いかりや爆氏の毒独日記

最近の世相、政治経済について「あれっ?と思うこと」を庶民の目線から述べていきたい。

食料自給率40%と愚かな新自由主義信奉者

2009-07-13 16:42:48 | 日記

 池田信夫というジャーナリスト?著名な経済学者かどうか知らないけれど、彼のブログに「食料自給率という幻想」と題した文章がある。彼の論旨のさわりの部分を以下紹介する。

”” この問題についての経済学者の合意は「食料自給率なんてナンセンス」である。リカード以来の国際分業の原理から考えれば、(特殊な高級農産物や生鮮野菜などを除いて)比較優位のない農産物を日本で生産するのは不合理である。そもそも「食料自給率」とか「食料安全保障」などという言葉を使うのも日本政府だけで、WTOでは相手にもされない。””

 ”” 食料の輸入がゼロになるというのは、日本がすべての国と全面戦争に突入した場合ぐらいしか考えられないが、そういう事態は、あの第2次大戦でも発生しなかった。その経験でもわかるように、戦争の際に決定的な資源は食料ではなく石油である。その99.7%を輸入に頼っている日本が、食料だけ自給したって何の足しにもならない。それより1993年の「コメ不足」騒動でも明らかになったように、普段から輸入ルートを確保しておくほうが供給不足には有効だ。””

”” 1960年には80%もあった自給率が半減したのは、単なる都市化の影響ではない。最大の原因は、米価の極端な統制だ。コメさえつくっていれば確実に元がとれるので、非効率な兼業農家が残り、コメ以外の作物をつくらなくなったのだ。こういう補助金に寄生している兼業農家がガンなので、民主党のようにまんべんなくばらまくのは、もってのほかである。所得補償をやるなら一定規模以上の専業農家に限定し、米価を含む農産物価格の規制や関税を全廃し、兼業農家を駆逐する必要がある。 ””

 上記、池田信夫氏の言説は、典型的な新自由主義的発想=市場原理主義万能論者の短絡的発想です。 天真爛漫と言えば言えなくもないけれど、幼稚すぎるのとちゃいますか? 実体経済を知らない机上の空論に基づく乱暴な主張である。こういう輩(やから)に限って、輸入食品の大半を占める中国原産品は、「やばいから、やーめた」と言って日本産にこだわっているに違いないのです。言っていることと、行動は違うのです・・・勝手気ままなところが新?自由主義者らいしい。
 日本の食料自給率が、異常に低いのは前回でも述べたが、極めて単純な理由からです。農業は採算にあわない、いくら作っても作っても、「採算にのらない」からです。
 
 採算に乗らなくしたのは、何か何故かを考えるのが本日のテーマです
 先日(6月30日)農水省が公表した今年2月1日の現在、この1年間でさらに5万1千世帯減少して、全国の農業経営体数は175万3千、農業従事者(販売農家)に占める高齢者(65歳以上)の割合は60.5%になっている。年々農業従事者は減少しています。農家をやめざるを得ない状況に追い込まれているのです。最早、日本の農業は絶滅危惧種に近い。

 最早、農業は自然を相手にした、魅力ある仕事であるなどときれいごとでは済まされないのです。農業は仕事として成り立たないところが問題なのです。農家が作った作物が、採算に合う値段で売れないからです。

 採算にのれば農業従事者も増えるし、若者も安心して農業の跡継ぎができる。都心近郊の農家でさえ、野菜をつくる農家は少なくなっています。

 何故、かくも日本農業は採算ベースにのらないのか。原因はおおまかに、二つの要因があります。一つは、日本人の貧乏化減少、もう一つは為替にあります。

 ワーキング・プアーに代表される大量の貧しい人をつくりだし、社会全体が安物指向になった。

 毎日、東京成果市場の野菜の相場が公表されています。直近(7月11日)の野菜相場のうち、例えばネギ、茨城産、5kgで3465円(100gあたり69円)です。近所のスーパーで中国産のネギは3本(約300g)135円(100gあたり45円)で売られていました。

 できることなら、禁止農薬や基準値を超える農薬などが懸念される中国産より、値段が高くても国産品を食べたいと思う。しかし、中国原産ものと、日本原産ものと値段の較差がこれだけ大きいければ、年収低下の折から、毎日の食事のことであり、つい安いほうを買わざるを得ない。

 さらに言えば、スーパーなどで中国産野菜を買わなければ、中国産のものを口にしないですんでいるというわけではありません。安い中国産は、ファーストフードや、加工されて惣菜や弁当など業務用として大量に日本人の口に入っています。惣菜など加工食品は、原産地証明は義務付けられていません。惣菜や出来上がり食品は、手間暇かけて自分で作るよりも安いのも魅力です。その安さの秘密は極端に言えば「まるごと輸入食品」だからです。
 日本の社会全体が、輸入食品に依存する体質にしてしまったのです。

次に為替について

 輸入食品の安さの秘密は為替(円高)です。現在の為替は1USドルは90円台ですが、これまで輸出を謳歌していた輸出依存企業も、さすがにこのレートでは、軒並み赤字を出して青くなっているはずです。輸出主体の製造業は、利益を絞り出すのは大変厳しいものと思われる。

 話をわかりやすく単純化して車1台を輸出した場合を考えます。1台1万ドルの車を為替レート:1ドル110円の場合は、車1台の売り上げは110万円になります。このとき車1台あたりの*利益が5万円だったとします。

 為替レートが1ドル95円になった場合のこの車の売り上げは、95万円です。単純計算すれば、10万円の赤字になります。売れば売るほど赤字が増えることになります(勿論、輸出入業者は為替変動のリスクを避けるため為替の先物予約を利用しているものと思われますが、予約のコストもかかる、せいぜい半年先程度でしょう)。
*参考までに言えば、通常の貿易(輸出入)取引の場合、売り上げ額の5%前後の利益を目処にしているところが一般的だと思います。

 現在の1ドル90円台の為替レートは異常だとしても、1985年のプラザ合意以降急激な円高がすすみ、1990年代の前半から昨年までの100~120円で推移してきました。1ドル110~120円は、自動車や精密機械や電子商品などの輸出向け用のレートです。農業はいわば、為替レートの被害者です。農家への補助金は、ばら撒き行政であると非難する人がいますが、必ずしも当を得た批判ではないのです。
 日本の産業構造は、これまで輸出に特化した「いびつな産業構造」になっているのです。
 次回は、もう少し為替の問題を扱います。