【歴史戦 第6部「主戦場」米国】 中国が正面に 狙いは「日米離反」 終わらない「慰安婦」糾弾

2014-09-03 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

【歴史戦 第6部「主戦場」米国】サンフランシスコ市に新たな慰安婦像計画 中国系が準備委設置
 産経ニュース 2014.8.30 08:57
 【ロサンゼルス=中村将】米カリフォルニア州サンフランシスコ市で中国系住民らが慰安婦像の設置計画を始動したことが29日までに、明らかになった。すでに準備委員会を設立し、公共スペースでの設置を目指している。これまで米国内の慰安婦像や碑は韓国系が推進しており、計画が実現すれば中国系による初の設置となる。米国における慰安婦問題で中韓連携が一層強化される恐れもある。
 関係者によると、中国系の準備委が像の設置場所として選んだのは観光名所の一つ、チャイナタウン(中華街)の中心にある「ポーツマス広場」。市が進める広場の再開発事業に合わせて像を設置しようとしている。
 像のデザインは慰安婦を連想させる女性の胸像で、その下に「日本軍によって強制的に性奴隷にさせられた数十万人のアジア女性の痛みを忘れない」との趣旨の碑も設置するという。
 市は12月まで広場のデザインなどの再開発案を一般から募集。準備委は署名を集めた上で、市側に像設置の計画案を提出する。準備委は中国系のエド・リー市長にも直接、像設置の計画案を送付するとしている。
 中国メディアによると、準備委関係者は「韓国系団体とも連携を取り、支持を求めていく」としている。関係者によれば、同州を拠点に反日宣伝活動を行う中国系団体「世界抗日戦争史実維護連合会(抗日連合会)」が準備委を支援しており、中国系のサンフランシスコ市議も像設置案への支持を表明している。

【歴史戦 第6部「主戦場」米国(1)前半】サンフランシスコに反日拠点の衝撃、中華街舞台に記念館9月オープン
 産経ニュース 2014.8.30 11:26
 米国で最も古く、最大規模を誇るサンフランシスコの中華街。屋台が歩道を埋め尽くし、所狭しと並ぶ中華料理店や土産物店から中国語でかけ声があがる。米国でありながら、そこは異国。その一角にある「ポーツマス広場」。中国系住民は慰安婦像を設置する場所として、この広場に目をつけた。
 1848年には米国人男性がここで「金をみつけたぞ」と叫び、ゴールドラッシュが始まった、という記録も残っている。1980年代後半にサンフランシスコ市が手を入れて以降、未整備のため殺風景な感じがただよう。
■人気高い観光名所
 「再開発で見違えるようになれば、観光客も頻繁に出入りするだろう。慰安婦像があれば、『これは何』と立ち止まる。市長が中国系米国人ということもあり、市当局も中華街人脈の意見を無視するわけにはいかないかもしれない」。サンフランシスコ近郊に住む日本人はそう話す。
 米西海岸でも人気のサンフランシスコの観光名所に慰安婦像が設置されれば、その衝撃は韓国系団体の強い意向で像が設置された同州グレンデール市の比ではない。
 一般からの再開発案を受け付ける市関係者は「年末までに集まった案について、パブリックミーティングを開き、広く意見を聞いてみたい」とし、決定までにはまだ時間を要すると説明するが、慰安婦像を設置しようとする中国系の声は署名などを通じて急速に広がることが懸念される。
■抗日戦争記念館も
 「ポーツマス広場」から中華街を歩くこと5分。中華料理店などが並ぶ路地にベージュの2階建ての建物が見えた。この建物は間もなく改修工事が行われ、日中戦争での対日抗戦を顕彰する「海外抗日戦争記念館」が戦後70年となる来年9月にオープンする。
 「戦時中の日本軍の残虐行為を示す歴史的な写真と記録を公開、展示していく」という触れ込みの記念館だが、中国系が所有する土地・建物に日本側が抗議するわけにもいかない。中華街を舞台にした反日拠点構想が着々と進んでいる。
