因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

シンクロ少女ギャラリー公演『オーラルメソッド2』

2012-11-11 | 舞台

*名嘉友美作・演出 公式サイトはこちら (1,2,3,4) 東中野レンタルスペース 15日まで
 ウェス・アンダーソン監督の同名の映画をアレンジした『ダージリン急行』(50分)と、オリジナル作品『オーラルメソッド2』(25分)を続けて上演する。JR総武線、都営大江戸線東中野駅前のファミリーマートの2階、マンションの一室が今回のギャラリー公演の会場だ。ほんとうに小さな可愛らしい部屋で、客席は椅子と座布団あわせて10人分。当然ながら演じる俳優さんはすぐ目の前である。ここまで近いとこちらも開き直るしかない感じで(笑)、しかし息苦しさがないのはこのユニットのもつ不思議な力であろう。

 

*『ダージリン急行』
 喧嘩して5年会っていなかった男きょうだい3人が、虎に襲われた人を救い出すために、子どもたちを捨ててインドに渡った母親に会いにダージリン急行に乗りこむ。みなけっこういいトシだが、仕事もプライベートもいまひとつで、自分の秘密を「ぜったい言うなよ」と言ってはしゃべり、「ぜったい言わない」と約束しながらすぐばらしてしまう。この3人のやりとりが抜群におもしろい。小さなスペースなので思いきり笑いにくいのは残念だったが、映画がベースになっているとはいえ、名嘉友美の書く「男子の会話」は新鮮だ。これは映画をみないことには。
 母親と再会した息子たちは、クィーンの曲を狂ったように歌いながら自分たちの思いをぶつける。少しダンスも加わってなかなか手の込んだ場面だ。本家本元の映画やクィーンの『ボヘミアン・ラプソディ』(で合っていますか?)をよく知っている人なら、両者の相関関係や作劇の意図もおそらくわかるのであろう。
*女性3人が飲み食いしながらおしゃべりをする。シンクロ少女を主宰する劇作家・演出家の名嘉友美とその周辺の男女といった趣向で、俳優は自分の名前そのままの役で登場する。誰と誰がつきあっていたがいまはちがうとか、二またをかけているようで微妙に違っていたり、おそらく創作であるとは思うが、作り手自身が趣向を楽しみつつ、自虐が感じられる複雑なもの。

 いつものシンクロ色を求めるなら後者だが、自分は映画をアレンジしたはじめの1本をより楽しんだ。母親は社会的使命感に燃えてわが道をゆくが、息子たちは母親に愛されている確信がほしいと取りすがる。男の子の母親への思いは、女が想像するより遥かに甘やかな聖域なのだろうか。

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