小沢一郎「人物破壊」/検察と大メディアがヒタ隠す暗黒裁判の重大疑惑 32〈前篇〉 『週刊ポスト』4月20日号

2012-04-10 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア

 検察と大メディアがヒタ隠す「暗黒裁判」の重大疑惑 32

    

 週刊ポスト4月20日号(2012/4/9発売)
[4・26を正しく見る完全版レポート]
 西松事件  陸山会事件  検察審査会  秘書裁判
 検察の執拗な捜査、繰り返される大メディアのリーク報道で国民に強く印象付けられた「巨悪政治家」小沢一郎のイメージは、一人の政治家を抹殺するに十分な威力だった。だが、その後の公判や本誌取材により、そのイメージの大半が事実誤認や全くの虚偽であることが判明した。国民が知らされなかった小沢事件の真相を明らかにする。

西松建設違法献金事件
 小沢氏を政治的に抹殺する「人物破壊」の発端は西松建設違法献金事件だった。
 政権交代前夜の09年3月、東京地検特捜部は小沢氏の公設第1秘書・大久保隆規被告を事情聴取なしで逮捕する。2か月後、小沢氏は総理大臣の椅子を目前に党代表辞任に追い込まれた。
 西松建設から「ダミー団体」を経由して献金を受けとり、政治資金収支報告書に虚偽記載した---これが小沢秘書の問われた罪だ。

疑惑〈1〉 証拠は何もなかった「天の声」
 09年12月に開かれた西松建設事件の初公判の冒頭陳述で、検察側は「小沢事務所が地元の公共工事の本命業者を決める『天の声』を出していた」と指摘し、公共事業受注を目的に西松が繰り返しダミー団体を通じた献金を行ったと主張した。昨年9月の1審判決では東京地裁が天の声の存在を認定し、大久保被告の有罪判決の根拠とした。
 だが、判決では、小沢事務所や被告がいつ、どの公共事業に天の声を発したのかは特定されていない。後の小沢公判で、検察が西松をはじめ、ゼネコン、サブコンを徹底的に調べ上げた結果、天の声示す直接証拠はなく、逆にそれを否定する供述ばかりだったことが明らかになった(前田恒彦・元検事の証言による。詳しくは後述)。地裁は被告が「影響力を行使できる立場にいた」というだけで天の声を「推認」したが、これでは“ナイフを持っていたから刺せたはず”というメチャクチャな論理も成立してしまうトンデモ判決だ。

疑惑〈2〉 西松建設・前社長 判決では「天の声」を否定
 それならば、当然、西松の献金が天の声の見返りでなければ辻褄が合わない。ところが大久保被告とは別公判となった西松の国沢幹雄・前社長に対する判決では、地裁は「献金は特定の工事受注の見返りではない」と天の声の存在を否定した。

疑惑〈3〉 なぜ「贈収賄」「斡旋利得罪」に問わないのか
 小沢事務所(大久保被告)が天の声で西松に公共工事を受注させ、見返りに献金を受け取ったのであれば、贈収賄や斡旋利得罪である。検察はそれら重大な容疑では立件せずに、政治団体がダミーかどうかという枝葉末節な問題(政治資金規正法の形式的な違反)でしか起訴できなかった。

疑惑〈4〉 献金した政治団体はダミー団体ではない
 公判で検察は政治団体が実体のないダミー団体だと証明することに注力した。企業献金なのに収支報告書に「政治団体からの寄付」と記載したのは違法な虚偽記載にあたるという論法だ。
 だが、裁判でダミーではなかったことが判明した。
 1つの企業の社員たちだけで政治団体をつくることは違法でも何でもない。当該政治団体は西松とは別に事務所も借りており、検察側が承認申請した同社の担当幹部さえ「資金は別だった」「実態はあった」と証言した。

疑惑〈5〉 小沢事務所にとってダミー団体を経由するメリットは何もない
 政治資金規正法では政治家個人や資金管理団体は企業献金を受けられないが、政治団体からの寄付は認められる。地裁判決は、大久保被告が「企業献金を受けるために他人名義(ダミー団体名義)で虚偽記載した」と有罪にしたが、これは動機にならない。同法は政党(支部)が企業献金を受け取ることを認めており、企業からの献金ならば、小沢事務所は政党支部に入金してもらえばよかっただけだ。

