川崎・入所者殺害 今井隼人容疑者「抱き上げて投げ落とした。介護に嫌気」夜勤も多い仕事に不満や苛立ち

2016-02-17 | 死刑/重刑/生命犯

元職員「抱き上げ、落とした」…「介護に嫌気」
読売新聞 2月17日(水)3時8分配信
 川崎市幸区の老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」で2014年11~12月、入所者の男女3人が相次いで転落死した事件で、最初に死亡した丑沢(うしざわ)民雄さん(当時87歳)に対する殺人容疑で逮捕された同施設の元職員今井隼人容疑者(23)が神奈川県警の調べに、「丑沢さんは(介護に)手がかかる人だった」と供述していることが捜査関係者への取材で分かった。
 今井容疑者は夜勤も多い介護の仕事についても「嫌気が差した」などと話しているといい、県警は、こうした不満やいらだちが動機につながった可能性もあるとみて調べている。
 県警の発表では、今井容疑者は14年11月3日深夜から翌4日未明の間に、4階から丑沢さんを投げ落とし、殺害した疑い。捜査関係者によると、「(丑沢さんの部屋の)ベランダに誘導し、抱き上げて投げ落とした」と供述しており、「殺すつもりだった」という趣旨の説明もしているという。
.  最終更新:2月17日(水)3時9分

 ◎上記事は[Yahoo!JAPAN ニュース]からの転載・引用です
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〈来栖の独白〉
 単に「刑事事件」で論じてはならない。「老人施設の選び方」を論点にすべきでもない。今井容疑者は「嫌気がさした」と云っている。就職当初は尋常な介護への熱意・意識があったはずだ。それが、夜勤とか不規則な勤務体制、汚物の世話などといった仕事内容。また、人と対するのはコンピューターを扱うのとは違う。実に難しい。感情に突き刺さってくることも少なくはないだろう。そういった状況が、人の心を萎えさせる。世間・社会は、こういった分野に理解を向けているか。向けていない、と私は思う。例えば「ゴールデンウィーク」といった呼称はどうか。「連休」との呼称はどうか。その時期、休めない人は多くいるのである。世間は、そのことを配慮しているか。私は、このような世間に「嫌気がさす」。
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川崎・入所者殺害  「優しいやつ」なぜ… 今井容疑者、虚勢張る面も
  毎日新聞2016年2月17日 東京朝刊
 川崎市幸区の有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」で入所者を殺害したとして神奈川県警に逮捕された元施設職員の今井隼人容疑者(23)は逮捕前、「できるだけ幸せに過ごしてもらいたい」などと語り、介護従事者としての真面目ぶりをアピールしていた。知人の目から「優しいやつ」と映る一方、虚勢を張る面もあったという今井容疑者。入所者殺害に至る動機の究明が捜査の鍵となる。【福永方人、国本愛、松浦吉剛】
 昨年9月8日、今井容疑者は報道陣の取材に応じた。短髪に黒縁メガネ姿。自身に疑惑の目が集まる中、動じる様子を見せなかった。
 「自分の家族が亡くなった経験から、おみとりをやりたいと思った」。老人ホームに勤めるようになったきっかけを話し、入所者3人の死亡について聞かれると「家族のように思ってケアをさせていただいていたのでショック。食い止められなかった後悔の気持ちと、亡くなったことの悲しみがある」と語った。
 今井容疑者は横浜市内の中学、高校を卒業後、県内の医療系専門学校に入り、2014年3月に救急救命士の国家資格を取得した。だが救命士の道には進まず、同年5月にSアミーユ川崎幸町に就職した。専門学校時代の同級生の男性(22)は「とても優しくていいやつ。命を助ける資格を持っているのに、まさか高齢者を殺害するなんて……」と驚きを隠さない。
