★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
SF、ミステリーから現代物まで何でも書いてます。
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パーフェクトシティ(2)

2019年05月13日 | 短編小説「パーフェクトシティ」
今日は、西暦(AD)2155年が終わる日。大晦日だ。
 昔は、大晦日といえば一年の締めくくりと新年を迎える日として世の中全体が浮足立ったような喧騒に包まれていたが、今は全く違う。
 シンと静まり返った闇の中を、人々は何もしゃべらず、整然とそして淡々と、ある建物に入っていく。
 そこは、「大聖堂」と呼ばれる大きな建物で、年に一回だけ門が開かれその街の人々が入っていき、10分後には反対側の出口から、また整然と出ていく。
 その不思議な光景が暗闇の中で一晩中続き、全市民が大聖堂を通り抜けた翌日の新年の朝には、何事もなかったかのように街の雰囲気は正月のめでたさに包まれ、いつもの年と同じように日々の生活を始めていく。

パーフェクトシティ(1)

2019年05月11日 | 短編小説「パーフェクトシティ」
 太陽が何の音もたてず海に沈んだ。
 都市を寒い闇が覆いはじめると、数百羽ものカラス達が街のはずれにある林のねぐらに一斉に向かいながら、寂夜の到来をカアカアと皆に告げていく。
 昼の喧騒が嘘のように静まり返り、都市から一切の社会活動の気配が消えた。
 いつもは深夜でも昼間の時間帯と同じように騒がしいその街は、年に一度、今夜だけ全ての動きを止める。
 日中たくさんの人々が出入りしている無数のビルには灯りが一切灯らず、まるで大きな墓石のように黒々と立ち並んでいる。
 ひっそりと静まった街には、静かさがもたらす清廉とした空気が流れ、日頃の汚れを洗い流すかのような厳かな雰囲気さえ漂っていた。