死刑執行 牧野正・西本正二郎・川村幸也・佐藤(旧姓・野村)哲也死刑囚 2009/1/29 森英介法相命令

2009-01-29 | 死刑/重刑/生命犯

<死刑執行>仮出所中に殺人、運転手刺殺など4死刑囚
(毎日新聞 - 01月29日 12:21)
 法務省は29日、4人の死刑を執行したと発表した。執行されたのは牧野正(58)=福岡拘置所収容▽西本正二郎(32)=東京拘置所収容▽川村幸也(44)=名古屋拘置所収容▽佐藤(旧姓・野村)哲也(39)=同=の4死刑囚。死刑執行は昨年10月28日以来3カ月ぶりで今年初めて。森英介法相の執行命令は昨年9月の就任から4カ月で2回目。死刑確定者数は今月4日に1人が病死して07年5月以来1年8カ月ぶりに100人を切り、今回の執行で95人になった。
 確定判決などによると、牧野死刑囚は別の殺人事件で無期懲役の判決を受けて仮出所中の90年3月、北九州市の会社員宅に押し入り長女(当時25歳)を刺殺。帰宅した会社員や目撃した女性にもけがをさせた。福岡地裁小倉支部で死刑判決を受け、自ら控訴を取り下げ確定した。
 西本死刑囚は04年1月、愛知県春日井市でタクシー運転手(同59歳)を刺殺し売上金を強奪。同4~9月には長野県の当時69~77歳の男女3人を殺害し現金を奪った。控訴審で福島県内での女性殺害を新たに供述したが、うそを認め控訴を取り下げた。
 川村、佐藤両死刑囚は00年4月、約束手形金の支払いに応じなかった名古屋市の喫茶店経営の男性の妻(同64歳)と妻の妹(同59歳)を拉致。2人を愛知県瀬戸市の山林でドラム缶に押し込み焼死させた。
 死刑確定から執行までの期間は、牧野死刑囚が15年2カ月、西本死刑囚が2年、川村、佐藤両死刑囚が2年6カ月。07年12月の鳩山邦夫元法相下での死刑執行以降、執行はほぼ2カ月に1回のペースが維持されていたが、今回は国会審議や年末年始を挟んだことなどが影響したとみられる。【石川淳一】

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抗 議 声 明
  本日(1月29日)、牧野正さん(58歳:福岡拘置所)、佐藤(旧姓野村)哲也さん(39歳:名古屋拘置所)、川村幸也さん(44歳:名古屋拘置所)、西本正二郎さん(32歳:東京拘置所)に死刑が執行されたことに対し、強く抗議する。
 森英介法務大臣は、昨年10月28日に死刑を執行を行い、更に3ヶ月後の今日、4名の死刑執行を行った。これは、死刑の執行にあたっては、記録を精査し慎重に慎重を期すという人命に配慮した従来の慣行を完全に踏みにじるものであって、暴挙というほかない。
 2006年12月25日の長勢元法務大臣の死刑執行に始まり、鳩山、保岡の各法務大臣へと続く連続的な大量の死刑の執行は、わずか2年1ヶ月の間に、10回、合計32名にのぼり、過去30年間類例がなく、死刑廃止に向かう国際的なすう勢に完全に逆行するものであって、強く非難されなければならない。
  国家・個人を問わず、人の命を尊重し、如何なる理由があろうとも人の命を奪ってはならないことは、人類共通の倫理であり、民主主義の原理・原則である。そして、それ故に、すでに世界の3分の2以上の国と地域が死刑を廃止しているし、国連は一昨年と昨年12月の2回にわたりすべての死刑存置国に対して死刑執行の停止を求めたのであり、これに応えて死刑存置国は死刑の執行を減少させてきたのである。しかし、唯一日本だけが、これを意図的に真っ向から踏みにじり、本日4名もの死刑を執行した。
 昨年10月ジュネーブで開かれた国際人権(自由権)規約委員会において、日本の死刑制度について10年ぶりに審査が行われ、委員から死刑廃止を求める厳しい批判がなされた。日本政府は、この批判に謙虚に耳を傾け、死刑の廃止に向けてスタートを切るべきであったにもかかわらず、これにあえて逆らい、死刑の執行を強行したことは、国際的にも強く非難されてしかるべきである。
 日本では、凶悪犯罪は減少の一途をたどっている。死刑判決と死刑の執行の激増を正当化する理由はどこにも存在しない。
 牧野正さんは、無期懲役の判決を受けた事件の控訴取り下げ無効の裁判を起こし、係争中だった。死刑判決を受けた事件に関しても、本人が控訴を取り下げており、三審まで裁判を受ける権利を保障されておらず、死刑の量刑が正しかったか否か大いに疑問がある。
 佐藤哲也さんと川村幸也さんは、共犯4人の事件で、2名は無期懲役の判決を受けており、首謀者は別にいると争っていた事件である。佐藤さんは、昨年再審請求をしていたが、自ら取り下げている。川村さんは、再審請求をして、棄却された状態で、さらなる再審の準備をしているところだった。
 西本正二郎さんは、自ら控訴を取り下げて確定した事件で、三審まで裁判を受ける権利を保障されておらず、死刑の量刑が正しかったか否か大いに疑問がある。
 同時に、法的に何らの義務がないにもかかわらず、死刑の執行を強いられている拘置所職員の苦痛にも心を致すべきである。
 今回の死刑執行の対象者は、比較的若い年齢だった。いずれも、昨年私たちが行ったアンケート調査に対して、裁判のあり方に不服を持ちながらも、「命をもって罪を償いたい」と回答してきている。また、今回執行された人たちのように、事件を反省し、死刑を受け入れている人たちに対して、あらためて「命を奪う」死刑という刑罰を適用する意味があるのか、もう一度考える時期に来ているのではないだろうか。法務省は、真に反省した人を矯正・更生させることにもっと力を注ぐべきなのではないだろうか。罪を犯した人を国が殺すことで事件を解決したものとみなすという今のあり方は、あまりに安直すぎる解決方法であることを、法務省はもっと真摯に受け止めるべきである。
 私たちは、死刑の廃止を願う多くの人たちとともに、また、森英介法務大臣に処刑された牧野さん、佐藤さん、川村さん、西本さんに代わり、そして、この間連続的に死刑を執行させられている拘置所の職員に代わって、森英介法務大臣に対し、強く抗議する。