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 慰安婦問題は今や米国が主戦場になっている。この問題を長く追及していたワシントン駐在客員特派員、古森義久と、カリフォルニア州などでの動きを追っているロサンゼルス支局長、中村将が報告する。

【歴史戦 第6部 「主戦場」米国(1)後半】朝日訂正も無視、首都で「強制連行」宣伝 中韓連携で同時多発的設置の恐れ
 産経ニュース 2014.8.30 15:30
 海外初の「抗日戦争記念館」の設置は、盧溝橋事件(1937年)から77年に当たる今年7月7日のレセプションで発表された。
 館長に就任する米カリフォルニア州在住の女性実業家、フローレンス・ファン(中国名・方李邦琴)と、中国の駐サンフランシスコ総領事、袁南生、反日団体「世界抗日戦争史実維護連合会」(抗日連合会)のイグナシアス・ディン(丁元)らは手を握り合った。
 ファンは記念館設置の目的について「日本に対する中国と米国の同盟の歴史を人々に思いださせるためだ。中国は日本の侵略者と一対一で戦ったのではなく、米国の友人とともに戦った」と語り、米国社会で“反日”の浸透を図っていく姿勢を示した。
■地元老舗紙を買収
 関係者によると、ファンは35年、中国河南省生まれ。国共内戦によって49年に台湾に逃れ、60年に米国に移住した。幅広い事業で成功し、2000年には地元老舗紙「サンフランシスコ・エグザミナー」の買収で一躍有名になった。
 カリフォルニア大バークレー校や北京大学に日本円で数億円単位の寄付をしてきたことでも知られ、前国務長官ヒラリー・クリントンら民主党の大物との親交もあるとされる。ファンは今年1月以降、中国を3度訪れ、北京市郊外にある盧溝橋近くの「中国人民抗日戦争記念館」や、江蘇省南京市の「南京大虐殺記念館」を訪れた。
 ディンが率いる抗日連合会は、中華街を舞台にした反日拠点化に水面下で大きな役割を果たしている。
 中国系と韓国系を結びつける存在でもある。同州グレンデール市の慰安婦像をめぐっても、在米日本人らが撤去を求める訴訟を起こすと、抗日連合会は「提訴不当」を訴える意見書を裁判所に提出。韓国系の要望を受けて像を設置した市を擁護した。提訴が棄却されるとディンは喜々として語った。
 「慰安婦像や碑は今後もたくさんできるだろう」
 同州での慰安婦像や碑の設置に反対する在米日本人は危機感を募らせる。
 「同時多発的に像や碑が設置され始めた。すべての街の情報をわれわれが細かく把握することは不可能だ。後手後手どころか、対応が追いつかなくなる」
■朝日の訂正無視
 慰安婦問題は地方にとどまらない。首都ワシントンでも8月中旬、大手研究機関で日韓の歴史問題を論じるシンポジウムが相次いで開かれた。
 慰安婦問題をめぐり、朝日新聞が朝鮮半島での「強制連行」の報道を撤回してから2週間が過ぎた8月19日、「ヘリテージ財団」が開いた「歴史が北東アジアの将来の前進を阻む」と題するシンポジウムで、基調演説者の駐米韓国大使、安豪栄(アン・ホヨン)は、日韓関係の悪化の原因は「日本側指導者の慰安婦問題など過去の事実の否定」だと述べた。
 安は記者(古森)の朝日の「強制連行」報道撤回に関する質問にも「強制連行の証拠は多数ある。(平成5年の官房長官、河野洋平による)河野談話自体も強制を認めている」と答え、朝日の訂正を無視した。
 在米韓国人学者でタフツ大学教授の李晟允(イ・ソンユン)も慰安婦問題での日本の動きを非難し「日本軍の強制連行」を前提とする「性的奴隷」との言葉を繰り返した。
 ヘリテージ財団の上級研究員であるブルース・クリングナーやウォルター・ローマンらからも「日本軍による女性の強制連行は事実」という趣旨の主張が出て、米韓による「強制連行」糾弾の合唱となった。