疑惑〈6〉 “ダミー団体”は与野党政治家に献金多数
 件の政治団体による献金額は10年間で約4億800万円。自民党の森喜朗・元首相や二階俊博・元経産相、尾身幸次・元財務相、国民新党の自見庄三郎・金融相など、多くの政治家が献金やパーティ券の購入を受けていた。しかし、立件され有罪判決を受けたのは小沢秘書の大久保被告ひとりだけだ。
 検察は森氏や尾身氏ら自民党実力者には捜査さえ行わず、838万円のパーティ券購入、支部に600万円の献金を受けていた二階氏については政策秘書が略式起訴されただけだ。その理由は「小沢事務所への献金は天の声の見返り」で悪質というものだが、それが本当ならば贈収賄に問うべきだ。

疑惑〈7〉 もっとひどいダミー献金の例は山ほどある
 原発事故後に発覚したが、電力各社は労使揃って自民、民主に献金していた。判明しているだけで、電力9社や関連会社は09~10年に自民党に約8000万円を提供。電力会社の労組を母体とする21政治団体や労組自体からから民主党へ約7000万円献金した。役員や幹部らの個人献金の形を取るが、「その分はあらかじめ給与に上乗せされている」(電力会社幹部)といわれ、それが事実ならば明らかにダミー献金である。
  さらにいえば日歯連による橋本派への1億円闇献金事件は収支報告書へ記載しない裏金だった。悪質性という点ではことらのほうが圧倒的だが、受け取った故・橋本龍太郎氏や青木幹雄氏は不起訴だ。

疑惑〈8〉 「西松事件」はすでに終わっている
 「小沢事務所が天の声を出した」と、大宣伝された西松事件は、結局、秘書ひとりの有罪で決着した。小沢氏の犯罪や「天の声」の具体的内容などは何1つ明らかにされていない。

陸山会土地購入事件
 小沢氏の資金管理団体「陸山会」は、04年10月、秘書寮建設用地として世田谷区に土地を購入した。購入代金約4億円は小沢氏から借り入れられ、収支報告書には所有権移転登記が完了した05年に記載された。
 これが政治資金規正法違反(虚偽記載)に当たるとして、東京地検特捜部は10年1月、石川知裕衆議院議員ら小沢氏の新旧秘書3人を逮捕した。現在の小沢氏自身の裁判は秘書と規正法違反を共謀したかどうかという点が問われている。

疑惑〈9〉 「期ずれ」に違法性はない
 土地登記簿謄本を見ると陸山会が土地の所有権を取得したのは05年であり、04年には「代金を支払って仮登記」をしただけだ。小沢氏側は「05年取得」と報告したのだが、検察側は「契約した04年に報告すべき」と主張している。
 小沢公判では、会計学の専門家が証人出廷して「資産取得と支出の記載時期は同一年分であることが望ましい」から(土地取得の)計上時期は登記時を基準とすべき」と指摘し、「期ずれ」に違法性はないとの見解を証言した。
 検察は、元秘書の公判で「土地購入の原資に水谷建設から受け取った5000万円の裏金が入っていて、それを隠すための期ずれだった」と、悪質な虚偽記載だと印象づけようとした。
 だとすれば、重大なのは「闇献金」の存在であり、小沢氏がそれを自分のカネにしていれば脱税にも問われなければおかしい。それなのに検察は「期ずれ」だけを立件し、地裁は検察の主張を100%認定して秘書3人に有罪判決を出した。
 ところが、その後の小沢裁判では検察官役の指定弁護士が論告求刑で裏金に触れず立証を放棄。「悪質な虚偽記載」の根拠がなくなった。結果として小沢公判で争われているのは、政治資金収支報告書に「売買日」を書くべきか「登記日」を記載すべきかという手続き論だけになった。

疑惑〈10〉 禁固3年求刑
 それでも指定弁護士は小沢氏に対し、「禁固3年」を求刑した。指定弁護士は「故意に虚偽記入した」根拠とされた裏金を立証しないにもかかわらず、極めて重い罰を求めたことになる。「期ずれ」であれば、収支報告書の訂正で済む問題である。

疑惑〈11〉 「期ずれ」が罪なら与野党政治家は犯罪だらけ
 同様のケースは枚挙に暇がない。寄付の日付や金額の間違いなど、政治資金収支報告書の訂正は11年だけで581件にも達している。それでも期ずれが重大犯罪というなら、すべての会計責任者や議員を逮捕・起訴し、禁固刑にしなければ法の下の平等が崩壊する。

疑惑〈12〉 4億円の不記載はなかった 
 もうひとつ裁判で争われたのは土地購入原資4億円の記載が「ない」ことだ。これは誤解が多いが、04年の陸山会の収支報告書の収入欄には「借入金 小澤一郎 4億円」と記されている。問題にされているのは、いったん小沢氏が提供した4億円を、後に銀行借り入れに切り替えたことが記載されていないという点だ。政治資金規正法の趣旨は、政治資金の流れを透明にして、国民が検証できるようにすることにある。その意味で、陸山会の土地購入資金は小沢氏の個人資金であり、出所を正確に記載しているといえる。

