【国防最前線】(1)~(4)/米国「日本も中距離ミサイルを持つべきだ」③/送り込まれた敵国工作員④

2013-02-17 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

【国防最前線】警戒・監視だけでは中、露への抑止力にはならない★(1)
zakzak2013.02.13
 もし、「目の前のいずれかの家に押し入って占拠せよ!」などといわれたら、「監視カメラのある家」と「ない家」どちらを選ぶだろうか?
 よほどのチャレンジャーでない限り、後者を選ぶのではないか。しかし、監視カメラはないがその家には屈強な住人がいて、何やら戦う道具もそろえているらしいと聞いたらどうだろうか。いくら入りやすくても、それは人を思いとどまらせるに足るインパクトがある。
 国の防衛もこれに似ていて、いかに「手出しさせないか」が肝要だ。ところが、このところの中国やロシアなどによる主権の侵害行為に対し、よく言われるセリフが「警戒・監視態勢の強化」だ。これは外交上は無難な物言いではあるが、本気でそれしか対応策ができないなら問題がある。それはまさに、監視カメラを増やして盗人を追い払おうという発想に他ならないからだ。
 今さら言うまでもなく、自衛隊はこれまでもずっと24時間365日、警戒・監視態勢をとっている。10年続いた予算縮小の中で人員のやり繰りや燃料の確保など現場の苦労は想像に難くなく、今般の防衛予算増額により現場の苦労が軽減されることは歓迎だ。
 しかし、そもそも相手に「手出しさせない」本質は別のところにある。
 海上自衛隊のヘリや艦艇が中国海軍艦艇のレーダー照射を受け、「ロックオン」されたことはショッキングな出来事だが、翻ればこのことは、日本が海上や上空での警戒・監視を増やしても同様の事案は防げないことをハッキリさせたようにも思う。
 つまり警戒・監視だけでは抑止力にならないのだ。
 中国側は、海自の艦艇やP3C哨戒機の動きなどをむしろ「圧力」と捉え、イラだったために今回のような行動に出たとの見方もある。それは中国の言い分からすれば、こちらが警戒すればするほど嫌がらせをエスカレートさせるということにもなる。
 だから警戒・監視態勢を弱めてもいいなどというわけではない。しかし、少なくともそれだけでは日本を守れない。
 大体、従来の発想は、侵入しようとするものに対し見回りを増やして「あっちへ行ってください」と促すことでしかない。また、事を荒立てないよう避けたり除けたりしているのである。相手を遠ざけるために多大な税金を費やすのはどこか変ではないだろうか。
 やはり最後に大事なのは、「どんな住人がいるのか」だろう。「対処」だけに終始することに危うさを感じている。
 ■桜林美佐(さくらばやし・みさ)
 1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、ジャーナリストに。防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書に「誰も語らなかった防衛産業」(並木書房)、「日本に自衛隊がいてよかった」(産経新聞出版)など。
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【国防最前線】在外日本人の危機でも「救出」できない自衛隊★(2)
zakzak2013.02.14
 北朝鮮が核実験を強行したという。もし半島有事となれば、在韓邦人や拉致被害者の避難や保護が必要となるが、現状ではどれだけのことができるのだろうか…。
 昨年は海外で暮らす日本人が過去最高を記録し、118万人以上に達したという。企業が生産拠点を次々に海外に移転させていることからも、今後ますます多くの日本人が世界各地に広がることになるだろう。
 しかし、アルジェリア人質事件により自衛隊の活動が著しく制限されていることを知り、不安を覚えた日本人も多いのではないか。
 自国民が外国で危険にさらされたとき、諸外国では「自衛権の行使」として、当事国の許可がない場合でも、単独あるいは他国の協力を得て速やかに救出活動を行うのが通例だ。自国民ばかりか国籍を問わずとにかく助け出し、むしろ外国人の方が救出者が多くなる場合も多いようだ。
