わが師、麻原彰晃への「訣別状」上祐史浩 事件から20年ですが麻原の死刑執行も未了であり…

2015-11-29 | オウム真理教事件

2015-03-20 18:38:00 『iRONNA編集部』
わが師、麻原彰晃への「訣別状」上祐史浩(「ひかりの輪」代表)
 この機会に、改めて、事件で被害に遭われた皆さまに、深くお詫びを申しあげます。取り返しのつかない被害の深刻さを思えば、お詫びの言葉も見つかりません。
 その中で、まずは2009年から、私が代表を務めるひかりの輪が締結した賠償契約のお支払いを今後とも履行していきたいと考えております。なお、3月18日にも、その一環として、賠償金の一部を振り込ませていただきました。
■地下鉄サリン20年「大きな変化の予感」
 数字を見れば事件から20年ですが、内実を見れば高橋克也被告の裁判が継続中で、まだ麻原の死刑執行も未了であり、一つの節目に過ぎないと感じています。
 今から3年前に、平田信・菊地直子・高橋克也といった逃亡犯がすべて収監されました。その結果、来月4月までに、最後のオウム裁判とされる高橋被告の裁判の一審が終わる予定です。そして、向こう数年のうちに麻原彰晃の死刑が執行されると思います。こうしたより大きな節目に対して、今年は、その始まりの年のように思います。
 また、オウム真理教は10年、20年単位で変化してきました。1985年にオウム真理教の前身団体「オウム神仙の会」が発足し、87年にオウム真理教が発足しました。95年にサリン事件が発生し、97年までに宗教法人としてのオウム真理教が破産し、2005年に後継団体である宗教団体「アレフ」(旧オウム真理教)の分裂が始まり、2007年には私と信徒65人がアレフから脱会し、「ひかりの輪」として独立しました。
 そして今年、事件から20年の年に、アレフの内部では、麻原の後継者の在り方を巡って、教団が再分裂していると言われています。この意味でも、遠くない麻原の死刑執行に向け、今年はより大きな変化の始まりと感じています。
■麻原の精神病理とカリスマ性
 私が麻原とその教義に関して、大きな疑問を持ち始めたのは、その終末予言が実現せず、麻原が不規則発言を始め、教団と連絡を取らなくなった1997年前後でした。その後、麻原への信仰は相対化していきましたが、様々な呪縛が残っており、完全に抜け出したのは、10年後の2007年(アレフを脱会した年)となりました。
 いま現在は、麻原は一言でいえば、誇大妄想・被害妄想を伴う精神病理的なカリスマだったと解釈しています。その精神病理は、幼少期の身体障害(弱視)、盲学校への不本意な入学と親への恨み、学業・事業・人間関係などでの相次ぐ挫折と深いコンプレックスの苦しみを背景としていたと思います。それが、その後にヨガの教師としてブレークした際に、「自分が不遇だったのは、自分が弾圧される救世主だからだ」という妄想として現れたのだと思います。
 再発防止の視点から、誤解を恐れずに、なるべく実態を率直にお伝えすれば、一党一派を率いる能力やカリスマ性を有しつつ、その一方で深い精神病理を抱え、一世風靡したと思えば、たちまち犯罪者や極悪人に転落するケースは、他にも事例が見られるそうであり、心理学上では「誇大自己症候群」などの人格障害と位置づけられるそうです。
 今後、再発防止の観点から、こうした人物の扱いには、よく注意すべきであり、こうした事実をなるべく社会全体に、次世代に伝えていきたいと思います。それは単に、若者が騙されないようにという意味だけでなく、麻原のような人間自体が育つことを予防したいという願いによるものです。
■ひかりの輪は宗教団体ではなく学習教室
 ひかりの輪は2007年にそれまでアレフにいた私と私の友人たちが、麻原・オウム信仰を払しょくして、アレフから脱会・独立して発足させた団体です。これは、何か特定の人物・神・経典などを絶対視して崇拝することはなく、宗教団体ではなくて思想哲学の学習教室です。
 学習の対象は、西洋の心理学もありますが、東洋思想、特に仏教の人生哲学・心理学が多いので、一言でわかりやすく言えば、仏教系哲学サークルと言えるかもしれません。以前のような集団居住の出家教団はすでに解消されており、学ぶ際に入会する必要もありません。その詳細は、ひかりの輪のHPにご報告しています。
