金川被告、控訴取り下げへ…土浦連続殺傷
茨城県土浦市内で昨年3月に9人が殺傷された事件で殺人罪などに問われ、水戸地裁で18日、死刑判決を受けた無職金川真大(かながわまさひろ)被告(26)(土浦市中村東)は同日午後、水戸拘置支所で本紙の接見取材に応じ、近く控訴を取り下げる意向を改めて語った。
弁護人は、判決後に即日控訴している。
金川被告は笑みを浮かべ、「完全勝利といったところでしょうか。(死刑願望が)変わることはない」と話した。判決は、金川被告を「浅はかな信念に強く執着」と指弾したが、「常識に縛られている側からみてそう見えても仕方ない」と述べ、「後は(死刑)執行までの時間をいかに短くするか。(国が執行に)動かなければ、裁判に訴える」とした。
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土浦8人殺傷事件 判決文要旨(産経ニュース2009.12.18)
【主文】被告人を死刑に処する。
【第1の犯行に至るまでの経緯】
金川被告は公立の小、中学校を卒業後、私立高校に進学したが、高校時代に友人に対し「死にたい」「生きていてもしようがない」などともらすなど、人生に生き甲斐を感じないので自殺したいとの思いを強く抱くようになった。高校は卒業したものの、進学も就職もせず、自宅に引きこもりテレビゲームにふける生活を送るようになった。
人から称賛される仕事をしたいと考えたが、自分にそのような能力がないことは自覚していた。テレビゲームの主人公が才能にあふれていることにあこがれてファンタジーの世界に魅力を感じたが、実際の自分には才能がないと感じており、実際にはファンタジーの世界が存在しないことも十分理解していた。
金川被告は平成20年1月ごろ、つまらない毎日と決別するために具体的に自殺を考えたが、痛い思いをするだけで確実に死ぬことができるかどうか分からないなどとして自殺をあきらめた。それほど苦しまずに確実に死ぬ手段として死刑になろうと考え、そのためにできるだけ多くの人を殺害することにした。
金川被告は20年1月上旬ごろから、約2カ月かけて犯罪計画を練った。態度が気に入らなかった同居の妹、自分が通っていた小、中学校や高校の生徒と教師、ネットオークションでトラブルとなった相手を殺害対象として想定し、これらの者を殺害した後は、資金がある限り各地を転々として、行く先々で人を殺すというものであった。
この計画に沿って、凶器とする文化包丁、サバイバルナイフを購入して、その切れ味を確かめたり、逃走や潜伏生活のために変装用のスーツなどを買いそろえたりし、逃走や潜伏の資金として預金残高のほぼ全額である40万円を引き出して、犯行の準備を整え、同年3月18日に犯行を決行することにした。
ところが、金川被告が同日の朝起床すると、同居の妹はすでに外出していたので、犯行の結構を1日延期したが、翌19日の朝も妹はすでに外出していた。そこで、凶器の包丁や変装用具を入れたリュックサックを背負い、サバイバルナイフも持って母校の小学校に向かった。しかし、小学校に着いてみると、その日は終業式で校門付近には数人の大人がいたことから、小学校で犯行に及ぶとすぐに捕まってしまうと考え、学校での殺害計画を変更することにした。
金川被告は、せっかく計画を実行し始めたので何とかしてその日のうちに人を殺したい、もともと殺す相手は誰でも良かったのだから簡単に捕まらないように気をつけながらとりあえず人を殺そうなどと考え、民家を訪れて自転車がパンクしたから空気入れを貸してほしいなどと言って民家を訪ねたが、留守だったためその近所の三浦芳一さん方のインターホンを押した。
応対した三浦さんに対し、「自転車のタイヤがパンクした。空気入れがあったら貸してくれませんか」とうそをついて空気入れを借り、自転車に空気を入れるふりをして返したが、同人がこれを物置に戻すために金川被告に背を向けたところ、第1の犯行に及んだ。
【第2の犯行に至るまでの経緯】
金川被告は第1の犯行後、三浦さん方前の路上に自転車を残したまま逃走したが、着衣に返り血が付いたことに気づき、自宅に戻って着替えをした。そして、電車で秋葉原に向かい、理髪店で丸刈りにして髪形を変え、電気店のトイレでスーツに着替えた後、ホテルに偽名で宿泊した。
