エルサレム首都認定--背景にキリスト教福音派 エルサレム問題--地位変更は無効--国連総会で決議を採択 2017/12/22

2017-12-22 | 国際

エルサレム問題 地位変更は無効 国連総会で決議を採択
NHK NEWS WEB 2017/12月22日 11時41分 エルサレム問題
 アメリカのトランプ大統領が中東のエルサレムをイスラエルの首都と認めたことを受けて、国連総会で緊急の会合が開かれ、エルサレムの地位の変更は無効だとする決議が賛成多数で採択され、アメリカの決定に対する国際社会の反発と懸念が改めて示されました。
 トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認めると宣言したことを受けて、国連総会では21日、パレスチナの要請を受けて緊急の特別会合が開かれ、トルコとイエメンが共同で提出したエルサレムの地位の変更は無効で撤回されるべきだとする決議案の採決が行われました。
 採決に先立ち、パレスチナ暫定自治政府のマリキ外相が「トランプ大統領の決定はパレスチナ人が持つ権利を侵害している」と述べ、決議への支持を求めたのに対し、アメリカのヘイリー国連大使は「アメリカに敬意を払わない国を私たちは忘れないだろう」と述べ、各国に対し決議に賛成しないようくぎを刺しました。
 しかし、採決の結果、日本を含む128か国が賛成、アメリカやイスラエルなど9か国が反対、カナダやオーストラリアなど35か国が棄権して、決議は賛成多数で採択され、その瞬間、議場からは大きな拍手が起こりました。
 国連総会の決議に拘束力はありませんが、アメリカの圧力にもかかわらず、国連加盟国のおよそ3分の2が賛成して決議が採択されたことで、エルサレムをめぐるアメリカの決定への国際社会の懸念や反発が示された形となりました。
*パレスチナ 「決議を歓迎」
 パレスチナ暫定自治政府のアッバス議長の報道官は、国連総会がエルサレムの地位の変更は無効だとする決議を賛成多数で採択したことを受けて声明を出し、「決議の採択は、パレスチナが国際社会の支持を得られていることを改めて示してくれた」と歓迎しました。
 また、「決議の採択は、誰がどんな決定をしてもエルサレムの地位を変更することはできず、エルサレムは国際法上、占領状態にあることが再確認された」として、アメリカがエルサレムをイスラエルの首都と認定したことは無効だと主張しました。
 さらに、採決に先立ち、アメリカが決議に賛成する国への財政支援を打ち切る構えを示していたことを念頭に、「国際社会はパレスチナ人の側にあり、脅しには屈しないことを示してくれた」として、決議に賛成した国々に感謝の意を表しました。
*イスラエル「決議を拒否」
 国連総会がエルサレムの地位の変更は無効だとする決議を賛成多数で採択したことを受けて、イスラエルのネタニヤフ首相はビデオ声明を出し、「イスラエルは、このばかげた決議を絶対に拒否する。エルサレムはイスラエルの首都であり、これまでも、これからもそうあり続ける」と述べ、抗議する姿勢を鮮明にしました。
 一方で、35か国が投票を棄権したことに触れ、「多くの国がこの茶番を拒否したことに感謝したい」と述べました。
 さらに、採決に先立ち、決議に賛成する国への財政支援を打ち切る構えを示し、圧力をかけたアメリカに対しては、「ヘイリー国連大使とトランプ大統領は、イスラエルを守るために勇敢な姿勢を示してくれた」として、重ねて感謝しました。
*トルコ外相「非常に満足」
 決議案が採択されたあと、トルコとパレスチナ暫定自治政府の外相はそろってメディアのインタビューに応じました。
 この中で、トルコのチャウシュオール外相は「エルサレムをイスラエルの首都とするアメリカの決定が国連総会において実際に否定された。アメリカからの圧力や脅迫、中傷にもかかわらず決議が採択されて非常に満足している。きょうをもって、パレスチナの人たちの権利を守る活動を強めることができる」と述べました。
 また、パレスチナ暫定自治政府のマリキ外相は、決議の採択について「パレスチナとアラブ、イスラム教徒、そして、世界にとって大きな勝利だ。エルサレムはパレスチナの首都であり、将来にわたっても首都であり続ける。今後、中東和平について、国際社会が責任を持って仲介を行うことを期待している」と述べ、意義を強調しました。
*決議案めぐり 激しい応酬
 今回の決議案をめぐって、国連総会の議場では20以上の国と地域の代表が演説し、賛成と反対の立場から激しい応酬を繰り広げました。
 演説のほとんどは決議案に賛成しエルサレムの地位の変更は無効だとするもので、決議案を提案したトルコのチャウシュオール外相は「トランプ大統領の決定は国際法に反し、国際社会に対するとんでもない攻撃だ。さらに、決議案に賛成すれば援助を打ち切ると脅迫する態度は到底受け入れられない。票や国々の尊厳を金で買うようなやり方は倫理的に許されない」と強く非難しました。
 また、パレスチナ暫定自治政府のマリキ外相も「トランプ大統領の決定は、パレスチナ人が持つ権利を侵害している。われわれと国際社会の警告を無視するもので、中東和平の仲介役を務めてきたアメリカの地位にも影響を及ぼすだろう」と述べ、今後の和平交渉への影響も避けられないと主張しました。
 これに対して、アメリカとイスラエルは、決議案に反対する立場から演説しました。
 このうち、アメリカのヘイリー国連大使は、アメリカが国連に対する最大の拠出国であると強調したうえで、「決議案に賛成の国々が、今後、アメリカの援助や影響力の行使を求めるたびに、われわれはきょう攻撃を受けたことを思い出すだろう」と述べ、決議案に賛成した国々への支援の打ち切りも辞さない姿勢をちらつかせました。
 また、イスラエルのダノン国連大使は、紀元前に発行された硬貨を見せながら、エルサレムは歴史上ユダヤ人にとって重要な場所であり続けてきたと主張し、「アメリカはエルサレムがイスラエルの首都であるという事実を述べただけだ。決議案は破壊をもたらし、パレスチナによる和平の妨害が続くことになる」などと強く反発しました。
 演説を終えたアメリカとイスラエルの国連大使は、採決を待たずに議場から退席し、決議に抗議する姿勢を示しました。
*菅官房長官「日本 当事者間で解決すべきとの立場」
 菅官房長官は閣議のあとの記者会見で「わが国はイスラエル・パレスチナ間の紛争の2国家解決を支持している。エルサレムの最終的地位の問題も含め、これまで採択されてきた関連する安保理決議や、当事者間の合意に基づいて、当事者間の交渉によって解決すべきという立場だ。こうした立場をふまえて決議案に賛成した」と述べました。