2009年1月29日

死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90

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会長声明集 Subject:2009-01-29
死刑執行に関する会長声明

本日、東京拘置所において1名、名古屋拘置所において2名及び福岡拘置所において1名、計4名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
これは、森英介法務大臣が就任してから2度目、昨年10月28日の執行からわずか3か月という短期間での死刑執行である。
我が国の死刑制度は、国際社会においてかつてないほどの注目を集めている。世界では、死刑制度の廃止が潮流となっており、我が国をはじめとする死刑存置国に対し、死刑の執行を停止し、あるいは死刑適用の制限を求める動きがますます強まっている。昨年12月8日には、国連総会本会議において、死刑執行の停止を求める決議が、一昨年を上回る圧倒的多数の賛成で採択されたことは、こうした国際情勢を端的に示すものである。
我が国では近年、死刑判決数及び死刑執行数がともに顕著な増加を見せている。こうした状況に対しては、我が国が批准する人権条約の実施機関のみならず、国連人権理事会による普遍的定期的審査においても深刻な懸念が示され、死刑に直面する者に対する権利保障を整備するとともに、死刑廃止を視野に入れ、死刑の執行を停止することが勧告されてきた。
特に、昨年10月には、国際人権(自由権)規約委員会により、世論を理由に避けるのではなく死刑廃止を前向きに検討すること、精神障がいが疑われる者等への死刑執行に対して人道的なアプローチをとり、執行日時を事前に告知すること、必要的上訴制度を導入し、再審請求等による執行停止効を確実にすること等、我が国の死刑制度を抜本的に見直すことを求める多くの勧告がなされた。
ところが、今回執行された4名のうち2名は自ら控訴を取り下げ、かつ、うち1名については公判段階から一貫して精神障がいの存在が争われており、上記勧告との関係でも極めて重大な疑義が生じる。
国連機関による度重なる勧告はいずれも、死刑が最も基本的な人権である生命に対する権利を否定する究極の刑罰であり、死刑制度は人権にかかわる重大な問題であるという認識のもとになされている。人権問題は、世論や多数決により決せられるべきものではなく、まして、世論に依拠して死刑適用の拡大や死刑執行の促進に走ることは許されない。裁判員制度の実施を控え、死刑制度とその運用に対する社会の関心が高まっている今こそ、死刑制度が抱える問題点を広く社会が共有し、改革の方向性を探るべき機会である。
当連合会は、改めて政府に対し、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、重ねて強く要請するものである。

2009年(平成21年)1月29日

日本弁護士連合会
会長 宮 誠


3 コメント

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抗議声明、会長声明を支持します (死刑制度に反対する一市民)
2009-01-30 00:38:41
フォーラム90の抗議声明、日本弁護士連合会会長の声明はズバリ正論であり、断固支持します。
また、個人的に、死刑制度反対の立場から昨日行われた死刑の執行に抗議の意を表します。
死刑は国が人を殺すことであり、最も大きな人権侵害です。
昨年、フォーラム90が多田揺子反権力人権賞を受賞したことをみても、死刑制度がいかに人権を侵害する行為であるかということをあからさまに示しています。
世界が死刑廃止に向っているこの時代に、日本は死刑判決の乱発、そして大量執行といった狂気に走っております。
日本が1日も早く正気を取り戻し、死刑を停止し、そして廃止へと向うことを心から期待したいものです。

死刑執行によって命を奪われた4名の冥福を祈ります。
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コメント欄を読んだ感想 (通りすがりだけど)
2009-02-01 15:28:21
>死刑執行によって命を奪われた4名の冥福を祈ります。

書き込んであるコメントを読んでみて素直な感想だけど、
正気の沙汰かよ、と思う。
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冥福 (死刑制度に反対する一市民)
2009-02-02 21:12:35
冥福というのは、人が亡くなった時には、誰にだって祈ってあげるべきものです。
それは常識だと思います。
この人はこうだったから冥福を祈る。
あの人はああだったから冥福は祈らない。
などといった選別、排除が行われるようでしたら、それこそ正気の沙汰ではありません。
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