学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

「戦国!井伊直虎から直政へ」展を見る

2017-08-08 21:07:43 | 展覧会感想
現在、NHK大河ドラマで「おんな城主 直虎」を放送しています。日曜日は仕事のことが多いので、今はなかなか見れていないのですが、以前はよく大河ドラマを見ていたものでした。武田信玄、独眼竜政宗、信長、秀吉などなど、いずれもだいぶ昔の放送になりますけれど、もっぱら戦国時代を好んで見ていました。さて、東京での展覧会は終わってしまいましたが、江戸東京博物館で「戦国!井伊直虎から直政へ」展を見てきました。

展覧会は、そのタイトル通り、今川家と井伊家との関係から始まり、徳川家に仕えて大坂の陣を迎えるまで、井伊家がどのように戦国期を生き抜いたかがテーマ。「直虎」自体の資料はそう多くはないのですが、その周辺の資料を展示することで、戦国期に置かれた井伊家の立ち位置がどのようなものであったのかを浮き上がらせています。展示資料が多いぐらいで、とても見ごたえが十分。そのなかでも、私が面白いと思ったのは《太原雪斎木造》です。今川家の外交を担った僧の木造なのですが、造形がなかなか興味深いものでした。といっても、私は彫刻は素人。素人目に見た感想です。《太原雪斎木造》の顔の表情、具体的には額のしわ、目つき、口廻りなど、その場に雪斎僧がいるかのような写実的な表現に見入りました。というのは、日本では運慶や快慶に代表される鎌倉時代の一連の彫刻に写実性を見ることができます。彫刻の技術としてそれが長く続くことはなかったのですが、《太原雪斎木造》にその名残のようなものを見たような気がしたのです。鎌倉時代のような真に迫るような迫力はないけれど、どこかその影を引きずっているような印象。興味深いものがありました。

さて、展覧会はこのあと静岡県立美術館、彦根城博物館へも巡回するそう。もう一度、観に行ってみようかな。