 オウムは、自分たちを善、既存社会を悪とする善悪二元論に基づいて、暴力手段を正当化して狂信的・自滅的な末路に至りました。私たちは、このオウムの問題は、オウムに限らず、歴史上の多くの宗教・思想団体が繰り返してきたと考えていります。そして、その心理状態を予防するための必要な思想や実践(いわばオウム的なものへのワクチン)を自分たちの経験を活かして、提供したいと考えています。
 たとえば、宗教を盲信して呪縛される要因となる
1.現代社会の人々が抱えるコンプレックスや自尊心の渇き
2.死や死後・来世の恐怖
3.霊性・霊能力・陰謀説・終末予言などの盲信
といった問題に対して、宗教に依存せずに、それを乗り越える人生哲学・実践法を提供しています。
 そして、こうした私たちのあり方は、これまでに多くの識者やメディア関係者の理解を得てきたと考えていますが、公安当局は、私たちを依然としてアレフと同じ、麻原を信仰する団体と位置づけているという状況があります。
 これについて、私は過去の深刻な事件のイメージと、それによる国民の不安に対処するための当局の政治的な対応だと考えていますが、当然、事実に反するものです。とはいえ、仮に私が公安当局であったならば、同じように対処する可能性もあると思う面もあり、今後とも、落ち着いて社会の誤解を解く努力を継続したいと思います。
■麻原回帰するアレフ
 私たちが8年前にアレフを脱会して以来、アレフは麻原を絶対とする思想に回帰したといわれています。その中で、事件を知らない若者を中心として新しい仲間を増やすために、アレフであることを明かさない覆面ヨーガ教室などで勧誘を始め、死後の恐怖や、オウム事件は陰謀であるという嘘説を吹き込んだ上で、アレフと明かして入会させることを繰り返しています。
 これに対して、私たちは、専用のHPを立ち上げて、その実態・手口や、アレフ・オウム信仰の問題点・裏表、脱却方法などを紹介するとともに、個人相談に応じています。これまでに100人以上の方の脱会をお手伝いしましたが、残念ながら、アレフに入る人の方が多く、今後とも、報道機関と協力しながら、今後とも努力したいと思います。
 しかし、教祖や主力幹部が去ったアレフに、多くの若者が入会する事実は、社会側にも弱み、すなわち、アレフの信者が増やえる基本的な土壌があると言わざるを得ないのではないでしょうか。繰り返しになりますが、コンプレックス・自尊心の悩み、死・死後の世界の不安・恐怖、さらには、霊能力・終末予言・陰謀説に関する多くのメディア情報が広がっています。
 よって、こうした問題の解決は、アレフに限らない、カルト問題全体の枠組みの中で、社会全体として、いっそうの取り組みが必要かと思います。
 また、アレフに関しては、被害者団体との法的なトラブルがあり、今現在、東京地裁で調停が行われています。それは、アレフ側の賠償契約の不履行(および賠償契約更改の拒絶)や、今は被害者団体の財産となったオウム真理教著作物をアレフが無断使用している(著作権侵害)という疑いです。
 そして、これらの法的な問題は、今後のアレフに大きな影響を与えると思われますが、この解決に関しても、過去の経験を活かして、なるべく協力させていただきたいと考えています。
<筆者プロフィール>
じょうゆう ふみひろ 1962年福岡県出身。78年に早稲田大学高等学院入学、87年早稲田大学大学院理工学研究科修士課程卒業。宇宙開発事業団(現宇宙航空研究開発構)入団。87年5月同事業団を退社、オウム真理教に出家。94年オウム真理教のロシア現地法人設立、同代表に就任。95年10月偽証罪で逮捕・起訴、有罪判決(懲役3年)を受け広島刑務所に服役。99年12月出所し、オウム真理教に復帰。2000年2月オウム真理教を「アレフ」に改名。02年1月アレフの代表に就任。04年11月アレフ内で、改革を目指す代表派を形成。07年3月麻原・オウム信仰を捨て、アレフを脱会。07年5月 新しい智恵の学びの場を目指し、「ひかりの輪」を設立、その代表に就任、現在に至る。

 ◎上記事は[IRONNA]からの転載・引用です
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