 一方、わが国の自衛隊は安全が確保された場所でしか活動できないため、避難した人々に空港や港まで来てもらわなくてはならない。そこから日本に帰るまでは船や航空機を使うことができるようになったが、こうした場面でも民間機を使ったり、外国の航空機に乗せてもらうなどしていた。今回、政府専用機を派遣し、自衛隊による「輸送」を実現しただけでも画期的であった。
 ただし、自衛権を行使して自国民を守れないばかりか、日本人を安全な場所に連れてきてくれた他国兵士が襲われてもただ見ているしかないという姿勢は、国際常識に照らして到底理解を得られないだろう。
 武器の使用に関しては、「安全な場所」から船や航空機に誘導する間に襲撃されたら、その場合は「武器等防護」や「保護下の邦人」を守るということで「正当防衛・緊急避難」のみ可能だ。つまり、外国にいる日本人に危険が及んでも、できるのは「輸送」だけで「救出」はできないのである。
 防衛駐在官を増やすことも検討されるようだが、それだけで画期的な解決策になるわけではない。やはり、自衛隊の権限を見直さない限り、最後は諸外国に依存しなければならない状況は同じだ。
 ここまで述べると、すぐにでも法改正をすべきだと感じるのが人情だが、変えればすぐに明日から大丈夫というわけではない。衛星やヒューミントといわれる人の力による情報収集、分析、救出に向けた訓練…。いつどこで起きるか分からないテロに、自衛隊が今の規模のままで臨むのは極めて苦しい。
 国としての態勢を整えるのが理想だが、当面、こうした事案を得意とする民間組織の活用も視野に入れてもいいのかもしれない。■桜林美佐(さくらばやし・みさ)
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【国防最前線】「日本も中距離ミサイルを」米国がここまで言うワケ★(3)
zakzak2013.02.15
 「日本も中距離ミサイルを持つべきだ」
 最近、米国の軍事専門家の間でこのような声がよく聞かれ、「21世紀のアジアの同盟」として発表された共和党系シンクタンクの報告書の中にも明記された。
 なぜ、米国人がここまで言うのか? それには明確な理由がある。
 中国が90基も配備している弾道ミサイルDF21C(射程約1800キロ)や、400ほどあるという巡航ミサイルDH10は日本全土を射程におさめていて、これらは台湾有事には在日米軍基地を攻撃する任務を付与されているのだ。
 米国は同じような中距離ミサイルはソ連との軍縮によりロシアとともに全廃してしまい持っていない。今やこの分野は中国の独壇場となっているのである。
 そこで、「(日本が)力の均衡」をとることが抑止になるという考え方だ。互いに軍拡を続けた米ソが最終的には戦争をせず、武器を手放していったことからも、このロジックが成立していることが分かる。
 こうした話をすると必ず「日本に武器を売りたいだけだろう」などという反論が出てきがちだが、それは確かに否めない。
 しかし、私たちは米国のそのような顔も表情の1つとして受け止めつつ、したたかに事を運ぶべきだろう。政治が決断し予算が付けば、日本独自でも開発・保有は可能なはずだ。
 一方、韓国は「玄武」シリーズという地対地ミサイルを保有している。弾道弾型と巡航型があり、弾道ミサイルは2017年までに現有の800基を1700基に増やす予定だ。
 さらに昨年、北朝鮮によるミサイル発射事案を受け、「米韓ミサイル指針」という両国間の取り決めにより「射程300キロ」と定められていた弾道弾の射程距離延伸を申し出て、射程を800キロまで伸ばすことで合意している。
 これにより北朝鮮全域を攻撃することが可能となった上、日本も関西まで射程に入った(巡航ミサイルはすでに日本全土が射程内)のだが、そこはあまり指摘されていないようだ。
 とはいえ、韓国はまだ独自での開発能力がなく、米国やロシアに依存している。衛星の打ち上げも日本のH2ロケットを使っているのが現状だ。
 昨年の北朝鮮ミサイルは3000キロ以上は飛んだとみられ、そこに来て、政権交代後の態勢を試すかのような核実験…。今後、韓国は国の威信をかけて遅れている宇宙分野などを中心に、防衛力のさらなる増強を図るだろう。■桜林美佐(さくらばやし・みさ)
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【国防最前線】独の非核運動に送り込まれた敵国工作員★(4)
