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【0809/64:原発問題】講演会「若狭で原発事故が起きたら」:5時間足らずで湖南地域にも放射能の雲

2008-09-09 00:38:39 | Weblog

滋賀県から至近距離にある福井県若狭に存在する原子力発電所や高速増殖炉「もんじゅ」で大きな原発事故が起きる可能性について考える講演会が9月6日午後、草津市立まちづくりセンターで行なわれ、草津や大津、彦根、甲賀などから約40人の市民が参加しました。

講演に先立ち、チェルノブイリ原発事故の処理にあたった作業員のその後を記録したドキュメンタリーが上映されました。この講演会の講師を務めたのは長年にわたり高速増殖炉増殖炉「もんじゅ」の危険性を指摘し、運転に反対している市民団体《ストップ・ザ・もんじゅ》(枚方市)の大島茂郎さん。大島さんの講演の概要は以下のようなものです。

■地震と原発
欧米のほとんどの原子力発電所が大きな地震が稀にしか起きない地帯に設置地されているのに対し、台湾や日本は活断層が多数存在する地震集中地帯の上に設けられているため、地震が引き金となった原発の大事故が懸念される。また、昨年7月の中越沖地震で柏崎刈羽原子力発電が大きな被害を受けたことから明らかになったように、日本のほとんどの原発において想定されている地震の揺れは中越沖地震での揺れを大きく下回っている。そのうえ敦賀原発、美浜原発、「もんじゅ」が設置されている、滋賀県から至近距離の敦賀半島では、これらの原子力施設の真下あるいは近くに活断層が存在していることが最近になって次々と明らかになっている。

■老朽化が進む若狭の原発
若狭では13基の原発が稼動しているが、大半の原子炉が運転開始から20年を越しており、30年以上経ているものも少なくなく、老朽化が進んでいる。このため事故にまでは至らない小さなトラブルが次々に起きており、また2007年一年だけでも約10件の事故が起きている。このような事実を滋賀県の人々は知らないかもしれないが地元紙・福井新聞では連日のように原発における事故やトラブルの発生が報じられている。

このように原発が地震による被害を受ける可能性が大きく、そのうえ老朽化が進みトラブルや事故が続発していることを考えた場合、若狭の原発でいつ大事故が起きても不思議でない状態にあり、滋賀の人々は大事故が起きた場合のことも考えておかなければならない。

■心もとない事故時の国や自治体の対応
長いあいだ日本では原子力防災はまったく考えられてこなかったが、東海村にある燃料加工工場JCOでの臨界事故(1999)の後、原子力災害特別措置法が制定され、自治体の防災計画が見直された。しかし防災計画が義務づけられているのは原発のわずか半径10キロ以内だけであり、防災計画は机上のものに過ぎず、実効性は当てにならない。

■若狭の原発で大事故が起きたら
事故で漏れ出した放射能による被害の程度は風向きに大きく左右され、風下での被害が大きくなる。若狭では、特に冬季は、北~北西の風が吹いていることが多いことを考えた場合、風下にあたる滋賀県にまで放射性物質が到達し、人体が被害を受けたり、琵琶湖の水が汚染されたりする可能性が生じる。若狭湾の原発から講演会場の草津市までの距離はおよそ60~80キロであり、秒速5メートルで北西の風が吹いている場合、5時間前後で湖南地域に放射能の雲が到達する。もっと強風であればわずか数時間で到達する。草津など湖南地域に住んでいる場合は、風向きとは直角方向の京都や大阪方面に、西方向に逃げ出すことが必要。しかし、道路は非常な交通渋滞に陥り身動きできない状態になる可能性が大であり、また鉄道なども人々が殺到してスムーズに運行されるとは限らない。逃げ遅れた場合、逃げ出すのが不可能な場合は、最低3日~1週間程度の水と食糧を確保して、窓やドアを目張りして放射能の侵入をできる限り防ぎ自宅にこもり、放射能の雲が通り過ぎるのを待つしかない。

講演の後、参加者からは「やはり、根本的には脱原発が必要」「エネルギー大量諸費のライフスタイルの見直しを」「滋賀県の原子力防災はどうなっているのか」「清潔な水を確保するにはどうしたらよいか」など様々な意見や質問が交わされました。

最後に大島さんは「ひとたび原発で大事故が起きたら、壊滅的な被害が生じ、日本経済は麻痺することになる。とにかく今自分たちがどのような状態に置かれているのかをしっかり認識し、一人一人が原発問題について真剣に考え、自分のできることは何か模索してほしい」と語りました。

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(9月8日、ブログ編集による直接取材)

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