 施設では仕事への熱意も見せていたという。運営会社の積和サポートシステムによると、今井容疑者は働きながら学校に通い、14年11月に「介護職員初任者研修」(旧ホームヘルパー2級)の資格を取得したという。同社の岩本隆博社長は「他の職員からは頼りにされていたと聞いている」と話す。
 一方で、施設で働き始めて間もなく、同僚らと高級鉄板焼き店やプロ野球観戦などに出掛けては、料金をおごるようになった。「大学病院の救命センターの仕事を掛け持ちしているから金はある」とうそをついていた。
 入所者の現金や貴金属を盗むようになった。窃盗罪に問われた横浜地裁川崎支部の公判では「見えを張りたかった。入所者の物を盗むことへの罪悪感が少なかった」と話した。判決は「友人らと遊興するために、本来必要がない分まで代金を負担するために盗みを繰り返すというのはいささか理解し難い行動」と指摘していた。
*初動捜査の遅れ、影響懸念
 「Sアミーユ川崎幸町」に入所していた丑沢(うしざわ)民雄さん(当時87歳)の転落死に絡んで殺人容疑で逮捕された今井容疑者は、他の2人の入所者の転落死についても関与を認めており、詳しい動機や経緯の解明が捜査の焦点となる。司法解剖が行われなかったことなど初動捜査の問題点や遅れが今後の捜査に影響する可能性がある。
 3人が相次いで転落死したとの情報が所轄の幸署から県警本部捜査1課に伝わったのは、今井容疑者が入所者の財布を盗んだとして窃盗容疑で逮捕された後だった。この事件の逮捕は2015年5月21日。3件の転落死が発生した時期から5カ月がたっていた。
 3件の転落死では、それぞれの発生の際に遺体の状況確認を担当する検視官が県警本部から現場に出動した。しかし出動したのは別の検視官で、個別の変死事案として処理された。外傷以外に目立った傷が確認されなかったこともあり、司法解剖は行われなかった。
 窃盗事件での今井容疑者の逮捕後、3件の転落死がわずか2カ月の間に起きていたことを捜査1課が把握。3件が発生としたとみられる時間帯の全てで当直勤務をしていたのは今井容疑者しかいないことや、1件目と3件目の第一発見者が今井容疑者だったことがわかり、捜査線上に同容疑者が浮かんだ。
 把握が遅れた点について、島根悟・県警本部長は16日の定例記者会見で「まずは今やっている(1件目の)事案をしっかり固め、その過程で他の2件の状況がどうだったのか確認したい」と述べた。【村上尊一】
*運営会社の社長が謝罪
 「Sアミーユ川崎幸町」を運営する積和サポートシステムの岩本隆博社長は16日、報道陣の取材に応じ「元職員がやってはいけない重大な犯行をした。遺族にお悔やみを申し上げたい」と謝罪した。
 岩本社長によると、1件目と3件目の転落死の第一発見者が今井容疑者だったため、3件目が発生した際には職員の間で「気味が悪い」との話が持ち上がった。このため3件目以後は当直勤務を外す措置を取ったという。岩本社長は「(3件続いても)やっていないと思っていた」と説明した。【国本愛】
*施設選び「透明性」が重要
 自分自身や家族が入居する介護施設を選ぶ際、どんな点に気をつければ良いか。虐待など問題のある施設を見抜く方法はあるのだろうか。専門家に聞いた。
 高齢者の住まいの情報に詳しい、NPO法人シニアライフ情報センターの池田敏史子代表理事は、判断基準の一つに「透明性」を挙げる。施設が地域住民にも開放されているか、家族会を定期開催するなど、入居者の家族が頻繁に訪問できるような仕組みがあるかなどが目安になるという。「『外部の目』が多ければ、虐待の抑止につながりやすい」と池田さんは説明する。
 また、体験入居できる施設の場合は、本人だけでなく家族ら複数で2泊3日程度滞在することや、見学に行くなら食事の時間帯を勧める。食事内容だけでなく職員の様子、他の入居者の表情も観察できるためだ。「食事の出し方はサービス全般に通じる」と指摘する。
