保津川下りの船頭さん

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保津峡でハイカー事故に思う・・・

2007-12-17 00:39:25 | 船頭
この秋、保津峡ではハイカーの負傷や遭難が相次ぎ、
我々船頭が船の操船中に発見、救助するという事態が
数件も発生しました。

同消防署の調べでは10月下旬以降、10件もの
事故があり、中には死亡したり重傷を負ったケース
もみられました。
最近、どうも保津峡の山間を歩くハイキングが
中高年の間で流行しているらしいのです。

保津峡はいわずと知れた、大自然が創った天下の要害。
標高こそ300mそこそこだが、太古の隆起後に川の
侵食で形成された典型的なⅤ字谷で傾斜も厳しく、歩行
する際の足場もない箇所も多く、けっしてハイキングに
むいている山ではありません。

我々も川のゴミ掃除や航路整備の川作業の際に
この渓谷を歩くことがありますが、途中で道が
無くなってたり、片足ほどの幅しかない道を崖に
へばり付きながら歩行しなければならない箇所も多く、
歩き慣れた者でも最善の注意と慎重さを要する所です。
それを、ガイド役も付けず、満足な下調べなしに
市販の地図を頼りに歩かれる中高年の方々。
足腰のしっかりした若者でも足場を決めるのがきつい
保津峡を歩かれる中高年の人たちの姿を、時折、船から
目撃することがあったのですが、目撃する度に
「大丈夫かな~?」といつも背中にさむいものを
感じながら眺めていました。

また、秋は落葉も多く、朝露で濡れた落葉に足をとられ
崖から転落する可能性も高く、危険度は他のシーズン
よりも高いといえます。

そして、危惧したことが現実となり、今年の秋
ハイカーの事故が多発、遊船の船で救助する事態
となったのです。
崖から転落し河原で負傷にしながら、船に助けを
求めるハイカーの人、また崖に宙ぶらりんのまま
引っ掛かり気を失っている人、それに山道で迷い
遭難し一夜を極寒の保津峡で過ごした人など様々
ですが、どの方もかなり深刻な事態には変わり
ありませんでした。

発見後は、先ずお客さんに断わり、船を止めて負傷者や
遭難者の救助に当ります。無線で消防署と警察署に連絡
し、時には救急車やヘリコブターが入れる所まで
船で搬送することもありました。

保津峡を歩くことで見れる風景の素晴らしさは
我々には本当によくわかります。
谷をと落ちる小さな滝、深く折り重なる山々、
日光を浴び光る紅葉と川面など、自分の足でその場所に
向かわなければ見ることの出来ない‘自然’がそこにあります。

その風景を求めて歩かれる気持ちはよくわかりますが、
保津峡を甘くみてはいけません。自然はけして人間の都合よく
は迎え入れてくれないこともあります。
歩かれるなら‘歩ける場所’を徹底的に調べ、保津峡に詳しい
ガイドと一緒に来られるのが絶対にいいと思います。

自然と触れ合うには、人間が自然に合わしていくこと
が最も大事な‘心がけ’だと、日々自然と生きる者として
強く感じる次第です。




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