本当に無実だったのか 「小野悦男」 「中勝美容疑者」無罪確定となった事件から、その後…

2014-11-07 | 社会

 産経ニュース 2014.11.7 05:05更新
【産経抄】本当に無罪だったのか 11月7日
 「小野悦男」という名前を聞くと、今も苦い思いがこみ上げる、そんな司法とマスコミの関係者は少なくない。千葉県松戸市で昭和49年の夏、帰宅途中の女性会社員=当時(19)=が殺された。この事件で逮捕された小野容疑者は、1審で無期懲役の判決を受けたものの、東京高裁では逆転無罪となり、検察側は上告を断念する。
 ▼当時新聞各社は、首都圏で起きていた女性連続殺人事件と小野容疑者を関連づけて報じていた。批判を受けて、おわび記事の掲載に追い込まれる。呼び捨てが慣習だった被疑者に、「容疑者」の呼称を付けるきっかけとなった事件でもある。
 ▼ところがヒーロー扱いされたのもつかの間、数年後には再び、殺人事件の容疑者となった。東京都内で同居していた女性を殺害し、女児を暴行した罪で、今度は無期懲役が確定する。先の無罪判決については、今も疑問の声がある。
 ▼大阪市北区のビルの一室で、38歳の女性が刃物で顔など11カ所も刺される事件があった。現行犯逮捕された中勝美容疑者(66)の名前をつい4カ月前に、社会面で見かけたばかりである。中容疑者は、京都府舞鶴市で平成20年5月、高校1年の女子生徒が殺された事件で殺人罪に問われていた。
 ▼1審で無期懲役とされたが、2審で逆転無罪となり、最高裁が検察側の上告を棄却して、無罪が確定したのだ。松戸の女性会社員殺害事件と同様に、舞鶴の事件にも、「一事不再理の原則」が適用される。つまり無罪が確定すれば、再び裁判を起こすことはできない。
 ▼だからといって、事件を迷宮入りのままにしておいていいわけがない。誰が犯人なのか、遺族には知る権利がある。なによりこのままでは、15歳だった被害者の少女が浮かばれない。
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 産経ニュース 2014.11.7 11:45更新
【浪速風】三振法なら事件はなかった(11月7日)
 米国に三振法という法律がある。重罪で2度有罪になると3回目はどんな犯罪でも終身刑になる。野球のように三振即アウト。犯罪ドラマで「これで3つなんだ。見逃してくれよ」と懇願するシーンを見る。微罪でも重い刑になるので議論はあるが、再犯の抑止、とくに常習犯に効果があるとされる。
 ▼大阪市北区で女性を刃物で刺して殺人未遂容疑で逮捕された中勝美容疑者は、京都府舞鶴市の女子高生殺害事件で逆転無罪になっていた。朝刊の産経抄が「小野悦男事件」との類似に触れていた。冤罪はあってはならないが、はたして無罪判決は正しかったのかとの疑念が残る。
 ▼中容疑者はコンビニで雑誌を万引した窃盗罪で服役し、9月に出所したばかりだった。殺人など複数の前科があり、もし日本に三振法があれば、まだ刑務所の中だっただろう。更生を期待するなら、再犯、常習犯にはもっと厳罰であるべきだ。被害者の無念より、被疑者の人権に偏りすぎていないか。
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 * 中勝美容疑者「金銭トラブル。殴られたので刺した」/ 舞鶴・小杉美穂さんの母「恐れていたことが現実に」 2014-11-05 
 * 中勝美容疑者を逮捕-舞鶴事件で無罪の元被告が殺人未遂事件 中容疑者には多くの前科 2014-11-05
 * 【衝撃事件の核心】舞鶴事件無罪・中勝美被告 長期刑(懲役16年)で断罪 大阪地裁2016/3/4 

  ◇ 舞鶴事件無罪の中勝美受刑者 医療刑務所内で病死 大阪の殺人未遂事件で服役中に 2016/7/11
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正義のかたち:裁判官の告白/6 釈放後に別の殺人で無期=小野悦男受刑者 2008-04-13 
 ■「判決は無罪しかなかった」 証拠弱く、悔いなし
 「判決は無罪しかなかった。3人の裁判官は一致した」。小野悦男受刑者(71)に話が及ぶと、荒木友雄・流通経済大教授(72)は複雑な表情を隠さない。
 東京高裁時代の91年、千葉県松戸市で信用組合の女性事務員(当時19歳)が乱暴されて殺害された事件について小野受刑者に逆転無罪を言い渡した3人の裁判官のうちの一人。釈放された小野受刑者は5年後の96年、別の女性殺人容疑などで逮捕され、99年に無期懲役刑が確定した。
 時効で終結した松戸事件の真相は分からない。それでも、週刊誌などからは「松戸事件も本当に無実だったのか」「無罪判決がなければ新たな犯行を防げたのでは」とたたかれ、高裁裁判長は「無罪病」と皮肉られた。
 転勤していた荒木さんも無関心ではいられない。目頭をぬぐい、裁判長に向かって深々と頭を下げた小野受刑者の姿が目に浮かんだ。「晴れて無罪になって喜んでいたのに。なぜ?」。怒りを覚えた。
 松戸事件は、自白がほとんど唯一の証拠だった。1審は自白を根拠に無期懲役としたが、その調書の取り方に疑問を持った。警察の留置場に小野受刑者を一人だけ拘置し、連日追及。批判が根強い代用監獄の取り調べの中でも特に過酷な状況だと感じた。判決では「自白を強要した疑い」を理由に自白の任意性を否定して証拠とは認めず、無罪を選んだのだった。
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 「真っ白無罪、灰色無罪、限りなく黒に近い無罪」
 死刑囚の再審無罪事件に関与したこともある元裁判官の浜秀和弁護士(78)は、無罪には3種類あるという。真犯人が現れれば真っ白だが、証拠不足でぎりぎり黒と認定できない時もある。
 一方で、有罪主張の検察と相反する無罪判決をためらう裁判官がいるのも確かだ。
 浜さんは、こんな友人の話を披露した。起案した判決文を裁判長に突き返された。中身は一ページも見ずに「無罪」の主文だけで「×」だった--。
 ある元裁判官は、知人の検察官に「我々は難しい問題は最高検まで入って検討する。検察と異なる意見の1審判決は高裁で簡単に破棄されるだけだよ」と得意げに忠告された経験を明かした。
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 昨年12月7日、荒木さんが2審判決を下した一人の死刑囚の刑が執行された。
 藤間静波死刑囚。81~82年、交際を嫌がられた女子高生とその家族ら5人を殺害した。「判決を読み直したが、付け加えるところも変えるところもありませんでした」。全力で審理した自信が揺るぎない確信を生む。
 松戸事件についても悔やむことはない。「(自白以外の)あの証拠では弱い」。荒木さんは言い切った。=つづく
 毎日新聞 2008年3月27日 東京朝刊 *強調(太字・着色)は来栖
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