今市事件裁判・勝又拓哉被告 第1週(2016/2/29~3/4)終了 2週目は自白の任意性、本格審理へ

2016-03-05 | 死刑/重刑/生命犯

今市事件裁判、1週目終了 自白の任意性、本格審理へ
 下野新聞 3月6日 朝刊
 2005年、吉田有希(よしだゆき)ちゃん=当時(7)=が殺害された今市事件で、殺人罪に問われた鹿沼市西沢町、無職勝又拓哉(かつまたたくや)被告(33)の宇都宮地裁(松原里美(まつばらさとみ)裁判長)の裁判員裁判は、1週目(2月29~4日)が終了した。
 事件当時の被告の行動やスタンガン所持、母親への手紙など事実関係の評価をめぐり、検察側と弁護側の主張がぶつかった。2週目は最大の争点である自白の任意性の審理が本格化する。取り調べ映像の再生による立証に自信を見せる検察側。弁護側は取り調べの違法性に加え、遺体解剖医の証言などから自白の矛盾を突いていく。
 8~11日の2週目は、検察官や警察官に被告が行っていた自白供述の任意性の審理に入る。
 8日は有希ちゃんの遺体の解剖医が証人として出廷。弁護側は証言から、自白内容と、遺体発見現場の状況や死亡推定時刻のずれを主張するとみられる。
 殺人容疑での逮捕前に取り調べていた検察官の証人尋問や録音・録画の再生も始まる。検察側は「映像を見てもらえれば分かる」と自信をのぞかせている。

 ◎上記事は[下野新聞]からの転載・引用です
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2016.3.5 16:00更新
【栃木女児殺害事件公判・第1週】勝又被告は「殺してません」と肩を震わせた 検察はNシステム記録など証拠を次々に提出し…(2月29日~3月4日)
 平成17年に起きた栃木県今市市(現日光市)の女児殺害事件で殺人罪に問われた栃木県鹿沼市、無職、勝又拓哉被告(33)の裁判員裁判が2月29日、宇都宮地裁で始まった。初公判で、勝又被告は「殺していません」と無罪を主張。有力な物証はなく、捜査段階の自白の信用性と任意性を争点に、検察側と弁護側の主張が真っ向から対立する裁判は、3月22日の結審まで15日間開かれる長丁場だ。判決は31日に言い渡される。

●2月29日
 被告、罪状認否後に涙。記者をにらみつける視線も
 42席の一般傍聴席を求めて913人が長い列をつくった初公判。午前10時に開廷し、検察官の起訴状朗読後、松原里美裁判長に「意味は分かりますか」と問われ、「分かります」と勝又被告。さらに「違っている内容はありますか」「殺していません」。はっきりとした口調で答えた。遺体遺棄現場に行ったのかと問われると、「行ってません」と淡々と応じた。
 事件は17年12月1日に発生。吉田有希ちゃん=当時(7)=が下校途中に行方不明になり翌2日、茨城県常陸大宮市の山林で遺体が見つかった。起訴状によると、勝又被告は2日午前4時ごろ、遺体発見現場付近で有希ちゃんの胸をナイフで多数回刺し、失血死させたとしている。
 勝又被告の罪状認否に続き、弁護人は「被告は無実。連れ去り、わいせつ行為、殺害も死体遺棄もやっていない。事件とは全く無関係」と述べた。弁護人が席に着くと、涙を流し始めた勝又被告。時折、肩を震わせる場面もあった。
 弁護人の一木明弁護士らは公判後、「今まで真実を述べたくても述べられなかった気持ちがあの場で抑えきれない感情として出たのではないかと思っている」と話した。
 ただ、その後は落ち着いた表情に戻ったり、傍聴席に目をやったりして、弁護人による冒頭陳述の際は、弁護人をまっすぐ見つめていた。午前中、いったん休廷になった際には傍聴席を見渡し、報道関係者の席に鋭い視線を送った。
 検察、弁護側双方の冒頭陳述に続いて、午前中から証拠調べが始まった。失踪地点や遺体遺棄現場の位置関係を示した地図や写真などが示された。勝又被告は表情を変えず、モニターをじっと見つめていた。
 検察官は、有希ちゃんが失踪した直後の午後3時ごろに若い男が運転する白いセダン車の目撃談なども説明した。
 午後の証拠調べでは、検察側が遺体の遺棄状況や遺体の傷の状況を説明する際、傍聴席用モニターの画面が消された。有希ちゃんの遺体の写真が被告人側のモニターに映し出されると、勝又被告は表情を曇らせるが、じっと画面を見る態度は変わらなかった。
 検察官は、遺体には12個の刺し傷があり、完全に心臓を貫いていた状況を説明。傷を負って5分以内に死亡していることなどを説明。凶器の説明など細かい説明に入ると、勝又被告がメモを取り、弁護士にメモの内容を見せる一幕もあった。
 その後、宇都宮市内のレンタルショップ元店長が証人として出廷した。検察側は、有希ちゃんを連れ去ることが可能だったことを立証するため証人申請。元店長は「(事件当日の)利用履歴が残っており、被告は当日、店に来ていたと思う」などと述べた。
 また、当時の県警捜査1課の警察官が出廷。遺体遺棄現場での車のライトを使った照射実験について証人尋問が行われ、裁判員からも「この検証実験が行われた26年までに、ほかに実験はあったか」と質問。警察官は「この実験が初めてと聞いている」と答えた。