zakzak2013.02.17
 かつてドイツは大きな決断を迫られた。1980年初頭、ソ連が欧州に向けて中距離核弾頭ミサイルSS20を実戦配備したことを受け、米国がドイツにパーシングII中距離弾道ミサイルを配備したのだ。猛烈な反対の声の中だった。
 当時のシュミット首相は「そんなことをしたら、独ソ関係は最悪になる」などと内外からバッシングを受けた。だが、欧州正面に向けられた核は270基にも上っていた。それまで頼みにしてきた米国の核の傘がここまでくると、もう当てにはできないだろうという考えから、「やはり実際に自分たちの国に核を配備する、というか『米国に』配備させるのがいい」と判断した。
 ところが、この時に市民による大規模な非核運動が巻き起こった。シュミット首相は退陣を余儀なくされたが、後任のコール首相はパーシングII配備を粛々と推し進めた。
 風が変わったのは8年後だった。米ソにより中距離核戦力廃棄条約が締結されたのだ。ソ連が折れた形だ。
 結果はすぐには分からない。しかし、自らの立場を辞してでも国益優先の信念を貫く姿勢は、やがて「真の指導者」として歴史が評価することになる事例といえるだろう。
 ところで、この時に盛り上がったミサイル配備反対・非核の運動には、ソ連の工作員が多数送り込まれていたことは今や有名な話である。「反対運動」というのは、平和主義思想から生まれるだけの単純なものではないことが分かる。こうした意図的な「反対」と、当事者は国のためと信じて行う「反対」とが入り交って拡大していくのである。
 さて、安倍首相は衆院予算委員会でいわゆる「敵基地攻撃」は憲法が認める自衛の範囲内に含まれるとの見解を改めて示した。しかし、再三指摘されているように、日本はその能力を有していない。「専守防衛」だからということで、空母や射程の長いミサイルなどは憲法違反だと自ら手足を縛っているのだ。
 これまでも、ミサイルの射程延伸を検討しようとする動きはあったが、実現しなかったのは政権政党からも防衛省内でも常に慎重論が強まるからだ。つまり反対運動だけでなく、自重という不作為がパワーバランスの不均衡を招いたことは否めないのである。
 しかし、「自分のせいだ」と感じている日本人はいないだろう。責任は政治が負わねばならないのが世の常だ。この際「敵基地」だけに議論を狭めず(いつも論点がピンポイントなのが気になる)真の国防論議が深まることを期待したい。 =おわり
 ■桜林美佐(さくらばやし・みさ)
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『憲法が日本を亡ぼす』古森義久著 海竜社 2012年11月15日 第1刷発行  
p78~
 2 日本のソフト・パワーの欠陥
○ハード・パワーは欠かせない
 「日本が対外政策として唱えるソフト・パワーというのは、オキシモーランです」
 ワシントンで、こんな指摘を聞き、ぎくりとした。
 英語のオキシモーラン(Oxymoron)という言葉は「矛盾語法」という意味である。たとえば、「晴天の雨の日」とか「悲嘆の楽天主義者」というような撞着の表現を指す。つじつまの合わない、相反する言葉づかいだと思えばよい。(略)
p79~
 日本のソフト・パワーとは、国際社会での安全保障や平和のためには、軍事や政治そのものというハードな方法ではなく、経済援助とか対話とか文化というソフトな方法でのぞむという概念である。その極端なところは、おそらく鳩山元首相の「友愛」だろう。とくに日本では「世界の平和を日本のソフト・パワーで守る」という趣旨のスローガンに人気がある。
 ところが、クリングナー氏はパワーというのはそもそもソフトではなく、堅固で強固な実際の力のことだと指摘するのだ。つまり、パワーはハードなのだという。そのパワーにソフトという形容をつけて並列におくことは語法として矛盾、つまりオキシモーランだというのである。
 クリングナー氏が語る。
 「日本の識者たちは、このソフト・パワーなるものによる目に見えない影響力によって、アジアでの尊敬を勝ち得ているとよく主張します。しかし、はたからみれば、安全保障や軍事の責任を逃れる口実として映ります。平和を守り、戦争やテロを防ぐには、安全保障の実効のある措置が不可欠です」
p80~
