秋葉原17人殺傷事件 第16回(2010.7.27 東京地裁) 加藤智大被告人の父母に対する証人尋問要旨

2010-07-27 | 秋葉原無差別殺傷事件

【秋葉原17人殺傷 第16回 被告語る初日(1)】
母親「経済的な損害賠償は不可能…私は被告を見放さない」
 産経ニュース 2010.7.27 11:46  
 《東京・秋葉原の無差別殺傷事件で殺人罪などに問われた元派遣社員、加藤智大(ともひろ)被告(27)の第16回公判が27日午前10時前、東京地裁(村山浩昭裁判長)で始まった》
 《今回の公判からは、注目の加藤被告本人の被告人質問が行われる予定だ。半年前の今年1月28日の初公判では起訴内容を認め「私にできるせめてもの償いは、どうして今回の事件を起こしてしまったのかを明らかにすること。詳しい内容は後日説明します」と話した加藤被告。秋葉原の歩行者天国で無差別に通行人を殺傷するという理不尽極まりない惨劇を引き起こした理由が、ついに法廷で語られるときがやってきた》
 《これまでの15回にわたる公判では、重軽傷を負った被害者9人や目撃者ら計34人が検察側証人として出廷。「まるで戦場のようだった」「人生最悪の日だった」「死刑しかないと思う」などと語り、凄惨(せいさん)を極めた事件当時の状況が生々しく再現されてきた》
 《多数の証人尋問が行われることになったのは、弁護側が加藤被告や被害者、事件関係者などの供述調書の多くの部分を不同意としたためで、被害者の遺族が「傷口に塩を塗るような思いやりのない行為だ」と弁護側の法廷戦術を痛烈に批判する場面もあった》
 《法廷での加藤被告は時折、持参したノートにメモを書き記す以外は、終始無表情で視線を落としたままだ。ただ5月25日の第10回公判で、男性被害者の妻が「一つだけでも良いから、みなさんに良いことをしてほしい」と語りかけると、顔を紅潮させ、目に涙を浮かべるシーンもあった》
 《事件から丸2年となった6月8日の現場交差点では、遺族や関係者が献花台に花を手向け、被害者の冥福(めいふく)を祈る姿が見られた。「二度と同じ事件が起きないように…」。しかし、6月22日には、広島県の自動車工場で、従業員らが乗用車にはねられ、12人が死傷する事件が起き、元期間社員の容疑者は「秋葉原の事件のようにしてやろうと思った」と供述。加藤被告の引き起こした事件が、別の事件を誘発する事態に発展した》
 《加藤被告はなぜ、凶行に走ったのか。負の連鎖を断ち切るためにも、加藤被告の動機の解明は必要不可欠だ。果たして加藤被告は被告人質問で、闇に包まれた心の内をすべて明らかにするのだろうか》
 《法廷は、これまで同様、東京地裁最大の広さを誇る104号法廷だ。傍聴人の入廷が終わり、午前9時57分、加藤被告が向かって左手の扉から法廷に姿を現した。いつものように黒のスーツに白いワイシャツ姿で、頭は丸坊主で眼鏡をかけ、無表情。やはりいつものように傍聴席に向かって一礼し、向かって左手に位置する弁護人席の前の長いすに腰を下ろした》
 裁判長「それでは、開廷します」
 《村山裁判長は、この日の予定として、7月8、9の両日に青森県で行われた加藤被告の両親に対する証人尋問の結果を要旨の告知として朗読し、その後、弁護人の被告人質問を行うことを告げた》
 《向かって右側に位置する女性裁判官が口を開く》
 裁判官「それでは、7月8日に行った被告人の母親に対する証人尋問の要旨について述べます」
 「私は、青森高校を卒業後、地元の金融機関に就職しました。そこで同僚だった被告の父親と知り合い、昭和55年に結婚しました。その後、主婦となり、57年に長男である被告が生まれ、その3歳下に次男が生まれました。その後、62年に夫の職場が五所川原市から青森市に変わり、その年に家を建てました」
 《2人の子供が生まれ、マイホームも完成。ここまでの加藤家は平和そのものだが、その直後から、夫婦仲が悪化していったようだ。女性裁判官が、抑揚のない声で朗読を続ける》
 「引っ越してからは、夫が毎日のように酒を飲んで帰るのが遅く、暴れたり、帰宅しないこともあり、私はイライラし、子供たちに八つ当たりすることがたびたびありました」
 「たとえば、被告を屋根裏に閉じこめたり、窓から落とすまねをしたり、お尻をたたいたり。被告は食べるのが遅かったので、早く後片付けをしたくて、食事を茶碗(ちゃわん)からチラシの上にあけて食べさせたこともありました」
 「もっとも、子供たちに強く当たったのは、私としてはあくまでしつけの一環と思っていました。単に不満のはけ口ではなく、なにがしか子供たちにも理由があったと思います。ただ、そこまでしなくても良かったとも思います」
 「長男と次男に同じようなことをした記憶がありますが、どちらかというと長男である被告に強く当たりがちだったと思います」
 《子供たちにきつく当たる母親を、父親は静観していたようだ》