 虐待の疑いや入居者同士のトラブルなどで、入居後に不安や不満を感じることもある。一般社団法人コミュニティネットワーク協会・高齢者住宅情報センター東京の久須美則子センター長は「家族を人質に取られたようで施設に遠慮しがちだが、早い段階で相談することが大切だ」と助言する。その際、一方的に施設や職員を責めるのではなく、説明を求める姿勢が必要だ。【鈴木敦子】
*川崎市の有料老人ホームの転落死事件を巡る経緯
<2014年>
 5月    今井隼人容疑者がSアミーユ川崎幸町で働き始める
11月 4日 丑沢民雄さん(当時87歳)が4階から転落死しているのが見つかる
12月 9日 要介護2の女性(同86歳)が4階から転落死しているのが見つかる
   31日 要介護3の女性(同96歳)が6階から転落死しているのが見つかる
<2015年>
 5月21日 入所者の財布を盗んだとして神奈川県警が今井容疑者を窃盗容疑で逮捕
 9月24日 窃盗事件で横浜地裁川崎支部が懲役2年6月、執行猶予4年の判決
12月11日 県警が別の元職員3人を暴行容疑などで書類送検
   21日 川崎市が施設からの介護報酬の請求を3カ月間停止させる行政処分
<2016年>
 2月15日 県警が今井容疑者を殺人容疑で逮捕

◎上記事は[毎日新聞]からの転載・引用です *強調(太字・着色)は来栖
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老人ホーム転落死 今井隼人容疑者「お見送りをやりたいと思い介護業界を選んだ。遣り甲斐は感謝の言葉」
[川崎老人ホーム転落死]元職員今井隼人容疑者、3人殺害認める2016/2/16 (昨年は窃盗罪で執行猶予4年) 
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クローズアップ2016  川崎・入所者殺害 ひずむ介護現場
  毎日新聞2016年2月17日 東京朝刊
 川崎市幸区の有料老人ホームで入所者3人が転落死した事件で、神奈川県警が1人に対する殺人容疑で逮捕した元施設職員、今井隼人容疑者(23)は「仕事のストレスがあった」という趣旨の供述をしている。このホームでは入所者への暴行などの虐待が判明しているが、高齢者虐待は増加の一途で、その背景に人手不足や過酷な労働環境を指摘する声もある。
*虐待300件、2年で倍増
 「極めて許し難い行為だ」。塩崎恭久厚生労働相は16日の閣議後記者会見で、事件についての感想を語ったうえで、今後の対応について「自治体と連携して有料老人ホーム施設における虐待防止に引き続き取り組んでいきたい」と語った。
 身体的暴行▽心理的外傷を与える言動▽財産の不当な処分−−など高齢者への虐待を防ぎ、介護する家族の支援も図る「高齢者虐待防止法」が2006年4月に施行され、間もなく10年になる。だがこの間も高齢者虐待は増えており、行政は有効な対策を見いだせていない。
 厚労省によると、全国の自治体が14年度に確認した高齢者虐待は1万6039件。06年度の1万2623件から27%増えた。特に増加が際立つのは介護施設や居宅サービスの職員による虐待で、14年度は300件。12年度の155件から2年でほぼ倍増した。
 介護施設で虐待した328人のうち、年代別では30歳未満が72人(22%)で最多。虐待の要因(複数回答)で最も多かったのは「教育・知識・介護技術等に関する問題」で184件(62・6%)。意思疎通が取りにくい認知症に対する理解不足から、怒鳴ったり手を上げてしまったりするケースだ。若手職員が十分な教育を受けられず、虐待につながる傾向が透けてみえる。
 厚労省は07年度から「正しい知識を持つことが虐待防止につながる」として、自治体が介護職員らを対象に研修会を開く場合、費用の半額を補助している。
