★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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パーフェクトシティ(5)

2021年06月13日 | 短編小説「パーフェクトシティ」

「よし、時間だな。行くとするか」
 黒ずくめでこれから葬式へ向かうようないで立ちの俺は、出勤用のカバンを持って家を出た。
 大晦日の冷気が体を包む。だが寒くはない。喪服のような黒いスーツは都市国家からの支給品だが、単なるスーツではない。この大晦日の作業用に作られた特注品ユニフォームで群を抜く保温機能を備えている。
 俺は、そのまま自宅前に駐車してあるマイカーに乗り込んだ。
 ダッシュボードにある画面に、若い女の顔が浮かびあがり、にっこりと微笑んだ。車に標準装備されているカーコンピュータだ。
「こんばんは、ダイゴ様。お仕事ですね。お疲れ様です。行先はいつもの警備隊詰め所でよろしいですか」
 ダイゴは俺の名前、職業は国家警備隊の隊員だ。
「ああ、ユキさん。こんばんは。うん、詰め所でいいよ」
 最近は、自分の車のカーコンピュータに名前を付けて呼ぶのが流行っている。
 AI技術が発達して、運転を含めたすべての車の操作はカーコンピュータがやってくれる。会話もほとんど人間と変わらなくできるため、名前があったほうが便利なのだ。
 ちなみに、名前は自由につけられる。「ユキ」という名前に特に根拠はない。
なんとなく響きがいいからそう呼んでいた。



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