 ワシントンのもう一つの大手研究機関「戦略国際問題研究所(CSIS)」でも8月13日、「米韓日3国関係」と題するシンポジウムが開かれた。基調演説者の元韓国国会外交通商統一委員長、朴振(パク・ジン)は日本の歴史認識を非難し、とくに慰安婦問題での河野談話検証などを日韓関係の正常化を阻む要因として批判した。
 朴は慰安婦問題について「日本軍による強制連行」だと強調し、安倍晋三政権にその受け入れを求めた。
 朝日による記事訂正後の米国での2つの討論集会では、日本側代表の発言は皆無だった。ヘリテージ財団では、参加者から「日本の駐米大使はなぜいないのか」との質問が出たほどで、議論は韓国側の日本非難ばかりが目立った。(敬称略)
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【歴史戦 第6部 「主戦場」米国(2)】朝日報道後に米国でも火が付いた慰安婦問題
 産経ニュース 2014.8.31 14:15
 慰安婦問題など歴史認識での日本に対する韓国や中国からの不当な非難の主舞台はいまや米国に移った。超大国、そして同盟国である米国での動きは日本にとって特別の重みを持つ。米国内で勢いを増す日本糾弾はどう始まり、拡大してきたのか。その軌跡をたどることは日本側の今後の対策への有力な指針となろう。
「慰安婦連合」を組織
 米国内で慰安婦問題を公開の場で最初に提起したのは「ワシントン慰安婦問題連合」(慰安婦連合)という組織だった。活動家タイプの少数の在米韓国人らが主体となり、1992年12月に創設された。
 この年は慰安婦問題で大きな動きがあった。朝日新聞による「強制連行」報道で火が付き、官房長官、加藤紘一が「従軍慰安婦として筆舌に尽くしがたい辛苦をなめられた方々に衷心よりおわびの気持ちと反省の気持ち」を表明する談話を発表。首相、宮沢喜一は同年1月に訪韓した際、8回にわたり謝罪した。
 慰安婦連合は日本国内での盛り上がりに連動するように、活動目標に「日本政府に慰安婦に対する犯罪への責任を取らせ、公式の謝罪と賠償を求める」ことを掲げた。そのために当面は「日本の犯罪についての一般への教育を広める」と宣言した。活動の大前提も「日本軍が朝鮮半島などの女性を組織的に強制連行して、約20万人の性的奴隷にし、虐待した」という主張だった。
議員の陰に韓国女性
 慰安婦連合は議会や教育機関へのアプローチを着実に広げていった。このプロセスに深く関わったのが当時の米下院議員のレイン・エバンズ(民主党・イリノイ州選出)だ。
 エバンズは同連合の会長となったワシントン近郊にある大学の教授、徐玉子(ソ・オクジャ)と交際。2人は公の場にもパートナーとして頻繁に顔を出した。ホワイトハウスでの夕食会にも招かれ、あでやかな民族衣装チマチョゴリ姿の徐とタキシード姿のエバンズが、当時のクリントン大統領夫妻とともに親しげに並んだ写真は同連合の活動にも利用された。
 リベラル派とはいえエバンズは過去の戦争にも韓国にも特に関係はなかったが、徐らの意向を反映する形で93年11月、連邦議員24人から当時の首相、細川護煕に「日本軍の性的奴隷の詳しい調査」を要求する主唱者の一人となった。その後、エバンズらは日本政府に慰安婦への謝罪を要求する活動を米議会で強めていく。
中韓の組織連携で反日拡大
 韓国系を中心とする「ワシントン慰安婦問題連合」(慰安婦連合)は発足後2年余こそ静かだったがその後、中国系団体の協力を得て、勢いを増し、反日の活動を広げる。中国系団体とは、1994年にカリフォルニア州で創設された「世界抗日戦争史実維護連合会」(抗日連合会)である。表向きには中国系米国人らにより組織され、同州クパチーノ市に本部を置いた。
河野談話追い風に
 設立の前年、日本では官房長官、河野洋平の談話が発表された。慰安婦募集の強制性を認めた河野談話は、米国内で「性的奴隷」攻撃を始めた韓国、中国の組織を勢いづけた。「強制連行は日本政府も認めたではないか」という主張だ。その基になったのは、朝日新聞の一連の「強制連行」報道だった。
