そもそも、私は、横着者で自分勝手、そして、たくさんベラベラ次から次へと喋るのは得意でない。
そのせいか、人付き合いも行動範囲も、狭い。
これは、年を重ねるにつれて、どんどん狭くなっている、いや、狭くしている自覚がある。
それでも、たまには、人と繋がる。
旧友というべきセンパイたちと、夕食、久しぶりに集まることになっていた今日、ハヤコを置いてお出かけだ。
今日の私は休日。昼間には家にいて、夕方になって出かける。
そういうことは、ハヤコが犬娘になってから、とんと少なくなっている気がする。
私が朝からシゴトへ行って夜遅くまで帰らないということは、ちょくちょくあっても、昼間家にいて夜だけいないというのは、ハヤコにしてみれば、滅多にないことだ。
ハヤコにとっても久しぶりなパターンだ。
夕方、私はハヤコの散歩から帰って、ハヤコに言う。
「かあさんね、いまからお出かけなんよ、はちゃん行かれんの、かあさん遊びに行ってくるけんね、お家におって、お留守番しといて、な。」
ハヤコは、真剣な目をして、僅か首が傾いている。
ジッと私に目を向け、たぶん、ハヤコなりに何か考えている、いくらかの間、動かない。
ハヤコはどこで判断を下すのか、いつも不思議なのだが、やっぱりハヤコは判断を間違えない、私が出かける時には、自分が一緒に行けないことを身に収め、我慢の顔になっていた。
そして、数時間後、外はすっかり真っ暗になってから、帰宅する。
ハヤコは、明かりを消された暗いばあちゃんの部屋から、外の暗闇をジッと眺めていた、私の姿を、暗闇の中に捉えようと、待っていた。私の不在は数時間というのに、玄関で再会した時には、熱烈。
朝からシゴトに出かけて夜遅く帰るのとは、少し違った様子。
きっと、ハヤコからすると、朝から私がいないことは日常茶飯事なので、慣れっこなのだ。
でも、夕方から私がいないということは、理解しがたいのだと、そんな気がする。
それでも、おかしな駄々こねず見送って、ひたすら私の姿を見つけるために暗闇を凝視して、姿を確認したら玄関に跳ねて向かい、姿を目の前にすれば、全身で喜んでくれる、そんなコが、どこにいようや。
更に夜が進んでいる今も、ハヤコは眠たい顔で、私が遊んでいるこの部屋で、目を閉じたり開けたりしている。
ハヤコの世界は、私の世界よりも、もっともっと狭いのだろう、その狭い世界の中に、私は、たぶん、中心として、存在している。