどのような状態だったのかもわからない。この場合も、明らかに嘘でない限り書面は作成します。
問題となってくるのは、損害賠償請求ができるかどうかが疑わしい場合。
例えば、夫婦の一方が他の異性と食事をしたりカラオケに行ったりした程度の場合。
不当解雇だと言っているがどうも本人の労働状況に著しい問題があるような場合。
損害賠償だ慰謝料だと息巻いているが、どうも単なる被害妄想としか思えない場合。
どうも相手の人間を落としいれようと事実無根の請求をしているような場合(この場合にはその旨ハッキリと言う依頼者もいます。)。
このような場合には業務の依頼をお断りすることもあります。あるいは書面は作成するけれども依頼者本人の名前で出してもらうとか。
内容証明郵便は、よくわかっている人であれば別に驚きもしませんが、全然知らない人の中には、それだけでビビッてしまったり、慌てふためいて問合せをしてくる人もいます。何かこれだけで法的強制力のある公文書だと考えている人は結構多いと思います。こんなものを闇雲に依頼者の言うがままに送りつけるのもあまり好ましい事ではないと思います。
基本的に当事務所のスタンスとして、明らかな嘘に基づく内容証明は作成しません。お断りしています。疑わしい場合にはその旨説明した上で、本人名で作成します。それ以外は原則私の職名・職印入りで作成・発送しています。もっとも怪しいケースはそうそうあるものではありません。本当にたま~にある程度です。
でもたまたまそんな案件が来たときに、いろいろと考えさせられてしまうんですよ・・・
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小杉行政書士事務所
行政書士 小 杉 幹
埼玉県狭山市青柳1549-8
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