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残雪の火打山              2018年5月1日  ( 夜行 日帰り )

2018-05-01 | 

 

  笹ヶ峰 ― 高谷池ヒュッテ ― 火打山 ― 黒沢池湿原 ― 笹ヶ峰        ( 新潟県 )

 

 理想の残雪遊びエリアとして、まず思い浮かべる妙高・火打山。森林限界を越えた高地に、高山植物咲き乱れる湿原が点在し、それらすべてを豪雪が覆い隠して出現するスロープは広大そのもの。一年ぶりの山行きは、そんな残雪のパラダイスエリアを訪ねてみた。

 

 前日夕方から、ひたすら下みちで妙高高原へと向かう。道の駅 “ しなのふるさと展望館 ” で車中泊をして、翌朝、まだ月明かりのもと、登山口となる笹ヶ峰へとふたたび車を走らせた。
 笹ヶ峰は娘がまだ小学校に上がる前ごろに、家族でキャンプに訪れた地だ。車が牧場エリアに入ると、当時を思い出させる懐かしい光景が広がっていた。

 例年より1週間以上も早い桜の開花や新緑に、あわてて出向いた感があったが、ここでの新緑はまだまだ早かったようだ。休暇村の広い駐車場に車を停め、早朝の山をバックに愛車を写真に納める。数日後に新しい車が我が家に来ることになっていて、この山行きの移動が、27万kmを走ったこの車の最後のドライブとなるのだ。

 
 登山道入り口のゲートで登山カードを記入し、ブナ林の中を歩きはじめる。木道はまだ雪に埋もれていて、ところどころにあるピンクテープの目印を見つけての前進だ。1時間程が経ち、大きな沢をひとつ越えて現れる十二曲がりと呼ばれる急登の途中で、二人連れの登山者に追い付く。このあたりから雪も深くなり、針葉樹の尾根筋に到達したところでアイゼン装着を兼ねた初めての休憩をとった。あわせて雪焼け対策もしっかりと施す。

 大きな針葉樹の間をぬって更に高度を上げてゆくと、突然、ザーッという音とともに、スキー登山者がターンをしながら滑り降りてきた。昨夜、高谷池ヒュッテに泊まった登山者に違いない。わりと高齢の方のように見えたが、きっと上部は多くのスキーヤーがいて、広大な雪の斜面を自由に滑っているのだろうと思うと、急にワクワクしてきた。

 次第に傾斜が緩くなり、シラビソの背丈も低くなると、ここで目の前にドーンと火打山一帯のスノーエリアが現れた。点在するシラビソ林の間に高谷池ヒユッテの三角屋根も見える。

 
          シラビソ林に溶け込むように建つ三角屋根の高谷池ヒュッテ

 
 火打山は山スキーに最適なスロープを用意して、その下に続く広大な雪原は、まさに自然が作り上げたパラダイスゲレンデ。その光景をカメラに収めたり、ぐるーっと周りの雪原に目を馳せたりと、目的の場所に到達した喜びに浸った。さらに高谷池ヒュッテの前では、居酒屋の小上がり席のように足元の雪が掘られたベンチに寝転がって、ゴールデンウィークの明るい雪の休日を楽しんだ。

 小屋のスタッフに今年の残雪について尋ねると、今年はかなり少ないと言い、掘られた雪の壁を指差すが、それでもそこに立て掛けてあるスキー板の長さから判断すると、4メートル近くはまだあった。


                
                          火打山から焼山(左端)への連なり


 真っ黒に日焼けしたスキーのグループが火打山の斜面を滑り終え、ヒュッテに戻って来るのと同時に、私もそこを目指して立ち上がる。コースタイムはここから1時間半程だが、山頂直下が結構きつそうだ。
 まずは池の上と思われる雪原を歩き小高い丘に立つ。ここから眺める火打山から焼山への稜線は、スケールが大きくみごとだ。自分ならどこをどう滑って降りようかなどと、スキーも持っていないのに勝手に滑降ルートを描きながらひたすら登る。
 振り返れば高谷池ヒュッテも小さくなり、代わりに妙高山がその姿を大きく見せている。今朝、歩き始めてからもう6時間近くが経っていたが、頂上まであとひと息。無立木の急斜面を黙々と登った。