 独自の取り組みをしている自治体もある。神奈川県は、高齢者虐待防止法施行を機に市町村向けに高齢者虐待防止対応マニュアルを作成した。市町村職員向けに最低年1回の研修も開催する。県担当者は「川崎市の事件後、有料老人ホームで自主研修をする取り組みも出ており、そういったところに講師を紹介したり、手引の周知をしたりしている」と話す。
 東京都は07年、虐待の有無の調査に当たる区市町村職員らの相談に乗る「高齢者権利擁護支援センター」を設置した。虐待の実態把握につながる調査のノウハウについて、介護福祉士や弁護士が専門家の視点から相談に応じる。14年度は895件の相談があった。
 厚労省幹部は「国や自治体はさまざまな対策をしているが、虐待件数が増加傾向にあるのは事実。介護現場の風通しを良くし、職員のチームワークを高めるような取り組みが必要だ」と話した。【古関俊樹、黒田阿紗子、堀井恵里子】
*処遇改善見えず人材流出
 「夜勤の時は日中よりヘルパーが少ないのに呼び出しコールが集中する。そんな時に入所者が興奮して暴れたり、駄々をこねたりされるとイラッとくることはよくあった」。認知症のお年寄りが半数を占める高齢者施設で夜勤専門員として働いた経験のある相模原市の男性会社員(39)は当時をこう振り返った。
 週5日の夜勤は、1人で十数人の入所者のおむつ交換や見守りの作業をこなす。勤務は午後6時から翌朝8時まで仮眠を挟んで14時間。「忙殺されて雑な態度を取っているため、入所者も興奮する。互いのイライラのせいでますます悪い状態になる。本当はそこをうまくケアするのがプロなんでしょうが……」。月25万円の給与と比べて「割が合わない」と思い仕事を辞めた。
 日本医療労働組合連合会が16日に発表した介護現場の夜勤実態調査によると、日勤と夜勤の2交代制の職場が9割近く、そのうち6割以上で夜勤の勤務時間が16時間を超えるという。同会は「夜勤の時間帯は人が少ないのにやることは多い。ストレスがたまる」と説明する。
 厚労省によると、昨年3月の特別養護老人ホーム(特養)など介護施設や介護サービスの利用者数は約124万人。要介護3以上の特養入所待ちは約15万人に上る。
 安倍政権は「1億総活躍社会」実現に向けた緊急対策の柱として、介護サービスを利用できずに家族が離職するケースをゼロにすることを目標に掲げ、20年代初頭までに50万人以上の受け皿を整備する。だが介護人材の不足が既に深刻で、15年の介護事業者の倒産件数(負債額1000万円以上)は00年の介護保険制度の開始以来最多の76件に。昨年4月からは介護報酬も引き下げられ、経営環境は厳しくなる一方だ。
 厚労省によると、14年の介護職員の平均月収は約22万円で全産業平均を約11万円下回る。政府は今年度の報酬改定で1人当たり1万2000円相当の処遇改善の措置を講じるが、好転の兆しは見えない。離職率は16・5%(14年度)に上る。
 「景気回復や20年の東京五輪で他業種に人材が流れている」「中・小規模施設は人員が足りず、研修にも行けない」。介護の現場では人材不足や、介護のプロを育てられない現状を嘆く声が多く聞かれる。
 「介護労働安定センター」(本部・東京都)が昨年8月に公表した全国の介護事業所の職員への調査では、仕事を選んだ理由に「働きがい」を挙げた人が52・6%(複数回答)と最も多い。だが、労働条件については「人手が足りない」(48・3%)「仕事内容の割に賃金が低い」(42・3%)との不満が上がる。
 淑徳大の結城康博教授(社会福祉学)は介護人材を選ぶ際の厳しさを指摘する。「入所する要介護者3人に対し1人以上の介護職員の配置が義務づけられている以上、人材を選んでいる余裕はない。頭数をそろえるため、応募があれば介護に適任か関係なく雇わざるを得ない」と実情を語る。現場で覚えていくことの多い入所者への対応のテクニックも身に着ける時間的余裕はない。【山田泰蔵、西田真季子、塩田彩】

 ◎上記事は[毎日新聞]からの転載・引用です 
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