鳩山テラス


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唐松岳 ( 八方尾根 往復 )           2014年5月6日

2014-05-06 | 

 

                                         ― 北アルプス 長野県 白馬村 ― 

年のゴールデンウィーク。待望の残雪登山は、八方尾根からの唐松岳で楽しんだ。

 夜中に家を出発して、一般国道、上信越道、白馬長野道路と経由して、白馬・八方尾根スキー場に着いたのは朝6時ごろ。ゴンドラ乗り場前の駐車場は有料(500円)だったので、少し離れた第3駐車場(無料)に車を停めて、さあ出発。見上げる空はまだ雲に閉ざされているが、これから移動性高気圧に覆われ、次第に晴れてくる予報である。

 ゴンドラの運行は7:20からで、まだ時間があったが、既に30メートル程の列ができていた。乗り場の横に登山案内所があり、登山カード提出のために立ち寄ると、一応、装備と食糧持参の有無を確認され、「昨日は降雪があったので、早めにアイゼンを付けてください。今、上は快晴無風だそうですよ」とのこと。“上”というのはおそらく唐松岳頂上山荘のことだろうが、やはり雲の上なのだ!早く行ってみたい!!

 ゴンドラとクワッドリフト2本を、ほぼ先頭集団で乗り継いでスキー場最上部に到達。スキー客が殆どだが、それに混じって私のようないでたちの登山者が十数人。思っていたほど多くない。皆、唐松岳山頂、又はその途中までの日帰り往復なのか、重装備の人は見かけなかった。
 歩き出しは夏道の現れているルートを進み、20分程登ったところで雪道に変わった。傾斜も緩く、トレースもしっかり残っているので、まだアイゼン無しで充分に歩ける。このころから雲もとれて、右手には雪をまとった白馬三山が、その雄姿を見せはじめた。

 ダケカンバの疎林(下樺尾根合流点)をくぐりぬけるといよいよ傾斜が増し、ここでアイゼンを付ける。三角錐のピークに向かって一直線にトレースが有り、そこをひたすら登る。すぐ脇には下山時に何人もの人がやったのであろう、尻セード(雪の斜面を滑り台のように滑ること)の跡が出来ていた。自分も帰りは絶対やるぞ!と、今から心がはやる。


                        尻セードの跡が残る斜面。帰り道が楽しみ。


 次に現れるもう一つの疎林(上樺尾根合流点)を過ぎると、目の前にドーム型の丸山が現れ、その先に、雪で丸みを帯びた雪の尾根が山頂まで続いていた。すでに唐松岳山頂や不帰嶮(かえらずのけん)の岩稜帯を間近に見えるところまで来たのだ。このあたりから急に雪も締ってきて、しかも春山特有のザラメ雪ではなく、硬い片栗粉の上を歩いているようで快適。しかし、あたりは強風帯でもあり、前進を躊躇するくらいの風が吹いている。あんなに幅広かった八方尾根も、今は切り立った馬の背状の尾根となり、一人分のトレース幅を残すだけである。


 


                      八方尾根上部をゆく

 吹きさらしの岩場にロープが現れ、これをよじ登ると後立山連峰の稜線に飛び出した。大きな谷(黒部渓谷)を隔ててそびえたつ剱岳、立山の両雄姿に、しばし無言で対峙する。

 ふと、煙臭さに我に返り足元に目をやると、一段低い鞍部に建つ唐松岳山荘に気が付いた。ここから小屋へ行き、休んでも良かったが、もうひと踏ん張りして、先に唐松岳山頂を極めることにする。

 唐松岳山頂は岩塊が雪の下に隠れているので、なだらかな頂となっていた。風は非常に冷たかったが、ここでおにぎりを食べながら360度の展望を楽しんだ。五竜岳は、ここからだと逆光になってしまうが、どっしりと大きな山容をみせている。そして、人によっては槍、穂高間の大キレットより怖い、といわれる不帰嶮(かえらずのけん)方面にトレースは無かった。
 寒さに耐え小一時間ほど頂上に居たが、この間、数人がやって来ただけの静かなひと時だった。


                 唐松岳と不帰嶮(かえらずのけん)へと続く稜線


 
                       唐松岳頂上山荘と五竜岳

 
 降り立った小屋では、アイゼンを取るのが面倒なので中には入らず、このまま小休止だけして下山にとりかかる。麓のリフトの最終時間は16時なので、今の13時という時間は、まだゆっくりと下れる時間帯だ。白馬村の家並みや、みそら野ペンション村が箱庭のように見え、なかなか高度感のある尾根下りを楽しむ。
 下る右手に五竜岳と、その奥に覗く鹿島槍ヶ岳。左手には朝からずっと眺めている白馬三山(白馬、杓子、白馬鑓)と栂池高原が広がり、壮大な山岳美を堪能させてくれた。


                      五竜岳とその向こうにのぞく鹿島槍

 午後のこの時間でも、この上天気に誘われ下から登ってくるスキーヤーはまだまだ居て、広大な八方尾根は思い思いのスタイルで楽しめるフィールドとなっていた。本当に今日、来てみて良かったと思う。丸山あたりまで降りてきたところでは、このまま一直線に下ってしまうのがもったいないので、誰も歩いていない広々とした雪の斜面に入り込み、遠回りをしながら下った。

 登りの時に目星をつけていた尻セードの斜面まで降りてきた。迷わず尻セードで下る。昨年のゴールデンウィークに涸沢で一度体験済みで、そのためか今日は上手くスピードにも乗れて楽しかった。ただ尻もちで滑り降りるだけなのに・・・。百メートルそこそこの距離を一気に滑り降りた。
 雪に寝転んでピッケルの写真を撮ったり、八方池では、まだ雪に覆われた湖面上を歩いてみたりと、思いのほか時間をかけ過ぎてしまったようで、リフト最終時間が急に心配になり、八方池からは少し走った。
 結局は余裕で間に合い、どっと噴き出た汗は高速クワッドリフトの風がさましていった。


                        白馬三山をバックに広大な尾根を下る。


  
               白馬三山 (中央左から白馬鑓ヶ岳、杓子岳、白馬岳)


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 ゴールデンウィークの八方尾根。唐松岳へ登山者の列が続くほどの人出かも知れないと、覚悟をしてやってきたが、連休最終日だったせいか、以外にも静かで開放的な一日を楽しめた。
“朝、ふらっと都会を出ても、夕方には3千メートル級の稜線で夕日を眺められる” といった、唐松岳山荘のキャッチコピーのような山旅がしたくなったら、また訪れてみたいと思う。