 抗日連合会はその使命として「日本に戦争での犯罪と残虐行為を率直かつ明白に謝罪させ、公正な賠償をさせる」ことをうたった。具体的には「南京大虐殺、米兵捕虜虐待、731細菌部隊、性的奴隷」などを糾弾するとした。日本の戦犯裁判や講和条約、戦時賠償など戦後の処理や清算を一切、認めないのだから「反日団体」と呼ぶほかない。
 慰安婦連合は河野談話を追い風に一気に攻勢を強めた。95年から真偽の不確実な慰安婦たちの映像や資料を公開する「慰安婦展」を首都ワシントンの教会や、ジョージタウン大学の構内で開くようになった。ワシントンやペンシルベニア州最大都市のフィラデルフィアの公立図書館、さらには連邦議会の下院議員会館のロビーでも開催した。
 在米日本人や留学生から反対の声も出たが、「日本政府も河野談話で非を認めた残虐行為への批判だ」という主張に圧せられた。
 慰安婦連合はその後、抗日連合会との連帯をさらに強め、息の長い反日活動を続けていく。国連へのロビー活動も進める。2014年5月のバージニア州フェアファクス郡の慰安婦碑設置でも中心として動くなど、今も活発である。
 1990年代後半からは、米国内で日本の戦時の行動を材料に現在の日本を糾弾しようとする動きの主役は抗日連合会に代わった。主体が代わっても、慰安婦は「性的奴隷」としていつも糾弾対象に含まれていた。
大学でシンポ開催
 活動も多様となる。抗日連合会は96年12月、カリフォルニア州のスタンフォード大学で「第二次大戦での日本の残虐行為への責任」と題する大規模なシンポジウムを3日にわたり開いた。慰安婦問題も主要議題だった。戦争当事国などから多数の学者や活動家が集まったが、中国系が最も多く、日本人参加者も日本の戦時の行動を全て非難する「自虐派」だった。
 この集まりで発言の機会を多く与えられた人物が中国系米国人の女性ジャーナリスト、アイリス・チャンだった。「日本軍が最高司令部からの命令で中国民間人30万以上を殺した」などと誇張した97年の彼女の著作『ザ・レイプ・オブ・南京』は、抗日連合会が全組織を挙げて宣伝し、販売することとなった。その結果、米国各地の大学や図書館、そしてマスコミと、「日本軍の残虐さ」が着実に広まった。
 抗日連合会と慰安婦連合が連携しての議会への働きかけも始まった。97年7月には、米下院議員のレイン・エバンズが下院に元慰安婦など「日本軍の戦争犯罪の犠牲者全てへの公式謝罪」を日本政府に求める決議案を提出した。
 この中韓両組織は2000年12月の東京での悪名高い「女性国際戦犯裁判」(英語の原題は「日本軍性的奴隷制に対する女性国際戦争犯罪裁判」)にも関与した。
 両組織を中心に事実に基づかない反日宣伝が広まるなかで、日本側は反論することもなかった。河野談話が旧日本軍の非を認め、「心からのお詫びと反省の気持ち」だけを強調したことも、沈黙の主要な理由だったといえよう。(敬称略)
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【歴史戦 第6部「主戦場」米国(3)前半】被告は「河野洋平」 司法にも持ち込まれた強制連行 談話を巧妙利用
 産経ニュース 2014.9.1 08:48 
 米国での韓国系と中国系の反日勢力は、慰安婦など歴史問題での日本糾弾を1990年代末から司法の場でも展開した。
被告は「河野洋平」
 韓国、中国、台湾、フィリピン出身の計15人の「元慰安婦」と称する女性たちが共同で原告となり、2000年9月、ワシントンの連邦地方裁判所に日本政府を相手に損害賠償を請求する訴えを起こした。
 原告たちをサポートしたのが「ワシントン慰安婦問題連合」(慰安婦連合)を主体とする韓国系政治団体で、中国系の反日団体「世界抗日戦争史実維護連合会」(抗日連合会)の協力を得ていた。
 この訴訟は「被告」として「日本政府の代表」である河野洋平を名指しした。彼が当時の外相だったからだ。日本政府は反論として、賠償はサンフランシスコ対日講和条約(1951年)での国家間の合意で解決済みという立場を取り、訴訟の却下を求めた。
