裁判所があるのに常駐の弁護士事務所がなく、「ゼロ地区」と呼ばれる大津地裁長浜支部管内に今年6月、新しい事務所が開業する。司法過疎の対策として、日弁連が新設した支援制度を適用した全国初のケースで、近畿で唯一の「ゼロ地区」が解消することになる。
滋賀弁護士会によると、長浜支部管内には非常駐の弁護士事務所が一つあるが、2004年から常駐の事務所がない状態が続いているという。
開業するのは、薮下貴幸弁護士(35)。東京の法律事務所で1年間勤務した後、昨年11月に滋賀弁護士会に登録した。現在は大津市内の事務所に所属しており、6月をめどに長浜市内で独立するという。
弁護士が大都市圏に集中している現状を変えたいと志した薮下弁護士は「長浜に骨を埋める覚悟。法律を知らずに泣いている人を救いたい」と話している。
弁護士は全国で約2万2000人いるが、東京に約1万人、大阪に約3000人で都市部への偏在が問題になっている。このため、日弁連は昨年7月、司法過疎地で働く弁護士を経済的に支援する制度を新設した。薮下弁護士は、そのうち赴任準備資金100万円を貸し付ける支援制度の適用第1号となった。
現在、弁護士の「ゼロ地区」は全国で長浜支部、福岡地裁の柳川支部、大分地裁の杵築支部の3カ所しかない。
長浜での開業について、日弁連は「偏在の解消に向けて意義深い」と評価し、滋賀弁護士会は「長浜の法的ニーズに応えてほしい」と期待している。
(2008年1月1日付け京都の記事)
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2008010100029&genre=C4&area=S20