「子牛もいた。何のために生まれてきたんだろう」処分用薬剤を140頭もの牛に注射し続けた獣医師

2010-05-23 | いのち 環境

中日春秋
2010年5月23日
 牛は、人に身近な生き物だ。けれど、考えてみれば、日常目にするのは、スーパーの食料品売り場に並ぶパック入りのギューばかり。モーと鳴き、草などにれかむウシはこのごろ、ほとんど見ていない▼<うし/しんでくれた ぼくのために/そいではんばーぐになった/ありがとう うし>。先に小社が開いた生物多様性に関するシンポジウムで、谷川俊太郎さんが朗読した詩『しんでくれた』の一節だ。生き物の死が食べ物。そのことを私たちは、時折、忘れる▼宮崎県で発生した口蹄(こうてい)疫の感染が止まらない。避難させていた主力種牛の、そのまたエースまでが感染の疑いに。昨日は発生農家から十キロ圏内の牛、豚全頭を対象にワクチン接種も始まった▼感染しにくくなるが、これは牛や豚の命を救うためではない。もともと感染しても成長していれば致死率は低いという。結局、すべて殺処分される見込みで、その時間稼ぎのための接種なのだから切ない▼ある一日、処分用薬剤を百四十頭もの牛に注射し続けた獣医師の思いを西日本新聞が伝えていた。「子牛もいた。何のために生まれてきたんだろうと考えながら…」▼健康な牛まで殺処分するのは、畜産業全体や私たちの食生活を守るためだ。ギューにも<はんばーぐ>にもならない。でも、彼らが人のために生まれ人のために<しんでくれる>ことに違いはない。
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種牛49頭延命、副大臣「認めぬ」 宮崎知事願い届かず
 asahi.com2010年5月23日20時28分
 宮崎県での家畜伝染病、口蹄疫(こうていえき)問題で、東国原英夫知事が種牛49頭を特例で殺処分しないよう求める意向を示したことについて、山田正彦農林水産副大臣は23日、同県内で記者団に対し「(特例は)認められない」と述べた。殺処分されると、宮崎の種牛は特に優秀な「エース級」5頭を残すのみとなる。
 宮崎県では県家畜改良事業団(高鍋町)に55頭の種牛がいたが、16日、同事業団の牛に感染の疑いが発覚。13~14日に避難していたエース級6頭を除く49頭は、家畜伝染病予防法に基づけば殺処分となるが、東国原知事は22日、「このままでは宮崎から種牛がいなくなる」として、特例での経過観察措置を国に求める意向を示していた。山田副大臣はこの49頭について「殺処分が終わっていないこと自体がおかしい」と指摘した。
 避難した6頭のうち1頭は感染の疑いで22日に殺処分が終わり、残る5頭は特例で経過観察となっている。
 23日は前日に続き、発生農場から半径10キロの圏内の家畜へのワクチン接種が行われ、対象の約14万6千頭のうち約7万頭で作業を終えた。
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「49頭まだ生かしている」49頭によだれなど口蹄疫特有の症状は出ていないという


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