 「慰安婦連合」が「元慰安婦」とともに米国の裁判所に起こした訴訟には奇妙な点がいくつもあった。いくら訴訟の自由な米国でも外国籍の女性たちが他の主権国家である日本政府を訴えることは「外国主権者免責法」で阻まれる。
「慰安婦に商業性」
 ただし、同法には例外があった。訴えの対象の主権国家の行動が「商業的活動」であり、しかもその活動が米国に直接の影響を及ぼしたと判断されれば訴訟が可能だった。「元慰安婦」の原告側はこれを利用して「慰安婦の活動には商業性があった」と強調するとともに、「一部の慰安所は戦後、米軍将兵に利用された」とも主張した。
 「元慰安婦」たちの訴えの骨子は次のようだった。
 「約20万人の女性が日本軍により性的奴隷になることを強制されたが、その日本軍の行動は組織的かつ綿密に計画されたシステムであり、日本政府が決定し、命令し、実行させた」
 「日本政府は女性を強制的に連行し拘束するシステムの実行を事前に決めていた。戦後はそのことを否定していたが、やがて日本軍の関与を公式に認め一部の高官が謝罪した。だがそれに伴う賠償をしていない」
 朝日新聞の「強制連行」報道と、93(平成5)年に慰安婦募集の強制性を認めた官房長官、河野洋平の談話の巧妙な利用が、原告の主張の根幹部分を形成していたことがうかがえる。(敬称略)

【歴史戦 第6部「主戦場」米国(3)後半】慰安婦訴訟、米司法・行政は「決着済み」 次の標的は議会
 産経ニュース 2014.9.1 15:00
 韓国などの「元慰安婦」と称する女性たちが2000年9月に日本政府を相手に米国で起こした訴訟は、連邦地裁、高裁、最高裁、さらに高裁への差し戻し、高裁からまた最高裁への上告、そして最高裁による棄却と、複雑な経過を6年近くもたどる。
 ワシントン連邦地裁は01年10月、日本政府の主張を認める形で「元慰安婦」側の訴えを却下した。「元慰安婦」側はすぐにワシントン高裁に上訴したが、そこでも03年6月に却下される。原告側がさらに最高裁に上告すると、高裁への差し戻しとなった。
 ちょうどその時期、最高裁が第二次大戦中にナチスに財産を奪われたというオーストリア女性に下した判決が日本の慰安婦ケースに類似点があるとしたための差し戻しだった。
 しかし、高裁は再審でも当初と同様の判断を下した。原告が再度上告して、最高裁がついに06年2月に却下としたのだった。原告側の完敗だった。
 「すべて解決済み」
 このプロセスで米国の各裁判所が一貫して明示したのは、慰安婦問題は戦争時の案件として、1951年の対日講和条約、65年の日韓基本条約、72年の日中共同声明、78年の日中平和友好条約ですべて解決済みだとする判断だった。米国の司法が慰安婦問題は法的にはもう終わったとする審判を下したのである。
 韓国系の「ワシントン慰安婦問題連合」(慰安婦連合)が首都ワシントンを舞台に訴訟活動を始めたのとほぼ同じ時期の99年秋、中国系の「世界抗日戦争史実維護連合会」(抗日連合会)は、カリフォルニア州の地方裁判所を舞台に戦時中、日本軍の捕虜となった元米軍人たちの訴訟を全面支援した。
 戦時に日本の企業で労働を強いられたことへの損害賠償請求だった。フィリピンで捕虜となり、九州の三井三池炭鉱で労働を強制されたレスター・テニーという元米軍人らである。労働の場となった日本の企業体を継続したとされた三菱商事、三井物産、新日鉄などが訴えの相手となった。
 この時期、カリフォルニア州での日本企業に対する賠償請求訴訟は元米軍人に加え、日本軍に使役を強いられたというフィリピンや中国の人たちも入って、合計30件以上となった。
 しかし、米国の司法当局は、ここでもこの種の戦時賠償は対日講和条約と日本と戦争関係国との2国間合意によってもう済んだ、という判断を示し、原告の主張を却下したのだった。
 議会を次の標的に
 こうした裁判の過程で米政府も日本政府に同調して、日本の慰安婦や捕虜の問題は戦後の多国間、あるいは2国間の一連の条約や声明で法的に解決済みという見解を示していた。