 「私が夫の前で怒ることもありましたが、夫は止めてくれませんでした」
 《要旨の告知は、母親が加藤被告をどう見ていたかに移る》
 「私は被告について、物覚えが早くて頭のいい子だと思っていましたが、一方で、あまり言うことを聞かない子だとも思っていました」
 「私は被告に、北海道大学や東北大学を目指してほしいと思っていて、自分と同じ青森高校に行ってほしいと思っていました」
 《母親は加藤被告に対し、学歴と安定した職業を求めていたが、父親は加藤被告の進路について何も言わなかったという》
 《加藤被告が中学生になると夫婦仲はさらに悪化。母親は加藤被告にイライラをぶつけたという》
 「被告は小学生のころは反抗するより、泣いていました。中学生になると物に当たって暴れたり、部屋の壁に穴を空けたりしました。中学2年生のときには、成績のことで被告と口論となり、顔を殴られたことがありました。私はそれ以降、被告とあまり口をきかなくなりました」
 《母親は学歴を求める一方で、加藤被告の将来の夢や恋愛を否定した》
 「中学3年のころ、被告がレーサーになりたいと言い出したので、危険だから絶対やめるように言いました。女の子とも交際していたようですが、成績にプラスにならないからやめるように言いました」
 《その後、加藤被告は母親の望む通り、青森高校に進学したが、成績が低下。友人と過ごすことが多くなり、母親との接触は少なくなっていった》
 《高校卒業後、加藤被告は自動車関係の短大に進学した》
 「私は、被告が昔から車が好きだったので、自分で進路を決めて良かったと思いました」
 《短大卒業後、加藤被告は仙台で一人暮らしを始めた。母親も時々訪れたというが、会うことはあまりなかったという。そんな加藤被告から平成18年8月に「これから死ぬから後はよろしく」と突然電話がかかってきたという》
 「私は、借金があると言っていたので、私が返してあげるから、必ず帰ってくるように言いました。それと、私が辛くあたったことも原因の一つだと思い、謝るから帰ってきなさいとも言いました」
 《その後、実家に戻ってきた加藤被告。母親は疲れていたようなので、具体的には何も尋ねなかったという》
 「その後、被告は『精神科に行きたい』といいましたが、あまり意味がないと思ったので、そうアドバイスし、結局行きませんでした」
 《そして母親は、19年5月に夫と別居。加藤被告もまた一人暮らしを始め、敷金や礼金、車の頭金50万円なども母親が預金から捻出してあげたという》
 「罪滅ぼしのつもりでした」
 《そして母親は19年8月に加藤被告と会った後、音信不通となり、20年6月8日にラジオで加藤被告の凶行を知ったという》
 「私は被告がなぜ今回の事件を起こしたのか分かりません。被害者や遺族の方には申し訳ないと思いますが、経済的な損害賠償は不可能です。私は被告を見放すことはなく、できる範囲でこたえていきたいです
 ◎上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します 

   関連; 秋葉原無差別殺傷事件〈加藤智大被告〉母を青森で尋問   
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【秋葉原17人殺傷 第16回 被告語る初日(2)】
「つぐないのため、すべて話す」 「掲示板の荒らしやめさせる」ことが動機
 産経ニュース 2010.7.27 12:13
 《東京・秋葉原の無差別殺傷事件で殺人罪などに問われた加藤智大(ともひろ)被告(27)。青森県で行われた母親の証人尋問の読み上げが終わり、続いて父親への証人尋問内容の読み上げに移った》
 《仙台に単身赴任していた父親。加藤被告の短大入学を機にバイクを買ってあげたという》
 「バイクが壊れ、被告から修理代を要求されたときに口ゲンカになり、それ以来、関係が疎遠になりました」
 《それでも短大卒業後、加藤被告が仙台に就職したので、妻が加藤被告のアパートを訪れるなど家族とは交流があったという》
 「ある日、被告と連絡がつかなくなり、アパートに行くときれいに荷物が引き払われていました」
 《姿を消していた加藤被告が青森の自宅に戻ってきたのは平成18年の夏ごろだったという》
 「妻から自宅に戻ったと連絡を受けました。被告は借金を抱えていました」
 「音信不通だった被告が自宅に戻ってきてうれしかったので、借金の原因については聞きませんでした」
 《自宅に戻った加藤被告は大型免許を取得。運送会社への就職も決まったという》
 「青森駅まで送ってくれたときに被告は『ばかでごめんね』と話しました。私は『ずっと自宅にいていいからね』と言いました」
 《その後、単身赴任を終えて青森の自宅に戻った父親だが、休みの日以外は、加藤被告と顔を合わせることはなかった》
 《19年5月、被告に『別れることになった』と離婚の話をしたのが、被告と顔を合わせた最後になったという》