疑惑〈13〉 そもそも4億円は規正法上、記載義務はない
 本誌取材に対して、総務省政治資金課は「一時的に用立てる借受金などは政治資金収支報告書に記載する必要はない」と回答した。つまり小沢事務所は、そもそも4億円を報告する義務はなかったことになる。
 現に個人的な運転資金の貸し付けなど、どの政治家も報告書に記載していない。小沢氏の元秘書たちは義務もないのに法の趣旨に沿って資金の出所をより細かく正確に書いたのに、銀行で借り換えたことを記載漏れしていた些細な問題を重大犯罪とされ、地裁も有罪判決を出した。

疑惑〈14〉 銀行借り入れは不自然ではない
 4億円の現金があるのに、わざわざ同額の銀行融資を受けるのはおかしいと検察は主張する。だが、例えば2000万円の貯金を持つ人が2000万円のマンションを購入する場合、全額現金で支払うだろうか。ある程度頭金を払い、残りは住宅ローンを組むのが一般的である。
 小沢氏も公判で、手元に自由になる資金を残したかったと話しており、何ら不自然な点はない。

疑惑〈15〉 明確な証拠なく裏金授受を認定
 検察は4億円の原資に水谷からの闇献金が含まれていると主張してきた。証拠とされるのは、同社元社長の「04年10月15日、石川知裕被告に都内ホテルの喫茶店で5000万円を渡した」という証言と、「喫茶店の領収書」だ。
 しかし、元社長の運転手の業務日報にはそのホテルに行った記録はなく、同社元会長も「(裏金が)渡されたとは確認していない」と証言。石川被告も授受を否定しており、公判では水谷からの裏金疑惑は遂に立証されなかった。判決が唯一の物証とした領収書はというと、翌年4月19日に同じホテルで大久保秘書に5000万円を渡したとされる日付のものであり、まったく本件とは関係ない。
 そもそも人目に付く有名ホテルのロビーの喫茶店で5000万円もの裏金を紙袋に入れた現金で手渡すことなど常識ではあり得ない。前出の日歯連闇献金事件では、日歯連会長が元首相や参院のドンなど政界大物3人を密室の料亭に呼び出して1億円を渡した。これが裏金授受の“正当な作法”である。

疑惑〈16〉 原資に水谷裏金が入ることはあり得ない
 検察側は小沢事務所への強制捜査で通帳などを押収し、秘書公判では「小沢氏が自分の口座から引き出したのは3億円」との見方を取っていた。3億円なら土地購入代金に足りないから水谷からの裏金が必要だったとの論理である。
 ところが小沢公判では、弁護団側も検察側も冒頭陳述で、石川氏などの証言を根拠に「小沢氏が石川被告に売買代金の4億円を渡したのは04年10月12日」と述べた。水谷元社長が石川氏に5000万円の裏金を手渡したと検察が主張する10月15日の3日前のことだ。
 公判をすべて傍聴する弁護士の辻恵代議士がいう。
「そのことは、4億円に闇献金が含まれ、それを隠すために期ずれで報告書に虚偽記載したという検察の論理が破たんしたことを意味します。指定弁護士側が立証を放棄したのは当然です」
 だが、元秘書3人はこの「破綻した検察の論理」で1審有罪判決を受けた。