●3月1日
 秘密扱いのNシステムの記録が法廷に
 現場を指揮した警察官が検察側証人として出廷、自動車ナンバー自動読み取り装置(Nシステム)の記録に関して証言した。通常、秘密扱いにされているNシステムの記録が公判で利用されるのは異例だ。証言した警察官は、Nシステムについて「機械に照会すれば設置場所を通過した車のナンバーや日時、進行方向が分かる」とした上で、「秘匿性が高く、設置場所の情報が公になれば犯罪者に悪用されると聞いている」と説明した。
 検察側は、Nシステムの照会結果を示した資料を提示し、有希ちゃんの遺体が発見された17年12月2日、勝又被告の車が宇都宮市内の3カ所のNシステムに記録されていたと指摘した。
 宇都宮市鐺山町(こてやままち)の国道123号では、午前2時20分に東へ向かい、同6時12分には西に向かって走行していたとし、勝又被告が、自宅のある鹿沼市方面から遺体遺棄現場の茨城県常陸大宮市方面を往復していたことを示す客観的事実の一つとした。
 警察官は「(逮捕前の)平成23年6月に(勝又被告の記録を)見た。以前の捜査幹部から気になる捜査対象者の1人として名前を聞いた。照会したのは私でないが、当時の捜査幹部の決裁を得て照会したものと思う。被告の車が、平成17年12月2日の未明から早朝や6日に現場方向に向かう記録があった」と証言。検察官に「記録を見てどう思ったのか」と聞かれると、「遺体遺棄現場に行って帰ってきたのかも、と。6日については、犯人は現場に戻るというが、証拠隠滅のために向かったのではと思った。被告が(宇都宮市)鐺山町を茨城方面に行ったのは12月2日と6日だけ。ほとんどは鹿沼市内を動いているという印象を持っていた」と述べた。
 これに対し、弁護側はNシステムの機能や設置場所について警察官に質問。「Nシステムで記録された地点を車が通過したことは分かっても、その車がどこから来てどこに向かったかは分かりませんよね」と問うと、警察官は「分かりません」と答えた。
 この日、法廷で警察官に尋問したのは金子達也次席検事。閉廷後、記者団に対し、Nシステムの記録の証拠請求は「珍しいと思う」と述べた上で、「客観的な事実を立証するため」と説明した。

●3月2日
 母親出廷に涙ため…。「謝罪の手紙」めぐり論戦
 この日の公判では、女児の遺体に付着していた動物の毛を鑑定した麻布大獣医学部の村上賢教授が検察側の証人として出廷。村上教授は「遺体に付着していた毛は猫の毛であり、勝又被告の飼っていた猫と同一のグループのもの」と証言した。猫を71グループに分けた場合の同一グループで、570匹調べて0・5%程度しか現れない珍しい型だったとした。
 だが、弁護側は、被告が飼っていた猫と矛盾しないとはいえても、同一とは証明できないと反論。「猫は生涯で数十匹の子を産む。同じDNA型を持つ母猫の子孫はたくさんいる」と主張した。
 夕方には、勝又被告の母親が証人として出廷した。この日、憮然(ぶぜん)とした表情を変えなかった勝又被告は母親の姿を確認すると、わなわなと震え始め、涙をためた目は真っ赤になった。
 「人間性を知っており、(殺人は)やっていないと信じている」と母親。検察官は、事件を起こしたことを謝罪する勝又被告の母親宛ての手紙を提示し、「自分で引き起こした事件」との記述について、勝又被告が偽ブランド品をめぐる商標法違反事件を指すのか女児殺害事件を指すのか問いただした。
 平成26年、商標法違反事件では被告と母親が逮捕され、手紙は同年2月24日、母親に渡されたという。
 母親は「偽ブランド事件のことだ。女児殺害事件のことを指すと思ったことは一度もない」。弁護側は、被告が偽ブランド品を仕入れていたことから「海外に行き、独断で仕入れた経緯で発覚したことから『引き起こした』と記述したと思うか」と問われると、母親は「はい」と答えた。
 閉廷後、宇都宮地検の金子次席検事は「偽ブランドの話であれば、(商標法違反事件で)一緒に捕まった母親に、こんな手紙を書くのかなという違和感はある」と述べた。