 米国では司法も行政も日本の慰安婦問題はすでに完結という判断を明確にしていたのである。
 そうなると、国政のメカニズムで残された主要分野は立法となる。つまり議会だった。
 日本糾弾を企図する韓国や中国勢力は、慰安婦問題での「次の標的」を米議会に定め、新たな攻勢を強めていくことになる。(敬称略)
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【歴史戦 第6部「主戦場」米国(4)上】米下院での慰安婦決議、先兵ホンダ氏支えた反日団体
 産経ニュース 2014.9.2 08:55
 米国での中韓系勢力による歴史問題での日本糾弾の最大の高まりは、2007年7月末の連邦議会下院での慰安婦決議の採択だった。日本軍が組織的に20万人もの女性を強制連行し、「性的奴隷」にしたと不当に断じる同決議は日本の敗北であり、歴史的、国民的な汚辱となった。
 事実誤認が前提となった決議に対し、米議会有力者から反対論もあったのに日本側はなぜ阻めなかったのか。米国内でなお日本が傷つけられる「歴史戦」への今後の対処にはこのときの反省が欠かせないだろう。
 「下院決議121号」と呼ばれる同決議は出席議員わずか8人の会議で可決され、拘束力もないとはいえ、なお威力を発揮する。今年7月末にもその採択7周年を記念する集会が韓国系勢力などにより、慰安婦像の建つカリフォルニア州グレンデール市や首都ワシントンで開かれた。
 集会には一部議員も加わり、対日闘争への気勢を上げた。昨年の首都での6周年集会には下院外交委員長のエド・ロイスが参加し、「日本軍の性的奴隷」への謝罪を日本側に迫った。
 同決議は米司法当局の裁決が否定した賠償請求は含まず、日本の公式謝罪を求めるだけだが、なお日本を糾弾する側の最有力の武器なのである。
 121号決議を連邦議会に採択させた最大の主役は疑いなく中国系ロビー団体の「世界抗日戦争史実維護連合会」(抗日連合会)だった。その先兵となったのが抗日連合会の本部と同じ地域を選挙区とした日系の下院議員マイク・ホンダ(民主党)である。
 両者の緊密なつながりは抗日連合会の創設メンバーのイグナシアス・ディン(丁元)が1996年12月にスタンフォード大学で開いた「日本軍の残虐行為」非難の会議でホンダと初めて親しく話しあった時から始まった。当時、カリフォルニア州議員になったばかりのホンダは抗日連合会の主張に賛同し、頻繁な交流を始めた。99年6月には同州議会に慰安婦問題などで日本非難決議案を出して、採択させた。ディンはこの決議案を自分がホンダのスタッフとともに書いたと述べている。
 ホンダが2000年11月に連邦議会の下院選に立候補し当選した際も抗日連合会が全面的に支援した。特に資金面ではこの時期、抗日連合会の幹部が全員、ホンダに献金していた。(敬称略)
 
【歴史戦 第6部「主戦場」米国(4)下】「20世紀最大の人身売買」と断罪した米下院慰安婦決議、世紀の冤罪に
 産経ニュース 2014.9.2 15:00
 米下院での慰安婦決議の推進役だったマイク・ホンダ(民主党、カリフォルニア州選出)と中国系の「世界抗日戦争史実維護連合会」(抗日連合会)との資金面での絆は、民間の選挙資金調査機関「有責政治センター」の記録でも明白だった。
 ホンダの最初の立候補から2006年まで、抗日連合会の当時の会長アイビー・リーをはじめ、役員のイグナシアス・ディン、ギルバート・チャンやチャールズ・シャオ、ベティ・ユアンら中国系米国人の有力者たちが個人献金の最高限度額(2300ドル)まで寄付をしていた。
 06年度ではホンダへの寄付37万ドルのうち、30%相当の11万ドルが中国系からだった。韓国系からは1万ドル以下だった。
■民主党台頭で転機