疑惑〈17〉 本誌スクープで原資は金融債と判明
 秘書判決で地裁は「4億円の原資は秘書も小沢氏も明快な説明ができず不自然」と述べた。
 だが、本誌は10年2月12日号で4億円の原資を明らかにしている。小沢氏の父・佐重喜氏の代から取引していた旧安田信託銀行(現みずほ信託銀行)神田支店の当時の担当者から、小沢氏は父から相続した個人資金を「ビッグ」という貸付信託で運用し、解約時に元利合わせて少なくとも3億6000円の払い戻しを受けていたとの証言を得た。陸山会に貸した4億円の原資が小沢氏の個人資産だったことを裏付けるものだ。
 ただ金融債の性質上、通帳には元本の3億円しか記載されず、利息分は別に計算書が渡されるだけだった。10年以上前に解約されたものなので、検察は通帳の3億円だけを見て「足りない」と主張し、秘書と小沢氏は、なぜ4億円あったのかを明確に説明できなかった可能性が高い。
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 関連:小沢一郎「抹殺裁判」わが国はいつからこんなに恐ろしい国になったんだ/4億円の「出所」は解決済み 2011-10-08 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア 
 4億円の「出所」は解決済み メディアは「逃げるな!」の大合唱だが…
日刊ゲンダイ2011年10月8日
<「二転三転の説明」批判もお門違い>
 「(土地購入の)原資は私のお金だ。詳しいことは、私の知らないことまでぜーんぶ調べた検察に聞いて!」――尿管結石の苦痛に耐えての会見でイライラが募ったのか。小沢の憮然とした態度に大マスコミは猛反発だ。土地購入のために用立てた4億円の出どころについて、「逃げずに『真実』を語れ」「二転三転の説明はおかしい」と叩きまくっている。だが、小沢がウンザリするのはムリもない。実は4億円の「出どころ」については、とうに解明済みなのだから……。
 初公判でも検察官役の指定弁護士側は、4億円の出どころを「政治活動の中で蓄えた簿外の表に出せない資金」と決め付けていた。大マスコミも検察も指定弁護士も、この4億円にこだわるのには理由がある。「原資を明快に説明することが困難」(元秘書3人の公判の判決文)ということにしないと、なぜ収支報告書にウソの記載をしたのか、という動機がなくなる。「4億円=説明できない怪しいカネ」という構図でなければ、小沢を攻撃する材料を失ってしまうのだ。
 本当に4億円は怪しいカネなのか。真相は小沢の言う通り、「私のお金」が正解だ。
「小沢さんは父親から信託を引き継いだ遺産3億円を元本に、80年代から90年代にかけて5年満期の『ビッグ』を3回は更新していたはずです」
 この発言の主は、小沢家が父・佐重喜氏の時代から取引していた安田信託銀行(現・みずほ信託銀行)神田支店の当時の担当者。ビッグとは、半年複利の変動金利型の高利回りで、バブル期に高い人気を誇った金融商品である。
 実は週刊ポストが昨年2月にこの担当者への直接取材に成功し、小沢が98年のビッグ解約時に元利合わせて、少なくとも3億6000万円の払い戻しを受けたという証言を引き出していた。これこそが、4億円の出どころである。
 大マスコミも4億円の出どころを疑うなら、この担当者を捜して話を聞けばいい。疑惑を抱いたら、自らの足で取材し真相を解明するのが、マスコミの本来の務めだ。勝手に怪しいと決め付けたカネについて、取材対象者の説明を待つだけなんて、怠慢極まりない。
<本をただせば「私のお金」に行き着く>
 土地の購入資金を聞かれた小沢が「献金してくれた皆さまのお金」「銀行融資」「金庫で保管していた個人資産」と説明を変遷させてきたことも、大マスコミはやり玉に挙げている。だが、初公判でも登場した問題の土地の購入プロセスは複雑だ。
「まず小沢が用立てた4億円をもとに『陸山会』名義で定期預金を組み、この定期預金を担保にして、銀行から小沢が4億円の融資を受け、ただちに陸山会に転貸した。そして陸山会は、この借入金で土地を購入したのです。転貸分の借入金の返済には、陸山会が集めた献金も含まれています」(司法関係者)
 つまり土地購入の原資には、小沢が説明した「献金」も「銀行融資」も「個人資産」も含まれており、本をただせば、小沢が最後に説明した「私のお金」にたどり着く。それだけの話だ。小沢の説明は分かりにくいが、決してウソではない。
 恐らく検察は土地購入プロセスは当然として、4億円の「真の出どころ」まで知っている。大マスコミは4億円の出どころを知りたければ、一蓮托生の検察に聞けばいい。検察が口ごもるのなら、自分たちにとって都合の悪い事実だからだろう。大マスコミも4億円の出どころを真剣に調査しないのは、「怪しいカネ」でいてくれた方が、小沢攻撃にとって都合がいいためだ。
 検察と大マスコミこそ、4億円の出どころから逃げ回っている。
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疑惑〈18〉 不動産を購入している政治家は多数いる
 陸山会が違法だと検察に断じられた政治団体による不動産取得は他の政治家もやっていることだ。町村信孝元官房長官は01年、資金管理団体「信友会」を通じて北海道江別市で1000万円の不動産を取得。07年にも600万円の安値で買い取り、自宅として使用している。それでも、大マスコミはどこも報じない。
 みんあの党の江田憲司幹事長も政治団体を使って不動産を購入している。代表を務める政治団体「憲政研究会」の06年度政治資金収支報告書によれば、03年に横浜市の建物を840万円で購入している。 

 小沢一郎「人物破壊」/検察と大メディアがヒタ隠す暗黒裁判の重大疑惑 32〈篇〉『週刊ポスト』4月20日号 2012-04-11 


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記者クラブよ、この「疑惑報道」を謝罪・訂正しないのか? 4・26小沢一郎判決 『週刊ポスト』4月20日号 2012-04-09 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア 
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