ストレス障害の元裁判員提訴=福島の女性「裁判員制度が苦役からの自由を定めた憲法18条などに違反する」

2013-05-08 | 裁判員裁判/被害者参加/強制起訴

ストレス障害の元裁判員提訴=福島の女性、国賠請求―仙台地裁
2013.05.07 14:30:19 時事通信
 強盗殺人事件の裁判員裁判で被害者の遺体写真などの証拠を見て「急性ストレス障害(ASD)」になったのは、国民に罰則付きで裁判員になることを求めた裁判員法が原因として、事件で裁判員を務めた福島県在住の60代女性が7日、国に慰謝料など200万円を求める国家賠償訴訟を仙台地裁に起こした。
  女性の代理人は、裁判員制度が苦役からの自由を定めた憲法18条などに違反するなどとしている。裁判員経験者が、裁判員制度の是非を問う訴訟を起こすのは全国初とみられる。
  女性が裁判員を務めたのは、福島地裁郡山支部で3月に開かれた夫妻殺害事件の裁判。判決は死刑だった。
  原告側弁護士などによると、女性は審理で現場の遺体や傷口のカラー画像などの証拠を見たほか、妻が119番中にうめき声を上げる録音テープを聞くなどした。この後、女性は吐き気や不眠症に悩み、判決後の同月下旬に病院でASDと診断された。
  原告側は、裁判員法は国民に罰則付きで裁判員選任手続きに出頭するよう求め、非常勤の特別職公務員になることを強制しており、苦役からの自由、個人の尊厳や職業選択の自由を保障する憲法に違反すると主張。国会には同法制定に当たり、十分審議を尽くさなかった過失があり、国に賠償責任があるとしている。 
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『文藝春秋』2007年11月号【裁判員制度のウソ、ムリ、拙速】大久保太郎(元東京高裁部統括判事)
(抜粋)
*「国民の自由」にも反する
 欧米諸国の陪審員制も参審制も、それぞれ固有の理由があって幾世紀も前から存在しているものだ。しかし現代のわが国は国民各自がそれぞれ自己の生活目的をもって忙しく活動している社会である。このような時代に突然「国民参加はいいことだ」として、上からお仕着せ的に国民に裁判員制度のような厳しい義務づけを伴う制度を押し付けることは、憲法の自由権、財産権の保障と衝突する。
*自由権、財産権の侵害
 憲法13条は「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と定め、同18条後段は「犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない」と定め、同19条は「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」と定め、さらに同29条1項は「財産権は、これを侵してはならない」と定めている(このうち「良心の自由」については、政府は立案段階で指摘を受け、これに違反しないよう政令で辞退事由を設けることを約束している)。
 ところが裁判員法によると、くじにより裁判員候補者とされた者は、具体的な事件ごとに行われるくじに当たって裁判所から呼出しを受けたときは、自分の仕事や予定を放り出してでも、裁判員選任期日に出頭しなければならない。
 裁判員または補充裁判員(裁判員欠席の場合に代わって裁判員となる)に選任されると、これまた自分の仕事や予定を犠牲にして公判期日(一回ですむものは少なく、数回、時には数十回に及び、期間も数日から数ヵ月にもなるだろう)に出頭しなければならない。しかも公判の全審理に立ち会い(一日も一刻も欠席はできない)、審理が終われば、裁判員は評議の席で自分の意見を述べ、判決宣告期日にも出頭しなければならない(その他の義務は省略する)。
 もっとも裁判員法は若干の辞退事由を定めているが、事由はごく限定的で、しかも事由のあることを裁判官に認めてもらわなければならないから、電話で済まない場合は、半日か1日をつぶして裁判所に出かける必要がある。厄介なことなのだ。
 憲法に根拠もないのに突如裁判への参加は公共の福祉だとして、国民にその意思に反して以上のような被害(雇用主の財産的被害を含む)を及ぼす法律を作ることは、国民の自由権、幸福追求権は立法その他の国政の上で最大の尊重が必要だとする前記憲法13条に違反し、また前記憲法18条の苦役強制の禁止、同29条の財産権の不可侵に違反することが明らかである。
 このような状況では、国民が裁判所から裁判員法に基づくもろもろの強制に服しなくても制裁を受ける理由はないといわなければならない(実際上も裁判所は「違反者」に過料を課すことはできないだろう)。
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死刑判決言い渡しの裁判員がストレス障害 「脳裏に殺害現場写真」 福島地裁郡山支部 2013-04-18 | 被害者参加/裁判員裁判 
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