●3月3日
 被告人質問が始まり、証言台に立つ被告「パニックになり調査サイン」と証言
 「『人を殺したことあるでしょ』と何度も聞かれてパニックになり、供述調書にサインした」。被告人質問がスタート。弁護人の質問に答え、勝又被告は「気が付いたら、後ろの看守が肩を揺さぶり、『調書にサインしろ』と言い、わけも分からずにサインした」と証言。有希ちゃんについては「全く知らない」とした。
 また、「殺人を母親に謝罪する内容」と検察側が主張する勾留中に書いた手紙については「看守に言われるがまま書いた」とし、看守に言われて書き直しするうちに「意味の通らない文章になった」と説明した。弁護人が手紙についての質問を続けると、涙声になり、腕で顔をぬぐっていた。
 一方、検察官は手紙を書き直させた看守は誰かと問いただした。勝又被告は「班長と呼ばれていた人。名前は分からない」とし、「まさか(手紙が)裁判で使われるとは思わなかった」とした。
 被告人質問主なやり取りは以下の通り。
 《まず、弁護人が質問した》
 --商標法違反では母親も逮捕された。勾留中、手紙のやり取りはできたか
 「できませんでした」
 --姉を通じて母親に手紙を渡したのはいつか
 「多分…2月24日だった」
 --逮捕されてから母親に書いた何通目の手紙か
 「最初の手紙です」
 --どんな内容か
 「ひたすら謝るっていうか…」
 --どういうことを謝る手紙?
 「最初は、今まで仕事をしていなくて、ごめんなさいっていうのと、殺人の調書にサインして、みんなに迷惑かけてごめんなさい(という内容)」
 --殺人をやったからサインしたのでは
 「違います」
 --やっていないのにサインしたんですね
 「あ、はい」
 --検事からどんな取り調べを受けて調書にサインしたのか
 「強要というか、ずっと、『君、人を殺したことあるでしょ』と圧迫されて、頭がパニックになって、気が付いたら後ろの看守の人が肩を揺さぶって『調書にサインしろ』と言われて、訳も分からずサインした」
 --「人を殺した」と何回も言われた?
 「はい」
 --手紙にある「引き起こした事件」という表現は殺人を認める調書にサインしたことというふうには読めないが、どうしてそういう表現に
 「最初に手紙を書いたときは5枚ぐらい書いたが、看守の人から『この内容じゃ駄目』と言われて、マジックペンで黒く塗りつぶされた手紙を渡され、書き直した」
 --検事に殺人を認める調書にサインするよう言われたことも書いたのか
 「はい」
 --最初の手紙はどういうふうに書いた
 「断片的だけど…、殺人の調書にサインしてしまって、みんなに迷惑かけてごめんなさいって感じで…」
 --他には?
 「(涙声で)調書は強要されたもので、僕は殺していません。けど、それ以上思い出せない」
 --そういうことを書いたら駄目と言われた?
 「駄目って言われて、黒く塗りつぶされて…(涙をぬぐう)」
 --ちょっと落ち着きますか(被告が呼吸を乱す)大丈夫?
 「はい、大丈夫」
 --どうなった
 「書き直そうとして、看守に戻された黒塗りの手紙を見て、訳が分かんないから、どうしようもないってキレたら、看守の人が『手伝ってあげるから書きなさい』と。それで、看守が言った文章そのまま書いた」
 --最初に書いた物、思い出せたか
 「思い出せません」
 --元の手紙はどうなった
 「廃棄されました」
 --人を殺したことを認める調書にサインしたことを謝るのと、自分で引き起こした事件を謝るのでは意味が違うが、どうして看守の言うようにかいてしまったのか
 「時間があまりなかった。姉がいつ手紙を取りに来るのか分からない。来たときに書き終わっていないと渡せないから」
 --看守が言うように書いたと話しているが、普通、警察では取り調べと看守は分けられており、看守は取り調べ内容は知らないはず。それなのに、看守が取り調べに関する内容の入った手紙をアドバイスしたのか
 「看守はいつも検事と一緒に来ていた班長の人。だからアドバイスはできた」
 --検事の取り調べを受ける際、看守が立ち会っていたということか
 「はい」
 《続いて検察官が質問した》
 --今回の殺人はやっていないということですね
 「あ、はい」
 --平成17年12月1日、2日に何をしていたか
 「覚えていません」
 --覚えていることは何一つない
 「あ、はい」
 --12月1日にレンタルショップに寄っていたことを手がかりにしても
 「レンタルショップにはよく行くので、いつ何を借りたとか覚えられない」
 --Nシステムの通行記録を聞いても、どの方向に行ったとか覚えていない
 「あ、はい」
 --起訴以降、この事件で17年12月1、2日にどこで何をしていたか、思い出そうとしたか
 「しましたが、無理でした」
 --謝罪の手紙は看守に塗りつぶされて書き直しをさせられたと証言していた
 「はい」
 --書き直した文面は、看守がこういうふうに書くようにと伝えてきたのか
 「はい」
 --看守は担当検事の取り調べの時にいた人か
 「最後までいた。班長と呼ばれていました」
 --手紙を書き直したのは1回か
 「その1回だけです」
 --塗りつぶして、書き直すように指示した理由について説明はあったか
 「詳しく書いては駄目ということでした」
 --書き直した手紙は看守が言った通りにしたのか
 「はい」
 --下書きか何かを見ながらか
 「いや、口頭で言われたことを書きました」
 --弁護側が質問をした際、涙を流していたのはなぜか
 「まさか、裁判で手紙が使われるとは思っていなかった。こんな形で出てくるとは思わない」

 ◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です


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