 ◎上記事は[NHK NEWS WEB]からの転載・引用です
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〈来栖の独白 2017.12.22 Fri〉
>当事者間の合意に基づいて、当事者間の交渉によって解決すべき
 所詮、当事者から遠く離れているという認識の人の言うこと。意味が無い。イスラエルと米は「特別な関係」。
 イスラエルとアラブ諸国の問題は、旧約聖書という(放浪やホロコーストからユダヤを2千年以上にわたって支えてきた)書物の概念があるので、決定的な解決策は、ない。トランプ氏は、ここに手を突っ込んだ。
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2017年12月21日(木) PM9~ NHK BS 国際報道
エルサレム首都認定 背景にキリスト教福音派が 

  

 アメリカ トランプ大統領「エルサレムをイスラエルの首都と認める。」
 トランプ大統領の決定から2週間。現地では連日デモ隊とイスラエル軍の衝突が続き、多数の死傷者が出ています。なぜ、トランプ大統領は今回の判断に踏み切ったのか。
 重要な要因の1つとして注目されているのが、アメリカで最大の宗教勢力とも呼ばれる「キリスト教福音派」の存在です。
 アメリカ 福音派団体 副代表「多くの(アメリカの)福音派の指導者たちが、トランプ大統領に直接働きかけたのです。」
 アメリカの福音派は、トランプ政権にどのような影響を与えているのか。その実態に迫ります。
■エルサレム問題 米キリスト教 福音派の実態
増井「20日、パレスチナ暫定自治区では抗議デモが行われ、イスラエル軍との衝突で100人余りがけがをしました。22日には、イスラム教の金曜日の集団礼拝に合わせて再び抗議デモが呼びかけられ、衝突がさらに続くことも懸念されています。」
花澤「こうした大きな反発も予想された中で行われたトランプ大統領の決断。その背景の1つには、国内のキリスト教福音派の支持をつなぎとめたいというねらいがあったとみられています。」
松岡「アメリカのキリスト教福音派は、聖書の言葉を厳格に守ることを教えの柱としています。イスラエルに関する記述では、その聖書には次のように書かれています。“主はアブラムと契約を結び、こう言った。『この地をあなたの子孫に与える』”。 福音派はこの記述を“神がイスラエルの地を、アブラムの子孫、つまりユダヤ人に与えた”と解釈。さらに聖書に“主の足は、エルサレム東のオリーブ山の上に立つ”との記述もあり、復活したキリストが、エルサレムに現れると考えています。そのため福音派の一部は、エルサレムをユダヤ人の国家イスラエルが統治していることを重要だと考えているのです。」
 ワシントンにある、キリスト教福音派が通う教会です。日曜の礼拝の参加者からは、トランプ大統領の発言を支持する声が相次ぎました。
 「トランプ大統領が公約を守り、決断したことにとても感謝してます。」
 「承認するかどうかはアメリカが決めることです。本当はとっくの昔にやるべきだったんです。」
 アメリカ国民のおよそ3割を占める「福音派」。大統領選挙で、トランプ氏が勝利した背景の1つには福音派の支持をとりつけたことがあるとの見方もあります。
 福音派は、政権内にも影響力を広げています。ペンス副大統領も敬けんな福音派で、エルサレムを首都と認めるべきだと主張したといわれています。
■リポート:
*澤畑剛支局長(エルサレム支局)
 争点となっている聖地エルサレム。アメリカの福音派の中でも一部の強硬なグループが、イスラエルとの結びつきを深めています。
*澤畑剛支局長(エルサレム支局)
 「福音派は、ここエルサレムにも事務所を構えています。」
 アメリカの福音派を中心とするこの団体は、エルサレムはイスラエルの首都だと主張するため、団体名にあえて「大使館」と名付けています。
*この団体の副代表、デビッド・パーソンズさん。
 90年代前半、団体のロビイストとしてアメリカの大使館をエルサレムに移すよう、アメリカ議会に働きかけてきました。その後、パーソンズさんはエルサレムに移り、イスラエルの要人と緊密な関係を築いてきました。信仰に従って、イスラエルとアメリカの橋渡しをするためです。