同月21日までホテルに連泊し、ゲームをするなどして過ごしたが、同日夕方になると次の犯行を考え始め、土地勘のあるJR常磐線ひたち野うしく駅から荒川沖駅まで歩いて通行人を狙って殺害するという計画を立てた。そして同月22日、実際にひたち野うしく駅から荒川沖駅まで歩いたが、殺害できそうな通行人がいなかったため、計画を断念した。
金川被告は、また秋葉原に戻って別のホテルに宿泊したが、申し込みの際、うっかり本名を書き始めてしまった。すでに指名手配されていたことから、通報されて逮捕されてしまうと1人しか殺していないので、死刑にならないと焦りを募らせた。そして、荒川沖駅であれば乗降客が多いので、一度に多数の人を殺害できると考えて、両手に文化包丁とサバイバルナイフを持ち、駅の通路を走りながら通行人の首を次々と刺し、近くの玩具店でさらに客らを殺害する計画を立てた。
同月23日午前9時40分ごろ、サバイバルナイフと文化包丁を隠し持ってホテルを出て、電車に乗って荒川沖駅に向かった。そして、荒川沖駅に到着すると改札口を出て、自由通路の西側階段付近で、人目につかないように滑り止めのゴム手袋を両手にはめ、右手にサバイバルナイフ、左手に文化包丁を持ち、自由通路などを走りながら次々と通行人を襲い、第2の犯行に及んだ。
【量刑の理由】
本件はわが国の犯罪史上でもまれな凶悪重大事案である。被害者らは、第1の犯行においては、自転車のタイヤがパンクしたといって訪ねてきた金川被告を応対しただけであるし、第2の犯行においては、たまたまJR荒川沖駅付近の通路にいたにすぎない。日常生活を送っている中で、突如としてその生命を奪われ、あるいは生命を奪われる危険にさらされたのである。まことに理不尽であり、社会に大きな衝撃を与えたのは当然である。このような無差別連続殺人は、殺人事件の中でも最も重く処罰されるべき1類型といわなければならない。
金川被告は、本件各犯行の約2カ月前から無差別に大勢の人を殺すことを計画し、凶器を購入するなどして準備している。本件各犯行は計画的なものである。
第1事件で殺害された三浦芳一さんは、退職後、平穏な生活を送っており、その優しい人柄は被告人に空気入れを貸そうとしたことにも表れている。その優しさを踏みにじられ、必死に助けを求めながら絶命したのであって、その際の恐怖、苦痛はいかばかりであったかと察せられる。
第2事件で殺害された山上高広さんは、仕事に打ち込んで充実した毎日を送っていた。そのまじめな仕事ぶりは高く評価されており、多くの友人に慕われる性格であった。それにもかかわらず、27歳の若さで突然その生命・生来を奪われた無念さは計り知れない。
遺族がそろって被告人の極刑を望むなど、その処罰感情が峻烈を極めているのは当然である。
第2事件で負傷した被害者らは、いずれも頸部という体の枢要部を狙われ、深い傷を負ったのであって、その肉体的苦痛や、突然襲われた恐怖感には大きなものがある。被害者らが被告人の厳重処罰を求めているのは当然である。自らの死刑願望を達成するため他人の生命を奪うというその発想は身勝手極まりないものである。
金川被告の刑事責任は誠に重大であって、罪刑の均衡、同種事犯の抑止の観点からすると、死刑の選択はやむを得ないものといわざるを得ない。金川被告の生育歴、家庭環境および本件犯行に至るまでの経緯をみても、同情に値するようなものは見いだせない。
本件各犯行は、単純に死刑になりたいがために行ったものであって、その点に大きな特殊性がある。そして、遺族感情、被害者感情は非常に厳しいものの、金川被告の希望どおりの判決となることに複雑な心情もあるようである。しかしながら、死刑になるために他人の生命を奪うという動機は身勝手極まりなく、強い非難に値するのである。本件の動機は刑を加重する要因であって、刑を軽減する事情となりうるものではない。
弁護人は、金川被告は若年で犯罪歴もなく、犯罪傾向・反社会的傾向は顕著ではない上、死刑願望の背後にある思想は根深いものではなく、死刑願望が消滅する可能性があるなどと主張している。しかし、被害者に対する謝罪の言葉はないばかりか、拘留中に問題行動を起こしたり、法廷で机を倒して制裁裁判を受けたりするなど、反省の態度は全くない。父親が本を差し入れているが、そもそも文字面しか読めない金川被告に、読書により内省を促しても効果はないように感じられる。