 ホンダが提出した決議案がなぜその時期にスムーズに進んだのか。日本側で首相に安倍晋三が就任し、歴史問題について従来と異なる発言をするようになったから、というような解釈も多かったが、実際はそうではない。 ホンダは連邦議員になってすぐの01年にすでに同趣旨の決議案を下院に出していた。2回目は03年、3回目は06年だった。いずれも本会議に達する前に消え去った。本会議前には外交委員会(07年1月まで国際関係委員会)での審議を要するが、3回目にやっと同委員会で審議され、可決された。それでも決議案は本会議には送付されなかった。下院多数派の共和党は冷淡だったのだ。
 事情が大きく変わったのは07年になってからだった。前年11月の下院選で民主党が過半数を取ったからだ。議事運営はすべて民主党主導となる。ホンダは勢いを得て、07年1月に4回目の決議案を出した。ただ、同じ日系で民主党でも長老の上院議員、ダニエル・イノウエは強く反対した。遠い過去の出来事を戦争という巨大な流れからひとつだけ切り離して取りあげ、重要な同盟国の日本を責めることは不毛だという意見だった。
 決議案は6月26日、下院外交委員会で可決されたが委員長のトム・ラントス(民主党、カリフォルニア州選出)は本会議になかなか送らなかった。実力者であったイノウエの意向を意識した対応だった。
 抗日連合会はラントスの選挙区で次の選挙では民主党の対立候補を支援するという脅しをかけた。議会工作に練達した副会長であるディンの圧力戦略だった。まもなく決議案は下院本会議に送付され、7月30日に可決された。
■日本の反発弱く…
 決議が採択された要因は抗日連合会の圧力のほかにもある。第1には、日本側の反対の意思表明が弱かったことだろう。日本政府も在米日本大使館も米国議会に正面から反対の意思を強く伝えることがなかった。当時の駐米大使、加藤良三もイノウエへのアピールには成功しながらも、公式には、「日本政府は慰安婦に関する責任を明確に認め、政府最高レベルでおわびを述べてきた」と説明するにとどまっていた。
 この説明は平成5年に慰安婦募集の強制性を認めた官房長官、河野洋平の談話の範疇(はんちゅう)だった。だが、米側は河野談話では不十分というのが出発点だった。思えば河野談話とは哀れな言葉の積み木だった。敵の許しを得るために虚偽を描くほどの譲歩をしてみても、敵も味方も許してはくれなかったのだ。
 大使館の議会対策も活発ではなく、慰安婦決議案の表決直前に担当責任者が交代するという状態だった。
 第2には、安倍の発言がゆがめられて米側に報道されたことだった。安倍は日本の記者団に対し「当初、定義されていた(日本軍の組織的な女性の強制連行という)強制性の証拠はなかった」と述べた。いまみれば、当然の言明だった。
 この発言は朝日新聞とニューヨーク・タイムズのタッグマッチふうの報道などで、安倍が日本軍の慰安婦への関わりをすべて否定したかのように伝えられた。その結果、決議案にそれまで反対していた共和党側議員のデーナ・ローラバッカー、スティーブ・チャボットらが賛成へと回ってしまったのだ。
 この下院決議が断罪したのは「日本軍の組織的な強制連行」で、「20世紀最大の人身売買の一つ」とまで言い切った。朝日新聞が8月5日、「慰安婦の強制連行」を証言した吉田清治の記事を取り消した事実だけみても、いまやそれが「世紀の冤罪」だったことが浮かびあがったといえよう。(敬称略)
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【歴史戦 第6部「主戦場」米国(5)】中国が正面に 狙いは「日米離反」 終わらない「慰安婦」糾弾
 産経ニュース 2014.9.3 09:10
 米国内で20年余も展開されてきた慰安婦問題での日本糾弾は、人道主義という看板の背後に日本の声価をおとしめ、米国の対日不信を深めるという政治的意図がいつもちらつく。特に、その動きには中国による日米離反の意図を感じさせる要素が多いのだ。だからこそ日本側が人道主義の観点からいくら譲歩を重ねてみても、糾弾は決して終わらないというのが米国を主舞台とするこの歴史戦の真相だろう。