 確かにこの当時、激しく展開されていたアフガニスタンでのテロ勢力との戦いでも、まず必要とされるのは軍事面での封じ込め作業であり、抑止だった。日本はこのハードな領域には加わらず、経済援助とかタリバンから帰順した元戦士たちの社会復帰支援というソフトな活動だけに留まっていた。(略)
 クリングナー氏の主張は、つまりは、日本は危険なハード作業はせず、カネだけですむ安全でソフトな作業ばかりをしてきた、というわけだ。最小限の貢献に対し最大限の受益を得ているのが、日本だというのである。
 「安全保障の実現にはまずハード・パワーが必要であり、ソフト・パワーはそれを側面から補強はするでしょう。しかし、ハード・パワーを代替することは絶対にできません」
p81~
 となると、日本が他の諸国とともに安全保障の難題に直面し、自国はソフト・パワーとしてしか機能しないと宣言すれば、ハードな作業は他の国々に押しつけることを意味してしまう。クリングナー氏は、そうした日本の特異な態度を批判しているのだった。(略)
p82~
 しかし、日本が国際安全保障ではソフトな活動しかできない、あるいは、しようとしないという特殊体質の歴史をさかのぼっていくと、どうしても憲法にぶつかる。
 憲法9条が戦争を禁じ、戦力の保持を禁じ、日本領土以外での軍事力の行使はすべて禁止しているからだ。現行の解釈は各国と共同での国際平和維持活動の際に必要な集団的自衛権さえも禁じている。前項で述べた「8月の平和論」も、たぶんに憲法の影響が大きいといえよう。
 日本の憲法がアメリカ側によって起草された経緯を考えれば、戦後の日本が対外的にソフトな活動しか取れないのは、そもそもアメリカのせいなのだ、という反論もできるだろう。アメリカは日本の憲法を単に起草しただけではなく、戦後の長い年月、日本にとっての防衛面での自縄自縛の第9条を支持さえしてきた。日本の憲法改正には反対、というアメリカ側の識者も多かった。
 ところがその点でのアメリカ側の意向も、最近はすっかり変わってきたようなのだ。共和党のブッシュ政権時代には、政府高官までが、日米同盟をより効果的に機能させるには日本が集団的自衛権を行使できるようになるべきだ、と語っていた。
p83~
 オバマ政権の中盤から後半にかけての時期、アメリカ側では、日本が憲法を改正したほうが日米同盟のより効果的な機能には有利だとする意見が広がり、ほぼ超党派となってきたようなのだ。
p158~
第6章 防衛強化を迫るアメリカ
 2 日本の中距離ミサイル配備案
○中国膨張がアジアを変えた
 「日本は中国を射程におさめる中距離ミサイルの配備を考えるべきだ」---。
 アメリカの元政府高官ら5人によるこんな提言がワシントンで発表された。20011年9月のことである。
 日米安保関係の長い歴史でも、前例のないショッキングな提案だった。日本側の防衛政策をめぐる現状をみれば、とんでもない提案だとも言えよう。憲法上の制約という議論がすぐに出てくるし、そもそも大震災の被害から立ち直っていない日本にとって、新鋭兵器の調達自体が財政面ではまず不可能に近い。
 しかし、この提案をしたアメリカ側の専門家たちは、歴代の政権で日本を含むアジアの安全保障に深くかかわってきた元高官である。日本の防衛の現実を知らないはずがない。
p162~
 中国は射程約1800キロの準中距離弾道ミサイル(MRBM)の主力DF21Cを90基ほど配備して、非核の通常弾頭を日本全土に打ち込める能力を有している。同じ中距離の射程1500キロ巡航ミサイルDH10も総数400基ほどを備えて、同様に日本を射程におさめている。米国防総省の情報では、中国側のこれら中距離ミサイルは台湾有事には日本の嘉手納、横田、三沢などの米空軍基地を攻撃する任務を与えられているという。
 しかし、アメリカ側は中国のこれほどの大量の中距離ミサイルに対して、同種の中距離ミサイルを地上配備ではまったく保有していない。1章で述べたとおり、アメリカは東西冷戦時代のソ連との軍縮によって中距離ミサイルを全廃してしまったのだ。ロシアも同様である。
p163~
 だからこの階級のミサイルを配備は、いまや中国の独壇場なのである。
 「中国は日本を攻撃できる中距離ミサイルを配備して、脅威を高めているが、日本側ももし中国のミサイルを攻撃を受けた場合、同種のミサイルをで即時に中国の要衝を攻撃できる能力を保持すれば、中国への効果的な抑止力となる」
