日本は人質司法 罪を認めなければ保釈されない 後藤昌弘(弁護士)

2010-02-23 | 後藤昌弘弁護士

中日新聞を読んで 【認めないと出られない】 後藤昌弘(弁護士)
 2010/2/14 Sun.
 6日朝刊の特報欄に「乱発!?再逮捕」の見出しで、特集記事が掲載されていた。鳥取や埼玉の連続不審死事件、千葉の女子大生殺害放火事件で、関与が疑われる女や男に対し、別の容疑での逮捕が繰り返されていることの問題点を指摘する記事である。
 記事中にも書かれているが、長期間の身柄拘束が被疑者に与える影響は極めて大きい。注目を集める事件なら、新聞やテレビなどで実名入りで取り上げられ、その上に22日間も警察署や拘置所に身柄を拘束されるのである。
 被疑者が否認すれば、多くは接見禁止の決定も下されるため、家族や同僚との面会や仕事の打ち合わせもできない。中小企業なら倒産の危機にひんすることになる。
 実は、問題はそれだけではない。いったん逮捕され起訴された場合には、裁判で認めない限りは、保釈も認められないというのが最近の実情なのである。私は昔扱った贈収賄事件で、被疑者とこんな会話をしたことがある。
 被疑者「このまま否認を続けたらどうなります?」
 私「当分、保釈は認められません。裁判中、おそらく1年程度は、拘置所にいなければなりません」
被疑者「裁判で認めたら、どうなりますか?」
私「すぐ保釈で外に出られます。この事件なら執行猶予が認められると思います」
被疑者「無罪になっても、1年程度は拘置所にいなければならない。認めたらすぐに外に出られ、有罪になっても刑務所にはいかなくてよい。それなら、事実と違っていても、認めざるを得ないじゃないですか!」
 再逮捕が繰り返される問題や、否認すると保釈が認められない問題は、裁判所が本来行うべきチェック機能を果たしていないことが大きな要因であるが、こうした実態が市民によく知られていないことも原因のひとつである。こうした背景を指摘する報道を引き続き期待したい。 2010/2/14Sun.

 ◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖)
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検察を支配する「悪魔」田原総一朗+田中森一(元特捜検事・弁護士)講談社 2007年12月5日第1刷発行[1] 
 普通の人は、連日、検事から責められて辛い思いをすると、事実とは違っていても認めてしまう。しかし、裁判で事実を明らかにすれば覆ると思っているので、裁判に望みを託す。
 日本の場合は人質司法で、罪を認めなければ保釈されないので、なおさらこの罠にはまりやすい。何日も自由を拘束されて、厳しい取調べで肉体的にも精神的にも苦痛を受け続けると、一刻も早く家に帰りたいと思うようになる。
 事実であろうが、なかろうが、罪を認めれば、帰れる可能性が出てくる。そして、その場から逃れたい一心で、検事の言うがままになる。だが、これは、非常に甘い考えです。
 と言うのも、一度、調書がつくられて、それにサインしてしまえば、それが事実ではなくても、裁判でも通ってしまうからです。客観的なアリバイなど、よほど明白な証拠でもない限り、弁護士でも検事調書の内容をひっくり返すのはむずかしい。


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