 8月27日、米首都圏最大の新聞ワシントン・ポストの別刷り紙面の1面トップに「元慰安婦」という高齢の女性2人が悲しげな表情で立つ大きな写真が掲げられた。その脇の「残虐行為への謝罪を」という大見出しは、「日本政府は日本軍による20万人強制連行の慰安婦への残虐行為を戦後70年が過ぎてもなお謝っていない」という記事の紹介だった。
 記事はカリフォルニア州グレンデール市の慰安婦像参りに韓国からきた「元慰安婦」という女性2人が日本の「非道」を改めて米側に訴えるという趣旨だった。記事のすぐ下には靖国神社の遊就館の展示に関する「日本はなお殺人的な過去の栄光をたたえる」という見出しの別の記事があった。「だから首相、安倍晋三の集団的自衛権は他の諸国に恐怖の悪寒を招く」とも書かれていた。
■年数百万ドル支払い
 こんな内容の記事がワシントン・ポストの一部として配られるのだ。しかもその別刷りは、フード・セクション(食べ物特集紙面)のすぐ前に折り込まれているため、特に主婦層が目にすることになる。
 実は、6ページからなるこの別刷りは中国共産党中央宣伝部が直轄する英字新聞チャイナ・デーリー(中国日報)そのものである。第1面の上段には、小さな文字で「このセクションはワシントン・ポストの報道や評論ではない」と書かれているが、注意してみないと区別できない。
 中国共産党はポスト紙に毎月1、2回、政治宣伝の英語版を「新聞」として折り込ませ、年間数百万ドル単位の代金を払っているのだ。対米宣伝では歴史問題、近年は慰安婦問題での日本糾弾が主題となり、非難の内容は「世界抗日戦争史実維護連合会」(抗日連合会)や「ワシントン慰安婦問題連合」(慰安婦連合)の年来の主張とあきれるほど一致している。
 中国の対米プロパガンダについて、長年の中国研究者でジョージ・ワシントン大教授のロバート・サターは、「日米同盟の弱体化が基本の戦略目標であり、そのための日米離反策として日本の歴史問題を使い、米側に日本不信を広めることが狙いだといえる」と論評した。
■ゲリラ手法の韓国
 この点、韓国は米国内で日本たたきを続けてもゲリラ戦的手法が多く、国家戦略として日米離反を図るというところまでは至らない。日本にとって米国での歴史戦の「主敵」は、やはり中国なのである。慰安婦問題でも韓国系組織の背後にいた抗日連合会は、いまではサンフランシスコの慰安婦像計画にみられるように堂々と正面に登場してきた。
 抗日連合会が中国の共産党や政府と緊密な絆を保っていることも明白である。創設時の1994年は当時の国家主席、江沢民が愛国反日の教育を強化し始めた時期だった。
 抗日連合会のメンバーは「世界各地の中国系住民や華僑」とされたが、幹部は中国との結びつきの強い中国系米国人だった。米国在住ながら中国人民政治協商会議の顧問や、中国の国家機関の中華全国帰国華僑連合会の顧問を務める人物たちがいた。
 抗日連合会は年次総会を頻繁に中国で開いてきた。北京や上海での総会開催がこれまで6回以上、確認されている。特に2002年の総会は中国政府の諜報工作員養成で知られる上海の華東政法学院(大学)で開催された。中国ではこの種の国際会議は当局の協力なしには開けない。
 抗日連合会が中国政府のために05年春、日本の国連安保理常任理事国入りに反対する署名を4週間で4200万人分、集めたと宣言したことは有名である。いまでは尖閣諸島(沖縄県石垣市)を「中国領だ」とするキャンペーンも活発になってきた。米国を拠点とする抗日連合会の反日運動は中国と一体なのである。
 米国内でのこうした「歴史戦」に対し、日本は国家、国民が結束して反撃することが必要だといえよう。その戦いの帰趨は日本の命運を左右することにもなりうるからである。(敬称略)
 =第6部おわり
 第6部はワシントン駐在客員特派員 古森義久、ロサンゼルス支局長 中村将が担当しました。

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