 頂上はほとんど雪が溶けて、石コロだらけだった。ゆっくりと腰を降ろし、おにぎりをほおばりながら360度の展望を楽しむ。今も水蒸気を噴出している焼山の北側斜面は、溶岩が流れた時にできた谷筋が幾つもあって不気味な様相を呈していた。

さて、 いよいよお待ちかねの下りだ。斜面の途中に目標物を決め、そこを目指して降り進もう。山頂直下は傾斜がきつく、尻セードで下るには少々危険と判断。ツボ足でおりるが、それでもその一歩が2メートルはあろうかという歩幅で降りて来るので爽快だ。
 
あまり直線的に降り過ぎてしまうと、最後に登り返しがあるように見えたので、途中からはやや斜めに灌木地帯を抜け、20分程の大斜面下りは無事終了した。
 
( 楽しかったー。 )
 
そして再び高谷池ヒュッテまで、のんびり歩きを満喫した。


 

 


 再びヒュッテ前のベンチで休憩したあと、黒沢池方面を経由する帰路につく。道は雪に埋もれているので、GPSを頼りにしながら進み、だいたい想定どおりに黒沢池ヒュッテへの乗越し地点に立つことができた。

 ここに立ち眼下に目をやると、
 
(えっ、こんなところに?)
 
と意外に思うほどの、広々とした雪原があった。そこは妙高・外輪山の裾野に出来た湿原で、写真集や地形図から想像していたお目当ての雪原だ。童心に帰って、とにかく縦横無尽に足跡をつけてみたい。そして今、そこを見渡すところに立ち、しばらく鳥肌が立つ思いで眺めていた。


    
    
     妙高外輪山の外側、黒沢池付近の湿原は ” プチ尾瀬ヶ原 ” といったところ。 人影は無い。

 
 このあと黒沢池ヒュッテに立ち寄り、そこでトイレを済ませる事を考えていたが、我慢出来ずに、途中、斜面に1本だけ立つシラビソの根元の雪穴の淵にしゃがむ。目の前に広がる壮大な景色と、ヒヤッと冷たい雪の感触に、とても新鮮なリラックスタイムを味わった。

 ここから雪原に向かっての斜面は、たとえ転んでも最後は止まるので安心して走り下れた。平らな雪原に降り立ち、今度は底部から周りの斜面を見上げてみる。黒沢岳からの斜面は少し急だが傾斜は一定で、ここも転んだまま滑り落ちたとしても、最後は底部で止まるから安心して遊べそうだ。自分だけのプライベートゲレンデとして、黒沢池ヒュッテをベースに、いつかここでスキーをしてみたい。

 

 
 陽が傾き、樹木の影が長くなったところで、いよいよ夢のような場所からも去る時刻が来た。GPSを頼りになるべく等高線を水平に進み、午前中通過した富士見平付近のトレースを目指す。
 朝、樹林の中を下から見上げていたルートに、夕刻近くに横から合流しようとしても、気づかずにそこを横切ってしまうようで、何度か行き過ぎながらもジグザグにルートを修正して、ようやく登って来たルート上に出た。あとは見覚えのあるトレースを着実にたどり、笹ヶ峰の駐車場へと降りるだけだった。

 

 

                
                   今回のドライブで引退。愛車 ” オデッセイ ”   笹ヶ峰にて

 

 笹ヶ峰 6:00 ― 高谷池ヒュッテ 9:50 ― 火打山山頂 11:50 ― 黒沢池湿原 ― 笹ヶ峰 18:00

 


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