金川被告の父親が一部の被害者に対して総額1千万円を支払っていること、金川被告に犯罪歴がないことなどの事情もあるが、いずれも死刑を回避すべき事情となるものではない。刑事責任は誠に重大であり、死刑を回避すべき事情も見いだせないのであるから、罪刑の均衡、同種事犯の抑止の観点から死刑を選択することはやむを得ないものといわなければならない。
◆ 金川真大死刑囚「解放されてもまた殺人する 特に謝罪の思いない」/小林薫死刑囚 再審準備中の刑執行 2013-02-21
小林薫死刑囚ら3人の死刑執行 現安倍政権では初
zakzak2013.02.21
法務省は21日、2004年に奈良市で小学1年の女児を誘拐し、殺害したとして死刑判決が確定した小林薫死刑囚(44)=大阪拘置所=ら3人の刑を執行したと発表した。死刑執行は昨年9月以来で、現安倍政権下では初めて。未執行の死刑確定囚は134人となった。
小林死刑囚は、事件発生から約8年、確定から約6年での執行だった。
他に執行されたのは、茨城県土浦市で08年に起きた9人殺傷事件の金川真大(まさひろ)死刑囚(29)=東京拘置所、02年に名古屋市内で起きたスナック女性経営者強盗殺人事件の武藤(現姓加納)恵喜(けいき)死刑囚(62)=名古屋拘置所。
確定判決などによると、小林死刑囚は04年11月17日、奈良市内の路上で帰宅途中の市立小1年の女児=当時(7)=に声をかけて車に乗せ、わいせつ目的で誘拐。自宅マンション浴室で殺害後、奈良県内の道路脇側溝に放置した。
女児の母親の携帯電話に遺体画像と「次は妹だ」とのメッセージを送信して両親を脅迫するなどしたほか、裁判で「悪いことをしたとは思わない」と証言し、社会に大きな衝撃を与えた。
06年の1審奈良地裁は「被害者が1人であることは死刑を回避する理由にはならない。真剣な反省をしていない上に更生の意欲もなく、人格の矯正可能性は極めて低い」として死刑を選択。弁護側は控訴したが、本人が取り下げ死刑が確定した。その後、小林死刑囚本人が再審請求を行ったが、最高裁は09年12月に再審を認めない決定をした。
金川死刑囚は08年3月、土浦市の民家で男性を刺殺し、4日後にJR荒川沖駅周辺で1人を殺害、7人に重軽傷を負わせた。09年に本人が控訴を取り下げ、死刑が確定した。
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【3人死刑執行】笑顔で「解放されてもまた殺人する」「特に謝罪の思いない」 取材に応じた金川死刑囚、最後まで反省なし
産経ニュース2013.2.21 14:14
「死刑になりたい。生きるのがいやになった」。死刑が執行された金川(かながわ)真大(まさひろ)死刑囚(29)は1審判決前の平成21年6月、水戸拘置支所(水戸市)で産経新聞の取材に応じ、早く死刑に処されたいという心中を吐露。「自殺はどんな方法であれ、自分の体に痛みを加える。そんな勇気がなかったので殺人をした」と話し、最後まで反省の言葉はなかった。
接見室での取材に終始満面の笑みで応じた金川死刑囚。遺族や被害者に謝罪はないのか問うと、「痛かったであろうことは常識で考えたら分かるが、特に謝罪や思いはない」と話し、さらに笑顔を見せた。
拘置所内では「日々、殺すことしか考えていない」と断言。「殺すこととは、もし外に出たら、どうやってまた殺しをするかということ。それは死刑になるため。『今解放されたら、また殺人をするか』と問われたら、答えは『します』しかない」と言い切った。
死刑になりたいと考えるようになった理由は「親が悪いとか教育が悪いとかではない。こう育ったのも運命だ」とした。
接見終了後には「間にアクリル板があるから記者さんと握手もできない」とつぶやいた金川死刑囚。「こうして拘置所でメディアの方と会うのは暇つぶし。反省したというわけではない」と言い残し、接見室を後にした。
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「生」に執着、再審準備中の刑執行…小林死刑囚
2013年2月21日(木)14時31分配信 読売新聞
奈良県の女児誘拐・殺人など社会を震撼させた事件で、3人の死刑囚の刑が21日、執行された。