   

*福音派の団体 副代表 デビッド・パーソンズさん
「私たちは神がユダヤ人を愛していると気付いたのです。神はユダヤ人を約束の地に戻したのです。聖書に書かれていることを守らなければならず、神の教えに逆らうわけにはいきません。」
 文化交流や観光を通じて、イスラエルとアメリカの関係強化を図るグループもあります。
 代表のマイケル・エバンスさんです。エバンスさんが、2年前にエルサレムに建てた博物館です。

   

 アメリカから訪れる福音派の観光客や地元イスラエルの人々に、福音派がイスラエルを支援することの正当性をアピール。
 エバンスさんは、イスラエルがエルサレムの支配を強めることが神の教えに沿ったものであり、支援すべきだと主張します。
*マイケル・エバンスさん
「エルサレムはユダヤ人国家の首都です。首都を分割するなどありえません。ここは(ユダヤ教の預言者)アブラハムに始まるイスラエルの歴史が刻まれた土地なのですから。」
 さらに福音派の中には、独自のテレビ局を運営し、エルサレムに支局を置いているところもあります。
 放送では、今回のトランプ大統領の決定を歴史的な瞬間だと伝えています。“イスラエル指導者は(決定を)賞賛し、福音派の指導者は、歴史的であり神の教えに沿った決定だとたたえている。”
 さらに、歴史番組も数多く制作。古代の歴史にさかのぼり、現在のイスラエルの占領政策を正当化するねらいがあるとみられます。“エルサレムの街の名前は、イスラム教の聖典コーランには一度も出てきませんが、一方で、ユダヤ教の聖書には600回以上も出てきます。”
*福音派テレビ局 エルサレム支局 ミッチェル支局長
 「私たちはほかのテレビ局より、福音派の視聴者から厚い信頼を得ていると思います。きちんと聖書の教えに沿った報道をしているからです。」
*長年、イスラエルとの関係強化に取り組んできた福音派団体のパーソンズさん。
 こうしたさまざまな活動が、今回のトランプ大統領の判断につながったと受け止めています。
*福音派の団体 副代表 デビッド・パーソンズさん
「多くの福音派の指導者たちが、トランプ大統領に大使館の移設を直接働きかけました。 大統領の決定に感謝します。」
■パレスチナ情勢への影響は
*花澤
 「ここからは、エルサレム支局の澤畑支局長と、ワシントン支局の西河記者に聞きます。まずエルサレムの澤畑さん、福音派の影響も受けて行われているトランプ政権の中東政策ですが、今後パレスチナ情勢にはどんな影響を及ぼしていくのでしょうか?」
*澤畑支局長
 「一部の強硬な福音派は、イスラエルの極右勢力と同じくらい過激な主張をしています。両者は、イスラエルの極右勢力への資金援助や、ユダヤ人入植地への視察を通じて結びつきを深めているとされます。アメリカとイスラエルにまたがる勢力の間からは、『次はイスラム教の聖地の上に新しいユダヤ教の神殿を築くぞ』といった、より過激な主張も聞こえてきます。イスラエルのネタニヤフ首相は、かつて『福音派はイスラエルの最良の友人だ』と発言しています。トランプ政権の一方的な中東政策で、イスラエルが占領や入植地政策を強化し、パレスチナ人の苦境がさらに深まることが懸念されます。」
■パレスチナの反応は
*増井
 「連日の衝突で死傷者が増える一方ですが、パレスチナの政治指導者はどう対応するのでしょうか?」
*澤畑支局長
 「アッバス議長は、今日(21日)からフランスを訪れてマクロン大統領と会談する予定で中国とロシアにも側近を派遣しました。アッバス議長は、アメリカ抜きの和平交渉の枠組み作りを目指して糸口をつかみたい考えです。ただ、現実的にはイスラエルに影響力を持つアメリカの仲介を抜きにして交渉の進展は期待できず、手詰まり感は否めない状況です。」
■アメリカ国内の受け止めは
*増井
 「続いてワシントン支局の西河記者に聞きます。アメリカでは今回のトランプ大統領の判断について、どのように受け止められているのでしょうか?」