 《19年8月に、妻が家を出るよりも早く、加藤被告は家を出ていったという》
 《加藤被告が家賃を滞納していると連絡を受けた父親がしばらく、代わりに家賃を払っていたが被告とは連絡が取れなかった》
 「この事件が起こるまで、(被告は)青森の運送会社で働いていると思っていました」
 「今回の事件は妻から聞き、青森署まで行きました。びっくりしてなぜなんだと思いました」
 《ショックを受けた父親。勤務先を休職した末に退職したという》
 「私はなぜ、被告が事件を起こしたか分からない。でも、支える気持ちはあります。被告は裁判でありのままの気持ちを話してほしい
 《被害者や遺族への謝罪の言葉で父親の証言は締めくくられ、裁判官は読み上げを終えた》
 《ここで、村山浩昭裁判長が弁護人による被告人質問の開始を告げた》
 裁判長「それでは被告人質問を始めます」
 《加藤被告が法廷で話すのは1月28日の初公判以来だ》
 《初公判では、『せめてもの償いは、どうして今回の事件を起こしてしまったのかを明らかにすること。詳しい内容は後日説明します』と話した加藤被告。凶行に至った経緯をどう語るのか》
 《ゆっくりと席を立った加藤被告は、いつものように白いシャツに黒いスーツ姿で証言台の前に座った》
 裁判長「言いたくないことがあれば言う必要はありません。答えるときは質問をよく聞いて、質問と答えが重ならないようにしてください」
 《裁判長の言葉に応じるように、加藤被告はマイクを自分の顔にゆっくりと近づけた》
 弁護人「これから質問していきます。まず、どういう気持ちで裁判に臨んでいますか」
 被告「被害者の方、ご遺族の方に申し訳なく思っています。裁判についてですが、つぐないの意味がありますし、事件を起こした理由の真相を明らかにすべく、お話をすべてしようという思いで臨んでいます」
 《はっきりとした口調で淡々と話す加藤被告》
 弁護人「なぜ話そうと思ったのですか」
 被告「私が起こした事件と同じような事件がまた起こらないように、参考になるようなことをお話できると思いました」
 《被告は身を固くして前方をじっと見つめている》
 被告「ある被害者の方が、反省したところで被害は回復しないと言っていました。それは分かっているけれど、それでも自分が今やるべきことをやろうと思いました」
 弁護人「事件についての記憶がない部分がありますか」
 被告「はい」
《一瞬、間をおいた後、被告が再び話し始めた》
 被告「どうしても思いだせない部分については今まで努力してきました。ご遺族の方や被害者の方、今まで裁判所に証人に来てくださった方にご迷惑、ご負担をかけて申し訳ないと思っています」
 弁護人「これから生い立ちや事件の経過について聞いていきます。どういう気持ちで事件を起こしたのですか」
 被告「はい。私はインターネットの掲示板を使っていたのですが、自分のスレッドに私になりすます偽物や、荒らし行為を行う者がいたので、対処してほしいと掲示板の管理人に頼みました。(こうした人たちに)自分が事件を起こしたことを知らせたかった」
 弁護人「どういう意味があるんですか」
 被告「私が事件を起こしたことで、私に対して嫌がらせをしたことを知って、事件に対して思い当たるふしがあると思ってほしかった。私が(荒らし行為や、なりすましを)本当にやめてほしかったことが伝わると思っていました」
 《被告は感情を出さないようにしているのか、淡々と話し続けている》
 弁護人「復讐しようと思ったのですか」
 被告「そういうことではないです。(荒らし行為や、なりすましを)やめてほしかったということを伝えるための手段です」
 弁護人「秋葉原の事件を起こす前に、やめてほしいと伝えたことはありましたか」
 被告「はい。掲示板に事件をほのめかすことを書き込むことで、怒っているとアピールしたりしていました」
 《事件を起こした動機について、被告は淡々と語り続けている》
 ◎上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します *強調(太字・着色)は来栖
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「秋葉原無差別殺傷事件」加藤智大被告 母親との関係〈母親に対する証人尋問 2010.7.8.要旨〉 
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「秋葉原無差別殺傷事件」 被告人質問 2010.7.27 加藤智大被告 供述要旨 (東奥日報)  
秋葉原殺傷事件 加藤智大被告の供述「被害者が目と口を大きく開き訴えかけてくるよう…非常に気持ち悪い」  
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