政権交代後、初となる執行について、谷垣法相は記者会見で「いずれも極めて残忍で、遺族にとって無念この上ない事件。十分な検討を踏まえたものだ」と語った。ただ、早期の執行を望んでいた死刑囚もおり、遺族は「もう少し反省の機会を与えてほしかった」とやりきれない思いを口にした。
「生きるのは面白くない」「早く死刑判決を受けて死にたい」。奈良地裁の公判の被告人質問で、投げやりな態度を見せた小林薫死刑囚(44)。しかし、2006年9月の同地裁の死刑判決に対し、自ら控訴を取り下げて判決を確定させた後は「生」への執着を見せた。
07年6月に新たに弁護人を選任し、「控訴取り下げは無効」と控訴審の期日指定を求めて大阪高裁に申し立てた。08年12月には再審請求もしたが、いずれも認められなかった。
控訴審の期日指定を求める申し立てを行った際の弁護人の一人、石塚伸一・龍谷大法科大学院教授は「小林死刑囚は、1審の裁判で『わざと殺したわけではない』という主張をきちんとできないままだったことに不満を持っていた。新たな再審請求の準備をしていた最中だったので、主張ができないままの執行は残念で仕方がない」と話した。
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◆ 土浦8人殺傷事件 被告人質問1 (第3回公判)
◆ 土浦8人殺傷事件 被告人質問2 (第3回公判)
◆ 土浦8人殺傷事件 被告人質問3 (第3回公判)
◆ 土浦8人殺傷事件公判 金川被告の父親に対する証人尋問 1
◆ 土浦8人殺傷事件公判 金川被告の父親に対する証人尋問 2
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◆ 土浦連続殺傷事件 金川真大死刑囚を分析 東海学院大・長谷川教授 2010-01-07
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◆ 土浦8人殺傷事件 金川真大被告の判決公判 死刑言い渡し 2009-12-18
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◆ 谷垣法相の命令により 死刑執行 小林薫(奈良女児誘拐殺害)・金川真大(荒川沖駅)・加納恵喜の3死刑囚 2013-02-21
〈来栖の独白 2013 2/21 Thu. 〉
3月末(今年度末)の執行も止むを得ないか、と谷垣法相の就任以来の表情から予想はしていた。が、就任2カ月に満たない時点での死刑執行である。早い。迷いの一つもない、法相自らの強固な意志を感じさせる。内閣の支持率は高い。支持浮揚の企図ではない。
ところで「執行」に至る手順であるが、大臣の裁可を受けた「死刑執行命令書」は、刑事局付の検事の手で直接拘置所所長の手許に運ばれる。執行は命令書の日付から5日以内というのが法の制約である。今回の執行は本日21日(木曜日)、法務大臣の裁可は18日(月曜日)だったか。
「死刑執行企案書」は膨大なチェック作業ののち作成、完成され、その後、法務省刑事局・矯正局(※)・保護局(※)各内部でのチェックを経てのち、刑事局長の手によって法務大臣官房にまわされる。法務大臣官房では秘書課長、官房長、法務事務次官のルートで「企案書」は上げられる。そして、それぞれの決裁を受けると秘書課長が大臣室へ持参、ここで初めて法務大臣の机の上に置かれることになる。ここまでの期間がほぼ半年。「死刑執行は判決確定の日から6カ月以内」という法制度をにらんでの作業ということで、この推移を考えるとき、谷垣法相の今回の執行命令が如何に慌ただしかったか、その異常さに驚かざるを得ない。
今回の執行は、恐らくは事務方からの要請というよりも、大臣のほうからの意向、指示によるものではないだろうか。事務方としては恐らく通常通り、早くとも大臣就任3ヵ月を経たあたりで大臣のデスクへ上げるべく企案書を整える心づもりではなかったか、と私は思う。安倍内閣の組閣は昨年12月26日であった。2月18日の死刑執行命令であるなら、如何にも慌ただしい。大臣就任から2カ月に満たない時点でのサインである。これほどに急ぎ、執行した。
(※)矯正局は拘置所からの報告を逐一受け、確定者一人ひとりの健康状態・精神状態を、また保護局は恩赦事務を掌握している部署である。
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