*西河篤俊記者(ワシントン支局)
 「トランプ大統領の判断はアメリカ国内でも賛否が分かれていますが、アメリカと国際社会の間では、受け止めに温度差があると感じます。この問題についてのアメリカメディアの伝えぶりは、ヨーロッパなどのメディアと比べると報道が少ないように見えます。
 論調も、日頃のトランプ大統領への厳しい批判を考えると、今回は抑え気味という印象も受けます。エルサレムをイスラエルの首都と認めることへの抵抗感は、ほかの国際社会と比べると、アメリカではそれほど強くないのではと感じます。」
■トランプ政権 今後の影響は
*花澤
 「今回の問題は、トランプ政権の今後にどう影響するとみていますか?」
*西河記者
 「今回の判断は来年(2018年)の中間選挙を見据えた国内の支持者向けのアピールといえます。トランプ大統領のねらいの1つは、福音派、中でも白人の福音派の支持離れを避けたいというものです。去年(2016年)の大統領選挙では、白人の福音派のうち、トランプ大統領に投票したのは8割を超えたといわれています。専門家は、今回の判断は、こうした特定の支持層を意識したメッセージだと分析しています。」
*ジョージ・メイソン大学 マーク・ロゼル教授
 「多くのアメリカ人は、今までエルサレムが首都でないことを知らなかった。トランプ大統領のねらいが福音派の保守層や親イスラエルの人々の支持固めなら、まさにねらいどおりだ。」
*西河記者
 「ただ、福音派を対象にした世論調査では、大使館の移転に反対する意見も40%ありました。これは、地域の緊張の高まりへの懸念があるのだと思います。仮に中東情勢がさらに不安定化し、イスラエルの安全保障が脅かされるような事態になれば、福音派の支持が離れる可能性もあり、情勢を注視していく必要があると思います。」
*増井
 「このエルサレムの問題、21日には国連総会の緊急会合で、エルサレムの地位の変更は無効だとする決議案が採択される見通しです。トランプ大統領は、こうした国際世論を分かった上で判断をしたということなんですね。」
*花澤
 「それは『福音派』と『ユダヤ社会』、この2つからの支持が重要だったということがあります。その背景にあるのは、来年11月の中間選挙です。これをにらんで『支持層を固める』ことが、カギを握る重要なものになっているんです。」
*増井
 「これが今のアメリカ議会の民主党と共和党の勢力図ですね。上院では差はわずか、下院では40以上の差で共和党の方が議席が多いと。」

     

*花澤
 「中間選挙は下院の全部と上院の3分の1、来年は34議席が争われます。このうち今もギリギリ多数となっている上院が焦点ですが、34議席のうち、今、民主党が26議席、共和党が8議席を占めているんです。」
*増井
 「すごく偏っていますね。改選議席の中では民主党が圧倒的に多いんですね。」
*花澤
 「そこがポイントです。そしてこの民主党の26の中には、大統領選挙ではトランプ大統領が勝った州が10もあり、そもそも共和党が強い州が4つあります。もちろん、そのまま反映はされませんが、去年投票してくれた支持層をがっちりと抑えれば、少なくとも多数党は維持できるんじゃないかという計算がトランプ大統領にはあるんです。」
*増井
 「トランプ大統領とっては有利な条件での選挙になるんですね。」
*花澤
 「ですから、『エルサレムを首都と宣言』『パリ協定脱退』『税制改革による大幅な減税』。難しそうに見える公約を強引に実行する姿勢を見せることで、失望させない、支持を守るという戦略なんです。国内政治を色濃くうかがわせるエルサレムをめぐる決断。国際社会の批判をかわすには、今後、混乱を鎮め、自らが主張するように中東和平を前進させることが求められています。」

 ◎上記事は[NHK 国際報道2017]からの転載・引用です
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