答えは現場にあり!技術屋日記

還暦過ぎの土木技術者のオジさんが、悪戦苦闘七転八倒で生きる日々の泣き笑いをつづるブログ。

『キューピー3分クッキング』(からの学び)

2018年02月20日 | オヤジのCCPM修業

株式会社ユニフロー石橋社長の事例発表からもうひとつ書かせていただく。

新潟で石橋さんの話を聴いたあと、遅ればせながらユニフローさんとはどんな会社か調べてみた。たぶんそのときに説明してもらってるのだろうが上の空で聞いていて頭に入ってない。われながら残念だがその程度の人間である。いやいやわたしのことなどどうでもいい、ユニフローさんだ。Wikipediaから引いてみる(そもそもWikipediaに載っているのがスゴい)。


株式会社ユニフローは、東京都品川区に本社を置く業務用ドア・シャッターを製造販売する企業である。

スーパーマーケットなどの商業店舗で見られる、売場とバックヤードを間仕切るスイングドアと呼ばれる扉(多くはアルミやステンレスで作られた自閉式の扉。海外ではswing doorまたはtraffic door)の国内最大手。市場シェアは、公称で80%である。
米国製の全自動製氷機を主とする輸入販売業として発足したが、同じく輸入商品であったスイングドアで成功したのをきっかけにメーカーに転じた。現在は自社生産しているスイングドアやシートシャッターをはじめ、軽量引戸や住宅用金具など扱い製品を広げている。

ちなみに「ユニフロー」の社名は、創業当初に扱っていた製氷機のブランド名が由来とされる。


「スーパーマーケットなどの売場とバックヤードを間仕切るスイングドアと呼ばれる扉の市場シェアが80%」ということは、ほぼどこにでもあるということだ。高知へ帰った翌々日、となり町のスーパーに行った際に確認してみると(オラの村にはスーパーがねぇ)、店員さんが出入りを繰り返すドアにはたしかにユニフローの社名とスイングドアという商品名があった。スイングドア、画像を見ると皆さんハハア~と納得してくれるだろう。

 

株式会社ユニフローHPより

 

さて、そんなユニフロー石橋社長の話が、やたらとおもしろくてタメになったというのは昨日書いたとおりだ。そのなかでも、もっともわたしにウケたのがTOC(制約理論)の根幹に関わる部分である”5Focusing Step”(継続的改善の5ステップ)の活用、題して「ボトルネックに集中して生産キャパをアップする」の巻だった。

TOCの実践を始めた彼女が、「制約は何か?」という観点から工場の組立ラインを検証してみると、あきらかにボトルネックとなっている工程があったという。しばらく観察しているとその段階を担当する人だけがアッチコッチと忙しく動き回っており、そこで生産工程の流れが阻害されている。それを発見した石橋さん、ハタと思い当たることがあったという。あの人気長寿TVプログラム、「キューピー3分クッキング」だ。あそこでは短時間で料理を仕上げるために、ときには切る、そしてときには煮る、焼く、炒める、それぞれの工程をすでに済ませた材料が、料理担当者が動き回らなくてよいようにあらかじめその周りに用意されている。あれこそが制約条件への集中であり制約条件の活用だと思い当たった彼女がとった方法は、他工程の担当者にボトルネック工程担当が作業に集中できるための作業を振り分けたこと。そうすることによって、生産のキャパシティが150%アップしたのだという。

この手の話によくあることだが、あとから聞く人間にはそれほど難しいこととは感じられないかもしれない。「な~んだ、そんなことか」「そんなこと、誰でもわかるじゃん」てなもんである。ましてや、イスラエルまで行ってTOCの祖Dr.ゴールドラットに直接師事したという彼女には、すでにそれだけの知識も理解もあったのだろう。だが、それだけではないのだ。そして、単に「やったこと」が素晴らしいだけで成果があがったのではないのだ。TOCと「キューピー3分クッキング」を結びつけられる頭脳と心の柔軟さにこそ石橋さんの凄みがある。社長業をする以前は専業主婦だったという彼女が、たとえば「キューピー3分クッキング」という、自らが身体性をともなって存在する自分のテリトリーに、TOCという、これから拠って立とうとするあらたな理論と知識を整合させた。そこから、脳内での理解が身体性をともなった知悉に進化し、それから生まれた言動が人を動かしたのではないだろうか。(全て推測です、スミマセン)

それは、われとわが身、あるいはアナタとアナタの身に置き換えてみればよくわかる。たとえば、「キューピー3分クッキング」を見て、人はまずどんな反応をするのだろう。

「この番組って3分じゃないよね」「3分で仕上がらない料理ばっかりじゃん」「すでにつくってるのはインチキでしょ」と懐疑的な反応をしてしまう人。はたまた素直に、これは時短料理のヒントだととらえ自分自身のレパートリーに入れる人。生来の天邪鬼であるわたしなぞは、たぶんに前者的な反応をしてしまうのだろう。だが彼女は、学んだ制約理論を実践するにあたってTOCと「キューピー3分クッキング」を合体させるということで見事に身体に落とした。繰り返すが、ここに石橋さんの凄みがあるとわたしは思う。「張良と黄石公の逸話」(※)からもわかるように、あるコンテンツから学びが起動するとき、たいせつなのは教える側の優劣やコンテンツの良し悪しではなく、学ぼうとする側の感性にあるからだ。

「なんとまあしなやかな感性だろうか」

彼女の話を聴きつつわたしはそう感じた。「かくありたいもんだ」とも思った(できるかできないかは別として)。そして(これが肝心なところだが)、これから先の拙講拙話に「キューピー3分クッキング」の話をチャッカリ拝借しようと決めた。(あとでご本人の許可をいただきました)


以上で株式会社ユニフロー代表取締役社長石橋さゆみさんの事例発表聴講記(のようなもの)はジ・エンド。またどこかでお会いし聴かせてもらえれば、また別の「気づき」がありそうで、今からその日が楽しみなのである。



張良と黄石公(『日本辺境論』内田樹、新潮新書、より)

張良というのは劉邦の股肱の臣として漢の建国に功績のあった武人です。秦の始皇帝の暗殺に失敗して亡命中に、黄石公という老人に出会い、太公望の兵法を教授してもらうことになります。ところが、老人は何も教えてくれない。ある日、路上で出会うと、馬上の黄石公が左足に履いていた沓(くつ)を落とす。「いかに張良、あの沓取って履かせよ」と言われて張良はしぶしぶ沓を拾って履かせる。また別の日に路上で出会う。今度は両足の沓をばらばらと落とす。「取って履かせよ」と言われて、張良またもむっとするのですが、沓を拾って履かせた瞬間に「心解けて」兵法奥義を会得する、というお話です。それだけ、不思議な話です。けれども、古人はここに学びの原理が凝縮されていると考えました。(P.142)

張良の逸話の奥深いところは、黄石公が張良に兵法極意を伝える気なんかまるでなく、たまたま沓を落としていた場合でも(その蓋然性はかなり高いのです)、張良は極意を会得できたという点にあります。メッセージのコンテンツが「ゼロ」でも、「これはメッセージだ」という受信者側の読み込みさえあれば、学びは起動する。(P.148)



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