 衝突しうる2国間の軍事対立では力の均衡が戦争を防ぐという原則である。抑止と均衡の原則だともいえる。
 実際にアメリカとソ連のかつての対立をみても、中距離ミサイルは双方が均衡に近い状態に達したところで相互に全廃という基本が決められた。一方だけがミサイル保有というのでは、全廃や削減のインセンティブは生まれない。だから、中国の中距離ミサイルを無力化し、抑止するためには日本側も同種のミサイルを保有することが効果的だというのである。
 日本がこの提案の方向へと動けば、日米同盟の従来の片務性を減らし、双務的な相互防衛へと近づくことを意味する。アメリカも対日同盟の有効な機能の維持には、もはや日本の積極果敢な協力を不可欠とみなす、というところまできてしまったようなのである。
p164~
 3 アメリカで始まる日本の核武装論議
○中国ミサイルの脅威
 アメリカ議会の有力議員が日本に核武装を考え、論じることを促した。日本側で大きくは取り上げられはしなかったが、さまざまな意味で衝撃的な発言だった。アメリカ連邦議会の議員がなかば公開の場で、日本も核兵器を開発することを論議すべきだと、正面から提言したことは、それまで前例がなかった。
 この衝撃的な発言を直接に聞いたのは、2011年7月10日からワシントンを訪れた拉致関連の合同代表団だった。
p165~
 さて、この訪米団は、7月14日までアメリカ側のオバマ政権高官たちや、連邦議会の上下両院議員ら合計14人と面会し、新たな協力や連帯への誓約の言葉を得た。核武装発言はこの対米協議の過程で11日、下院外交委員会の有力メンバー、スティーブ・シャボット議員(共和党)から出たのだった。
p166~
 続いて、東祥三議員がアメリカが北朝鮮に圧力をかけることを要請し、後に拉致問題担当の国務大臣となる松原議員がオバマ政権が検討している北朝鮮への食糧援助を実行しないように求めた。
 シャボット議員も同調して、北朝鮮には融和の手を差し伸べても、こちらが望む行動はとらず、むしろこちらが強硬措置をとったときに、譲歩してくる、と述べた。
p167~
○日本の核武装が拉致を解決する
 そのうえでシャボット議員は、次のように発言した。
 「北朝鮮の核兵器開発は韓国、日本、台湾、アメリカのすべてにとって脅威なのだから、北朝鮮に対しては食糧も燃料も与えるべきではありません。圧力をかけることに私も賛成です」
 「私は日本に対し、なにをすべきだと述べる立場にはないが、北朝鮮に最大の圧力をかけられる国は中国であり、中国は日本をライバルとしてみています」
 「だから、もし日本が自国の核兵器プログラムの開発を真剣に考えているとなれば、中国は日本が核武装を止めることを条件に、北朝鮮に核兵器の開発を止めるよう圧力をかけるでしょう」
 肝心な部分はこれだけの短い発言ではあったが、その内容の核心はまさに日本への核武装の勧めなのである。北朝鮮の核兵器開発を停止させるために、日本も核兵器開発を真剣に考えるべきだ、というのである。
 そしてその勧めの背後には、北朝鮮が核開発を止めるほどの圧力を受ければ、当然、日本人拉致でも大きな譲歩をしてくるだろう、という示唆が明らかに存在する。
p168~
 つまりは北朝鮮に核兵器開発と日本人拉致と両方での譲歩を迫るために、日本も独自に核武装を考えよ、と奨励するのである。
 日本の核武装は中国が最も嫌がるから、中国は日本が核武装しそうになれば、北朝鮮に圧力をかけて、北の核武装を止めさせるだろう、という理窟だった。
* 古森 義久 Yoshihisa Komori
 産経新聞ワシントン駐在編集特別委員・論説委員。
 1963年慶應義塾大学経済学部卒業後、毎日新聞入社。
 72年から南ベトナムのサイゴン特派員。75年サイゴン支局長。76年ワシントン特派員。
 81年米国カーネギー財団国際平和研究所上級研究員。
 83年毎日新聞東京本社政治部編集委員。
 87年毎日新聞を退社して産経新聞に入社。ロンドン支局長、ワシントン支局長、中国総局長などを経て、2001年から現職。
 2010年より国際教養大学客員教授を兼務。
 『日中再考』『オバマ大統領と日本沈没』『アメリカはなぜ日本を助けるのか』『「中国の正体」を暴く』など著書多数。 
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